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クラスごと勇者召喚されたみたいだが俺の職業は魔王のようです  作者: satori
第三章帝国での武術大会は面倒事になるでしょう
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083 妲己と模擬線をするらしい

「は~」


上空数百メートルを高速で飛行して、自分たちが拠点にしている街に帰ろうとしていた時にふと毀れた。


ため息を吐いたのは白い髪を長く伸ばした少々冷たい印象を与える中性的な顔をした男だ。ふとした拍子にため息が出てしまう程、疲れていると言う事が見ればわかると言うレベルでだらけている。

高速移動中にだらけると言うのはちょっと違和感を思えるかも知れないだろう。現在彼は、なしくずしに行動を共にしている【天龍】……シェンの背中に乗っている。


そんな状態になっている理由はおそらく二つ。


妲己との話の後に軽い手合わせをしようと言う話になり、最終的には決闘と言うレベルになった事、そしてもう一つが祭で酒の入った妲己にまた酒を飲まさせられて倒れたからだ。

正直言ってまたかよと思うかもしれないが、当然初日の事からまた飲まされる事は予想がついたので、予め体には行って来るアルコールを分解しようとそれ用の魔法を待機させておいて体に入ってきたら使うつもりだったのだが、妲己が酒に魔力を流して状態保護の効果を付けてから飲まされたので魔法がうまく機能しなかった。

完全に機能しなかったと言う訳では無く多少は分解されていたので、すぐに倒れる事は無かった。

まあ、その所為で最終的にいつもよりも飲む羽目になって現在の酷い二日酔い状態になっている。

と言っても体の中のアルコールは分解済みなので後は時間がたてば治る。回復魔法が使えれば、もっと早く治るのだが使えないものは使えないのでしょうがない。


「それにしても彼女強かったね」


シェンは自分の体の上に乗っていて落下の方向を魔法で変更すれば多少は遅いなりも自分で移動できるはずの颯に会話を振る。


「………正直あれは強すぎると思う」


「え?」


二人が模擬戦をするにあたり、周囲に被害を出さない様にお互いが結界を張ってその中で戦っていたのを見ていたが、見た感じでそんな実力が離れている様な印象は受けなかった。


「視た感じ接戦だったように見えたんだろ?」


「え、うん。何で分かったの?」


考えていたことをドンピシャで言い当てられて目を丸くする。


「そうだな………客観的にみるとあれは、互角だったように見える事は何となくわかっているが………完全にあれは勝負になっていなかった」


「いや、でも君は特異属性を使えば勝てるんじゃないのかい?」


シャンは彼が使う事が出来る協力無比の二つの特異属性の事を思い出す。彼があれを使って誰かに負ける事を想像出来ない。この世界で最強の一角とも言われている〈龍王〉の自分でさえも、対極現象を起こす二つの特異属性を使いこなす彼を倒すのは難しいと思っている。それ故に彼の言った事がいまいちピンと来ない。


「………どうなんだろうな。それくらいアイツも持っていそうだし………」


彼は言葉を切り、【銀仙王】とまで呼ばれていた者がそれくらい使えないとは思えない。例え、使えないとしてもそれに対する何かを持っていない訳が無いと思っている。


(だてに千年近く生きていないだろうし……)


シェンは颯が多少震え青ざめている事気が付く。


(え?そんなに怖かったの!?)


シェンは驚愕していた。颯は妲己との戦いの時の事を思い出す。






集落から数十キロほど離れた場所で二人と一匹の龍がいた。


「なあ、妲己本当にやるの?」


此処まで来てしまっては、もうやる以外に選択肢など無い事は分かっているのだが、自分は戦闘狂ではないし出来る事なら模擬戦なんてしなくない。


「今更だな、とっとと準備をしたらどうだ?」


そう返して来るとは、分かってはいるけど一応言ってみた。結果は予想通りであるが……


ちなみに準備とは、戦いの余波が周囲に被害を出さない様にする為の結界の事だ。張る範囲は半径一キロ、俺としてはもっと広げたい、魔法を中心にするので距離を取りたいからだ、ここまで来た時の速さから考えると結界内の端から端までせいぜい一秒足らずで往復する事が出来る


