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僕、サイボーグなんだ  作者: 吉原マサシ
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第三話

愛の容態が悪くなったと知らせを受けたヒカリは急いで病院へと向かった。どうやら、結合部テストで陰性の反応がでたらしい。これで三度目の失敗だ。

「あのやぶ医者め!あら、いけない……ホホホ……」

思ってもいないことを口走り、口に手を押さえて可愛く表現するヒカリ。

「聞こえているぞ」

ゆるりとヒカリの横に現れる博士。

「あ、すみません。博士もいらしていたのですね」

「ここは俺の病院だからな!もうお前らのことは知らん!」

「まあまあ、博士!これを収めてくださいませ」

弁当箱を博士に手渡した。博士は中身を見るとニヤニヤと薄笑いを浮かべ、すぐに弁当箱をカバンにしまった。

「すまん、言いすぎた。これからもよろしく頼む」

「おおせのままに」

どうやら、博士が喜ぶものが弁当に入っていたらしい。これだから金の亡者は…

「博士!宇宙人が侵略してきたってのは本当ですか?」

そう言いながら入ってきたのは、進だった。

「ああ。どうやら地球からずっと離れた遠い星からやってきたらしくて、

「コノアオイホシハ、ワレワレノモノダ」

とかなんとか言っているらしい」

「本当ですか?」

「本当だ!今すぐ壊滅してきてくれ!」

「了解です!博士!」

ビシッと敬礼をして、基地がどこにあるのかもきかずに、あてもないところへと走って行った。

「……博士、今の話は本当ですか?」

「本当だとも!この映像を見てくれ!どうやらこの宇宙人には…」

テレビのスイッチをぽちっと押して、説明を始める博士。ブラウン管の向こう側には確かに宇宙人の乗ってきた宇宙船らしき物が、地球のものと思しき建物をレーザー光線か何かで攻撃している姿があった。

「その名も……秘密結社ドーフーシー!この地球を水浸しにして、水の惑星に変えると言っている恐ろしい組織だ」

ちなみに、博士の説明はまだまだ続く。

「あっ、進だ」

ブラウン管の向こう側には秘密結社ドーフーシーと戦っている進の姿が映し出された。

「そ、そこだ!いけ!進!」

がんばれ進!

