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クラスごと勇者召喚されたみたいだが俺の職業は魔王のようです  作者: satori
第三章帝国での武術大会は面倒事になるでしょう
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088 殲滅・黒糸陣

5,000,000pv達成しました

私は少女に近づいた時、頭から猫の耳が生えている事に気付いた。


猫の耳?と言う事は獣人か?しかし、何でこんな所にいるんだ。


彼女の疑問はもっともだ。帝国は、聖国の教会本部にいる者達くらいに、他種族を差別している。その所為でここに来る獣人たちは、最低B+級で自分の身を守ることが出来る者が武神の迷宮に潜りに来るくらいだ。

その事から考えると今彼女の目の前にいる。猫耳の少女は、彼女の知っている事情からするとおかしいとしか言いようが無い。


まあ、いい。そんな事よりも今は、この状況を如何にかする事が先決だ。


「おい。アホネコ」


「え、あ、はい。何でしょう?」


アホ呼ばわりされても特に、言い返してこないのは、今の状況を考えれば仕方ないからだろうか?それともそう言われるのが当然の様な環境にいたからなのだろうか?

まあ、いい。今のはどの様に反応をするかでどの程度、私の事を聞くかどうかを確認する様な意味合いで言った。返事から推測するに、予想していた中で一番良く言う事を聞く性格をしている事が予想出来る。


よし、取り合えず。こいつがなんでこんな所にいるかを聞いてみるか。


「何でこんな所にいる?どう考えても、お前ひとりでは、この階層にいられる様な実力は無いだろう?」


「あのぅ………私をここに連れて来た人たちが死んでしまったので……」


む。何だか聞いては、言えない事だったか?


「仲間が殺されていたのか。すまないな。余計な事を聞いた」


何ともいたたまれない様な気がしたので、謝って置く。


「い、いえ。私は奴隷でしたので、そんな事はありません」


こいつ……わざとそれを抜かして、言ったのではないだろうな………まあ、言いそれよりも。奴隷としてこいつを買って、わざわざここまで連れて生きていると言う事は、最低限こいつも何か出来るはずだ。何せ、はっきりと言えばこいつを荷物持ち(サポーター)として使うには、明らかに向いてない。それなら敵を引き付ける事を中心にやって来た……つまり、囮役として使われていた事が容易に予想が出来る。


「アホネコ、お前の役割は何だった?」


予想は出来るが一応聞いておく、もし予想が間違っている様なら、こいつを今すぐ足払いして、転ばせてから魔法で魔壁を作り、重力操作を使った正真正銘の全力疾走で逃げる。


「ええと、囮役でした」


よし最低条件クリア。


「なら、囮になれ。こいつらくらいなら、殲滅できる物がある」


「…………本当ですか?見るからに斥候職の格好をしているのに、どうやって殲滅する気なんですか?」


どうやら、私の格好からしてそんな大規模な魔法を撃てるような、魔法使いには見えないので信じられない様だ。


………ツッコツは正しいな。と言うか、この状況で私が逃げ出す事を警戒しているのか?一応、最初は逃げていたとは言え、今はこいつの速度に合わせて逃げてやっているのに、なかなか薄情な奴だな。


まあ、それよりも。


「じゃあ、何でお前は私の方に来たんだ?」


こいつが声をかけて来たのが、私が魔物モンスターから逃げ出してからだ。もしかするとあわよくば、自分は逃げられるとでも思っていた可能性はあるな。


それだとすると、何としてもこいつには囮になって、最低限命の危機くらいには、さらされてほしいな………


だが、生き残る為にもこいつが囮となって、魔物モンスター達から気を引くのは、本当に最低条件。一網打尽にするような陣は、進行方向に設置するか、相手がその場に止まっているか、していないと使えない。


「おい、まさかと思うが私が一人でいるから、あわよくば擦り付けて逃げようとでも思っていたのか?」


その事も一応聞いておく、後でゆする材料になるかも知れないからだ。


「……………」


何とも分かりやすい、反応だ。


「おい、何とか言え」


「そんな事は思っていませんよ。一人でいたので、これくらいはどうにか出来る様、すごい人だと期待していたんですよ」


「期待はずれって所かな。生き残るためには、お前が囮になって魔物モンスターの気を引いて、隙を作るのが最低条件だ。

 それで、やるか?やらないか?もう、この状態になれば、私だけが逃げる様な真似は出来ないから、しっかりと役割ははたすぞ」


「……」


もう一押しかな?