彼は接近戦よりも魔法による遠距離戦の方が得意であり、更に言うと今まで自分と同格レベルの者と殆ど戦った事が無い、それなのに得意でない距離では戦いたくないと思っている。


まあ、格上の者と更にやり辛い距離で戦うのはいい経験になるか……


そう、思い込む事にした。そうでもしなきゃやってられない、そもそもやる気が無いのだから。


大量の称号を使い自分を強化し、周囲に結界を張る。妲己も膨大なそれこそ自分に匹敵しそうなくらいの魔力を持って結界を張った。

俺はそれを見てゾッとした。〈諸事万端〉で調べた限り自分よりも圧倒的に身体能力が高く、長い年月をもって磨きあげられた技術は俺と比較するのも馬鹿馬鹿しい程だろう。

妲己は俺が称号を使い強大な魔力を放つところを見て大変うれしそうに笑みを深くしている。おそらく自分に並ぶほどの魔力の持ち主はいなかったのだろう。

それを見て少々諦めた様な表情をしながら俺は〈アイテムボックス〉から槍と手甲、脚甲を取り出して構える。


なっ!?


俺は自分の常識が完全に否定された。魔力に混じって体から溢れ出して来ているのは気。


な……魔力を持っている者は気を持つ事が出来ないのではないのか……


俺の驚いた顔を見て何を思ったのか、分かったのか説明をしてくれる。


「【仙人】は自分の体内にある魔力を消し去り、気を習得し魔力は体外の物を使っている」


「……」


何を言っているのか理解できないな、俺は魔力の事を何でも知っていると言う訳ではないが、かなり高いレベルで知っているつもりだ。

魔力は魂が空気中に存在している魔素を取り込むんで、さまざまなエネルギーへと変換することが出来る物へと変わると思っている。

と言う事は、魔素が存在しない場所があると言う事なのか?


「他の者達には隠しているのだが【仙域】と言う場所に魔力が一切使えない場所があるのだけどそこで長時間……それこそ数十年から数百年間、鍛練する事で気が使える様になる」


あたりか。

ふむ………と言う事は、魔素が無い空間があると言う事なのかな?そんな場所……そこを構成する材質が影響しているのか、そこ事態に何かがあると言う事なのかな?


脱線したか…………詰まるところそう言う場所で、訓練をする事で魔力を使う事が出来る者も、気を習得する事が出来る可能性があると言う事でいいのかな?

それで実際に出来るようになった者達が【仙人】と。


「さてと、それではやろうかの」


暴力的なまでに魔力や気をまき散らしながら戦いの開始の合図をする。


それと同時に妲己の姿が消えうせる。


こいつは、如何言う事かはまだ分かってはいないが、俺の感知能力をすり抜けることが出来る。

ほんの一瞬でもコイツと対峙してる時は気を抜く事は出来ない。

あの纏っている魔力と気を考えると俺は、一撃で死んでしまう可能性がある。

もちろん向こうもそれは気を付けるとは思うが、向こうに頼り切るのは少々格好悪いだろう。


普段使う時は自分を中心として、何キロもカバーしているが今はそんなに広範囲をカバーする必要は無い。

自分の中心として半径数十メートル程度の感知エリアを指定して展開。


その時の感知能力が付加された魔力は普段は微量すぎて感知されない物が、おそらく普通の魔法使いのレベルでもここに何かあると感知できるレベルの濃度となった。

今の魔力濃度なら高速化されている思考速度によって疑似的な未来予知さえも出来る程となっている。


ふと、自分から見て右上に違和感を感じ自分の直感が示すままに回避行動に移った。


っ!?


〈思考加速〉それによって俺はもはや弾道ミサイルすらも完全に見切ることが出来ると自信をもって言えるのだが、放たれた踵落しは霞んで見えた。


物理的な感知要因は、極めていると言っても過言では無い程の体捌きで消して、俺の魔力による感知は自分とあれの魔力を同調させて素通りしていたのか!?