「パンチだ!キックだ!ミサイルだ!」

ミサイルもビームもビクともしない!進の身体はまるで超弩級の合金でボディができているみたいだ。

「うぉぉぉぉ!!」


そして、五分後……

宇宙人の宇宙船は破壊され、宇宙人は白旗を上げて宇宙へと帰って行った。

どうやら白旗はどこの星でも共通して、負けましたアピールをするものであるらしい。

こうして、地球の危機は去り、進は何度目かの地球を救った英雄になった。

「博士。もう、宇宙人もいなくなりましたので本題に入りましょうよ」

「そうか!さすが進くんだ!惚れ惚れする働きだ!今すぐ帰ってくるように連絡を入れてくれたまえ!」

「は、はい!」

連絡を入れると、進はすぐに帰ってきた。

「早かったな進隊員!」

「もちろんであります、ボス!僕、サイボーグですから!」

「いいかげんにせい!」

ヒカリの手とう突込みが二人の後頭部に炸裂する。

「痛いじゃないか!」

「痛いよ!」

「愛ちゃん!愛ちゃんのことを忘れないで!」

「おっと、そうだったな。実は愛ちゃんなんだが、先ほどようやく陽性反応がでたので、もう大丈夫だ」

「そう…それならいいのよ」

「よかったね、姉さん!」

ヒカリは安堵の溜息をつきながら、愛の生存を喜んだ。

進は博士の研究室に着いてすぐに出ていってしまったため、まだ何の事なのかはっきりとしらない。

「だが、まだ守くんの方が……」

「そう……」

「守……まだ起きないんだ……」

あれから十日経ったのだが、愛は改造……もとい、手術の繰り返しでようやく息を吹き返した。

だが、眠っているだけのはずの守の方が一向に目が覚める気配がない。

どうやら催眠ガスに何か特殊なものが化合していて、治そうにも治す特効薬が今はない状態である。

それを知っているのは秘密結社セヨワシの団員だけなはずだが…進が壊滅してしまったので、聞こうにも聞くすべがない。

ならば、もう神様でも奇跡でも信じてみようということになり、愛の愛情で目を覚ませるしか方法はないと博士とヒカリは考えていて、愛の回復を待ちに待っていた。

博士が一度、多次元世界へと行く装置の開発に成功したのだが、一方通行で帰るすべもなく、秘密結社セヨワシのいた次元も分からないということで断念してしまった。

この方法には進は賛同しており、いつでも行く準備はできているという。

「僕がちょちょいのちょいって秘密結社セヨワシの多次元世界に行って、帰るすべと特効薬を持ち帰ってくる」

と意気揚々に言っているのだが、特効薬を持ち帰るのは良いとして、多次元世界まで壊滅してしまいそうで怖くて、なかなか実行できずにいる。


「そろそろ目覚めるころかな」

博士はそう言うと、二人を手招きして愛の病室に入れた。面会謝絶のあの時の進の時のように、厳重に管理されていた。

「ここは……」

「「愛ちゃん!」」

どうやら、本当に成功したらしい。やはり、この博士はただものではない。

「ヒカリちゃん…進くん。あれ、守くんは?」

愛は気がつくなり、守の存在がないことに気付いた。

愛の守への愛情は本物である。

これなら、守もきっと目覚めるに違いない。

一同はこの反応でそう確信した。

「守は……今、眠っているの。深い、ふかい眠りについているの」

愛は涙を流しながら

「守くん、生きているんですね!よかった!」

と言い、自分のこと以上に守の安否を確認し、笑顔になった。

「でも、愛ちゃん…愛ちゃんは…」

「ここからは俺が説明しましょう」

椅子に座っていた博士が説明をはじめた。

「いいかい。よく、聞いてほしいんだ。あの事故のことは覚えているかい?」

「なんとなくですが、分かります」

「そう。実は、君はあの時…一度死んだんだ」

「そうですか。私、死んでしまったのですか…って…えっ?ちょっと…」

「それで、君は……」

愛の機械機械した右腕を持ち、愛に見せながら

「サイボーグの身体になっているんだ。どうだい、すごいだろ?」

と、確かに言った。

「本当だ……」

今、やっと進が理解した。やっと二人の会話に参加できるぞ!よかったな進。

「えーっと、私はあの事故で死んでしまって、先生が私をサイボーグにして蘇らせてくれたのですか?」

「博士と呼びなさい。そうだ。すごいだろ!」

どうやらほめてほしいらしい。

「す、すごいですね!私を生き返らせてくれてありがとうございます」

ふふんとドヤ顔で鼻息が荒くなる博士。

少し落胆するヒカリ。

「ちなみに、改造…もとい、手術費は僕と姉さんが出しました」

「そうなの!ヒカリちゃん、進くん、ありがとう!」

ナイスだ進!と心の中で想い、ふふんとドヤ顔で鼻息が荒くなるヒカリ。

素直に喜ぶ進。

落胆する博士。

どうやら博士とヒカリの性格は似たもの同士だったらしい。

というか、こんな時にお金の話をするなんて……空気の読めないやつだな進って。

「とにかく、今から動かしてみてくれ」

「はい!って…私の身体が寝ている!あれっ?私の頭が宙に浮いているのかな?…あれっ?」

今の状態をやっと理解した愛。

ちなみに、今は頭だけ天井から吊り下げられ、身体はベッドに横になっている状態だ。

「……私が言う部位を動かしてくれ」

さっきのやり取りで少し不機嫌になってしまった博士。

「右腕」

「はいっ!」


ゴンッ!!!


鈍い音と一緒に博士のうめき声がした。

右腕を持っていた博士の顎にクリーンヒットした。

「うっ……な、何を……するんだ……い、痛いじゃないか!」

顎にもろに入ったのに、脳がかなり揺れていてもまだダウンしていない博士はただものではない。

「すみません。はじめてなので、細かい動きができませんでした」

「そ、そうですよね…し、仕方ないですよね…」

「わ、笑ってはダメよ進」

「お、姉さんこそ」

二人は今の出来事で腹筋が割れそうなくらい全力で笑いたかっただろう。

だって…面白かったもの!