「お前の役割は、囮だったんだろ?それなら、いつもの事をすればいいだけだ」


「普段は、こんな大量の魔物モンスター、相手にはやらないですよ」


「何を言っている。それはお前が連れて来たのだろうが」


自業自得だろうと言う気持ちを込めて言う。人を巻き込んでおいて何を言っているのだろうな。


「おい、私の記憶が正しければ、この先は大部屋だ。そこで、すべての魔物モンスターを入れて殲滅する」


「今、走っているのが何所だか分かるのですか?」


………何を言っているのだろう?こいつは分からずに走っていたのか………。


「当然だ。と言うかそれくらい分からないと、生き残った後に帰れないだろうが」


少し前にも言ったと思うが、此処くらいのレベルの階層は、広い。下手にうる覚え、もしくはマッピングしないまま潜ったら、間違いなく帰れなくなるだろう。

しかし、今の反応はまるで、今まで彼女の主人たちは、道を覚えて来なかったかのような反応だな。


そんな事は、無いはずだ。こいつの目の前で、その素振りを見せていなかっただけだろう。その中の一人が当たり前の様に、道を覚えていたのだろう……多分………。


「おい。もうすぐで、大部屋だ。やるぞ」


少女は胡散臭そうな顔をする。


そこに入った瞬間に。


「うそ………本当に……」


本当に大部屋だった事に驚いている様だ。


信じていなかったのか、本当に失礼な奴だな。


「あの、量からして最低で五分はかかる。それくらいは稼いでくれ」


「わ、分かりました」


私は【黒糸陣】を編みながら、彼女の動きを視る。


少ないながらも、魔力をしっかり使って加速している。だが、それが無くとも私よりも敏捷値が高いのかもしれない。しかも、おそらく主人に与えられたのだろう粗末な短剣を使って、何体かの魔物モンスターを同時に自分のもとに誘導して同士討ちを誘発させている。


何と言うか、魔物モンスター全体の動きを彼女が支配している様にも見える。


しかし、圧倒的に攻撃力にかける。おそらく身丈に会った短剣を持っていたとしても、同ランク程度の魔物モンスターも倒す事は難しいだろう。


短いながらも少女の動きを視る事によって、彼女は少女の実力をある程度把握した。


そう考えている間も〈思考加速〉〈分割思考〉〈分身〉のスキルを使って複数の魔物モンスターの切断が容易な関節、及び急所部分に【黒糸】を発生させる為のマーカーを作って行く。


さてと、こんなものかな。アホネコが予想意外に、引き付けるのが上手いから思ったよりも、【黒糸】の配置の方に力を注ぐ事が出来たから、伝えた時間よりも早く終わりにする事が出来た。


「もう、いいぞ」


私に声を聴くと少女は、魔物モンスター同士を激突させて、慣れた様に大鬼オーガの様な魔物モンスターの膝から肩、頭を蹴りつけて、宙に舞い魔物モンスターの大群から、離脱する。


手にしている武器を投げる、体から棘を飛ばすような攻撃をする魔物モンスターもいるが、空中を跳ねてそれも回避する。


その離脱は一切の無駄が無く。まるで、一連の動くは予め、そう動く事を決めて置いた様な印象を受けた。


………すごいな。


余りの神業に、それ以外の感想が出て来なかった。


私は気を取り直して、〈思考加速〉と探知系のスキルを全力で発動させて、動き続ける。魔物モンスターの位置情報を一匹残らず把握、更にその情報を〈先読み〉系のスキルと合わせて次の瞬間にどう動くのかを予測し、それぞれに重量魔法を使って多少余計に勢いを付け、そこに。


「【黒糸・流頸陣】」


私がそう呟いた瞬間、黒い糸が予め設定されていた通りに複雑に編み込まれて実体化し魔物モンスター達に巻き付く。それは魔物モンスターが先程までの移動エネルギーを利用して斬り裂く、そして斬り裂かれる度に、結び目は解けて行き編み込まれる事によって、ため込まれていた力が解放されて、更に魔物モンスターを斬り裂く。最後の一匹となるまでそれは繰り返され、最後の一匹が斬り裂かれた瞬間に網目はすべて解けた。


しかも、それらが斬り裂く場所は正確に関節や首、不定形の魔物モンスターなら核を斬り裂いた為、素材をほぼ完全な形で取る事が出来る。


「なっ………」


その光景を見ていた少女は絶句していた。


この数の魔物モンスターを一度に殲滅すると言うのなら、大規模の魔法を使いすべてを吹き飛ばすのだと、ばかり思っていた。

しかし、そんな事は無く。計算さえ尽くした芸術と言っても、過言では無い程の無駄の無い魔法によって殺し尽くさせた。


その後アホネコは私が‘いつまでも、呆けてないでお前も素材を取るのを手伝え’と言うまで、固まっていた。


ありがとうございました

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