「……う、うんっ。動作テストはこれくらいにして、本題に入ろう」

冷静さを取り戻した博士は、次のテストの準備をし始めた。

「これを頭に付けて……あっ、これも。そして……守くんだ」

「えっ?」

「ここに守くんを今から連れてくる。それから守くんに声をかけ続けてくれ」

「ただ声をかけ続ければいいのですね?」

「そうです。そうすることで、守くんの意識が回復し、目覚めるかもしれない」

「守くんのためなら……喜んでさせてください」

「私たちではピクリとしか動かなかったのよ。だから、あとは愛ちゃんの愛情に賭けるしかないの」

「お願いします」

守が目覚めなくなってからというもの、ヒカリと進は毎日のように声をかけ続けていた。

だが、ピクリとしか反応せず、目覚めることも心肺が停止することもなかった。

「声の続く限り守くんに声をかけ続けます」

そして、守が博士の研究室に運び込まれた。

「守くん……」

点滴だけの生活で以前と比べ少し痩せ細った守の姿を見て、絶句してしまった愛は、声にならない声で守の名前を呼んだ。


ビクン――


小さな声でも守の脳は反応した。愛する者の声を聴いて。

「今、すごく反応しましたよね博士!」

「僕たち以上の反応だったよ」

そう言葉にしてしまったヒカリと進は、少し落ち込んでしまった。

「守……」


シーン――


守はヒカリの全く反応しなかった。

「くっ……かくなる上は……。ま、守くん」

気を落としたヒカリは愛の声をマネして言ってみた。すると……


ビクン――


今度はヒカリの声に反応した。ヒカリは少し気を持ち直した。

「守……」


シーン――


低い進の声には守は全く反応しなかった。

「くっ……じゃあ、僕も……。あー。あー。ま、まも、守くん……」

進も声色を変えて二度目のトライ。すると……


ビクン――


反応あり!どうやら、愛の声色に反応するらしい。

「では、私も……。守くん……」


シーン――


博士の声にも、もちろん反応なし。


「くっ……ま、守くん……」


シーン――


声色を変えて博士も守の名前を呼んでみたが……反応はなかった。

その後、博士はいろんな声を試してみたが、どんな博士の声でも全く反応しなかった。

博士はこの場で死にたくなった。


声をかけ続けて約一時間。

守は恋人の愛の声または、愛の声色に似ている声には少し反応し、博士の声には全く反応しなかった。

進展が全くない状況で、博士が別の案を掲示してきた。

「もう我慢ならん!俺だけのけものあつかいか!君たちっ!今から、守くんの夢の中に入ってきてくれ!」

「どうやって?」

「この装置を使ってだ!」

説明しよう!この装置は博士が他人の夢に入り込んで、良い思いをするためだけに作られた装置である。

装置の名前は「キャッ・チド・リーム」だ。

自分の意識をどこの誰の夢の中にでも上手く入れるので、博士曰く禁断の装置と言われている。

夢の機械であるがゆえに、取り扱いも慎重に行わないと夢の中から出られなくなってしまう。

最重要な点は、相手の夢の中から脱出するために、ある条件をみたさないといけないことだ。

説明終わり!

「……という装置だ」

「ある条件というのは?」

説明しよう!パートツー!ある条件とは……

一つ!相手の肌に触れること!

一つ!相手の腰に手を置くこと!

一つ!相手と接吻をすること!

である!博士の夢と希望と欲望と、ときどき絶望にあふれた装置であーる。

説明終わり!

「ちなみに、ときどき絶望っていうのは、相手の夢に入り違ってしまった時に起こりうることだ。特に同性同士の免疫的接触は考えただけで吐き気がする……オエッ」

良い子はしっかりと説明を読んでから使用しよう!

「接吻って……キスをするのか?僕は守のためならなんでもするぞ。なあ、姉さん!」

「ダメよ……私が無理だもの!だから、兄弟同士のキスは認めません!」

「わ、分かっているさ。僕らじゃ無理だから、愛ちゃんの目覚めを待っていたんだよな博士?」

「そ、そうだとも。そうに決まっているとも」

目が泳いでいますよ博士ー!

「分かりました!私やります!まだ守くんとはピュアな関係のままでしたけど……やってみせます!」

「その心意気、買った!では、ポチッとな!」


ピピピピピー!


「博士!まだ心の準備ができて…」


ピーガシャン!ピピピピピー!


そして、愛は守の夢の中へとダイブをはじめた。


ピー!プシュー!


「博士!煙が出ていますけど、大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫だ!……うん、大丈夫に決まっている!」

「なんで言い換えたんですかー!」

愛の姿を追って、ヒカリ、進、博士も守の夢の中へダイブすることになった。



――あれっ?なんだか身体が軽い……守くんの夢の中に入ったのかしら?


「ココハマモルサンノユメノナカデス。オキャクサンハ、ハジメテデスカー?」


機械機械したロボットが愛に声をかけてきた。


――初めてです。以前に誰か夢の中へ入ってきたのですか?


「ツイフツカホドマエニ、ダンセイノカタガイラッシャイマシター」


どうやら、二日前に博士が守の夢の中に入ったらしい。

だから、同性同士のことがなんちゃらと言っていたのだろう。


――そうですか。


「デハ、ワタシガナビゲートイタシマース。ワタシノアトニツイテキテクダサーイ」


――はい!うわー楽しみだな!


「ツキマシータ!」


――早いっ!さすが守くんの夢!


「ココハユメノクニ、マモールランドデース!タップリ、ジックリアソンデイッテクダサーイ!」


――なんだかよく分からないけれど……ここに守くんがいるのかしら


「ソウデース!マモルサマハココノドコカニイマース!サガシダシテクダサーイ!」


――よしっ!頑張るぞ!



しばらくたって……。


――守くん、どこにいるのよー!


愛は迷子になっていた。

はたしてだだっ広いこの空間に守はいるのだろうか。


――おーい!愛ちゃーん!


――ヒカリさんに進くん?なんでここにいるの?


――機械の故障か何かで私たちも飛ばされちゃったの。


――博士もどこかにいるはずなんだけど…見なかった?


――博士も来ているの?全く見なかったよ。それに、守くんのマの字もどこにも見当たらないの。どうしてかな?


「ミナサーン!マモルサマハミツカリマシータカ?」


――いいえ、まだ見つからないわ。


「ソウデスカ。ガンバッテクダサーイ!」


そう言うと、機械機械したロボットはどこかに飛んでいった。


――あれは?



――私をここに案内してくれたロボットだよ。


――へー。


――みんな!こっちに来てくれ!


すると、遠くから博士の声が聞こえて来た。


――ここに守くんがいるぞー!


――ここにいるぞー!


――あっ…これは…守くんではないか!


――守くん?守くんだよね?


――まーもーるー!みーつーけーたー!


色んな所から博士の声が聞えて来た。

どうやらみんなをかく乱しているらしい。


――愛ちゃん、博士のことは任せて愛ちゃんは守を探して。


――分かりました、ヒカリさん。


――みつかったら、これで連絡を取り合いましょう。


愛にトランシーバーを渡すヒカリ。


――了解です!


――私はあっちを探してみるわ。進は……


――僕は、ここらへん一帯をぶっ壊して博士をおびき出してみるよ!


――任せるわ!


――ヒカリさん、進くん、頼むわね!


――任せて!それじゃあ、また後で!


そして、それぞれの所へ向かう。


――あっ!ちゃん。さっきのロボットの所へ行ってみて。


――どうしてですか?


――いいから、行ってみて。守に会えると思うから。


――分かりました。


ビューンとロボットがいた方角へ愛は向かった。


――私の考えが正しければ……あのロボット……。


そう言い残し、ヒカリは博士を探しに行った。



そのころ進はというと……あたり一帯を本当にぶっ壊していた。


――ほらっほら!もっと壊れろー!博士も死んでしまうほどぶっ壊れろー!


――……おいおい、それは君の本心かい?


――半分本心です。


――本当か!


――……嘘ですよ。博士をおびき出すためだけについた可愛い嘘です。


――……目が嘘って言っていないのだが?


――気のせいです。なぜ僕らをこの世界に連れて来たのですか?


――……それは、何のことかな?


いつもポカをしている進から真面目な質問が出てきて、博士は少し進の見る目を見直した瞬間だった。


――き、君たちにも守くんの本当の意思を知ってほしくて……ではダメかな。


――今はそれでいいです。早く守を助け出しましょう。


――もちろんだとも!



一方、愛はというと……ロボットの行方を捜していた。


――ロボットさーん!どこにいるのですかー!


返事は帰ってこない。


――ねえ、ロボットさん。いえ、守くん。いい加減に出てこないと、ヒカリさんに怒られますよ!


「……ナンデワカッタノ」


物陰からひょっこり現れるロボット。


――ヒカリさんが教えてくれたの。ロボットの君に会うことができれば、守くんに会えるってことを。


「ソウダッタノ…ネエサンニハカナワナイナ」


――早く戻ってきてよ守くん…。私、守くん無しじゃ生きていけないよ。


ほほを伝う一滴の涙。


「ぼクダッテオナジサ。デモ、ボクニハキミヲマモルチカラガナイ。ニイサンミタイニツヨクナイシ。ヨワムシダカラ…」


――大丈夫。私は守くんの優しいところが好きなの。強くなくったって、泣き虫だからって嫌いにはなれない。だって……ほら


サイボーグの守を包む暖かい温もり。愛がサイボーグを抱き寄せた。


――ロボットの君でも温もりを与えられる。愛情を注げるもの。


「このセカイノぼクハ、ロボットだヨ?そレデモイヌクモリヲあタエラレルの?」


――そんなこと気にしないよ。あなたがロボットなら、私もロボットになる。ただそれだけのこと。


「…そンナノむりニキマッテいるよ」


――それでもなんとかする!だって……だって、私は……本当の世界の私はサイボーグになったのだから!


「ソウナノ?そレデモ、ムリニキマッテイルヨ」


――大丈夫。私を信じて!私はどんな姿になってもあなたを愛し続けることを、ここに誓います!


「ウソダ……うソニキマッテイル」


――本当。


「うソダ……」


――ほん当。


「うそだ……」


――ほんとう!


「……ありがとう」

二人は熱い接吻を交わした。

夢から脱出する条件は果たされた。

すると……二人を祝福しているように温かな光が二人を包んで、そして、消えた。


――やはり、あのロボットが守だったようね。


物陰から二人をやさしく見つめていたヒカリはすべてを知っていたかのように言った。

そう、ロボットの存在が愛にしか語り掛けてこなかったからだ。

そのことを知ってか、愛に無理矢理でもサイボーグの所に行かせたかったのだ。


――よく分かったね。さすがヒカリちゃんだ。


――簡単だったわよ。あの進も分かっていたようだったからね。


――……そうか。


――二人とも!早く脱出しないと、崩れるぞ!


――守がいなくなったら、守の夢も守の夢じゃなくなるからね。


ガラガラガラ…


守が消え、守の夢は崩壊をはじめた。もうすぐ守が現実の世界で起きてしまう。その前に脱出しないと…大変なことになってしまう。


――ソウダ、イソガナクッチャ。


――なによそよそしくなっているのよ。もしかして、これが目当てで私たちも連れて来たの?


――ソンナコトナイヨ。


――早く姉さん!崩れちゃう!


――進はどうするの?


――博士発明の多次元世界移動装置ー!これさえあれば僕は一人で助かるから大丈夫……だよね、博士!


――もちろんだとも!ヒカリさん、さあ早く!チュー!


――もう、これは貸しだからね!現実世界で覚えていなさいよ!


二人は熱い接吻を交わした。夢から脱出する条件は果たされた。

すると…守と愛と同様、二人を祝福しているように温かな光が二人を包んで、そして、消えた。


――よし、これであとは僕だけだ。あーーーっ!この装置の使い方聞き忘れた!


ガラガラガラ…


――もしかして、僕の二度目の人生、ここで終わり?


守の夢の世界は崩壊した。……守の夢の中に進を残して。



「お帰り、守くん」

「ただいま。愛ちゃん、みんな」

現実世界に戻ったヒカリたちは、意識の回復した守の帰りを喜んだ。

一人はみんなのために、みんなは一人のために。支え合ってこその人。

それでも進は……みんなのために犠牲になり夢の中に取り残された。

なぜだか進の肉体ごとなくなっている……進は一体どうなってしまうのだろうか。



僕は「ありがとう」という言葉が大好きだ

その言葉を聞いただけで僕の心を揺さぶる何かがはじけて消えた

それはきっと心の片隅にあった不安

それはきっと心の片隅にあった恐怖

それはきっと心の片隅にあった気持ち

僕は「ありがとう」という言葉が大好きだ

伝えられたありがとう

その言葉を聞くだけで心が温まる

伝えたありがとう

その言葉を聞くだけで心がホッとする

この言葉の力は計り知れない

だから、いつも大切な君から言ってほしい

「ありがとう」

だから、僕も大切な君に伝えたい

「ありがとう」


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