自分の目の前で行われた事から逆算したものではあるが、おそらく間違いではないだろう。

彼は埒外とも言える思考速度をもって風属性の魔法を常時発動させる事によって音を消し、また同じ様に無属性の運動操作をもって空気の揺らぎを消してはいる。

もちろんそれは、はたから見ればおかしいと言うレベルの事であるが、今、妲己の見せた純粋な体術を持ってそれを成した事に比べると見劣りする事は否めない。


存在を違和感レベルでしか感知する事が出来ないか…………当然の事なのかもしれないが、出来ない事にここまで不便さを感じると言う事は、随分とこれに頼って来たと言う事か?

いや、これはきっと聴覚や触覚の拡大と同じだろ、完全に体術だけで空気の動きを如何にか出来ると言う事はアイツが規格外なだけだ。


多少は回避に大きく動き過ぎたとは思うが、すぐさま攻撃に移ろうとする。

あんな速度で踵落しをしたのだから、一瞬くらいは動きが停滞するだろうと思っての行動だったのだが、それは甘かった。

寧ろその勢いを殺すことなく体をたたんだと思ったら、腰のあたりにある尾が急に大きくなり、頭上から人の身体などよりも余程太くなった尾が襲う。


驚きつつも体を強引にねじって攻撃を回避、俺が回避行動をしている間に妲己が体を半身にし体の回転を加えて三本の尾を横薙ぎに振るう。


俺は一番高い位置にある尾にありったけの魔力を流し込んで強度を強化した手甲で尾を掴みその場で相手に向かい弾丸の様に回転しながら、その勢いのまま槍を振るうが、それくらいは予想されていた様で、余裕をもって体を晒して回避される。

そのままバクテンをして放たれた蹴りを回避するが、その後に来る三本の尾を地面に突き立て、ある程度安定した状態で他の全ての尾を使った打ち上げの様な攻撃は回避できないと判断して、自身に重力魔法を使い重力を軽減、同時に手甲、脚甲と尾に対して摩擦力の軽減する魔法を使う。

手を交差し膝を立てる格好を取り尾を受け吹き飛ばされる。


「む?」


手ごたえの無さに怪訝そうな声を出しているが、今の俺にはそんな余裕はない、速度に関して言えばこのくらいの速度なら自身が本気を出して動けばある程度の加速に要する時間が必要とはなるが、出す事は出来るだろう。

しかし、今は移動できる範囲が限られているのである程度速度を緩めなければいけない、追撃はして来ないのでまあ安全に止まるとしよう。


重力を移動方向と逆に徐々に強くしてかけて、風属性の魔法でクッションを作ってゆっくりと減速する。


ふう、これがもし殺し合いだとするとゾッとするな………あの状態で追撃が来るとなると本気で危ないな。

まあ、そうなら結界は無いだろうから、むしろ重力を進行方向にかけて距離を取るかな?


速度が弱くなり自由落下が始まる。

身体能力が比較的に低いとはいえ、この程度の高さからの落下なら何もしなくとも膝の使い方で衝撃は殺せる。

音を立てずに軽やかに着地する。


着地した後妲己の方を見ると自分の尻尾を不思議そうに撫でていた。


「今のはどうやったのじゃ?お前が吹き飛んでいったのは、自分が飛ばされるであろう方向に重力をかけたというのは分かったのじゃが、私の尾はこの毛を強化してその手甲を壊そうとしたのじゃが………何か魔法を使ったのは分かったのじゃが、いったいどんなものを使ったのかが分からないのじゃが?」


あんな動きが出来るのなら摩擦の事くらい分かりそうだけど……感覚的には分かるけどそれが何かは分からないって言う事なのかな?


俺が考え事をして黙っていると話す気が無いもしくは自分の手札を無闇に出す気が無いと言うふうにとったのだろう、まあ、いい、と言って。


「続きをしようじゃないか」


と言い、魔力と気を体に纏わせていく。


俺としては、今のやり取りだけで相当疲れたのだが、まだ始まってから十数秒しかたっていないのでやめるとは言い出しにくく、仕方ないので構えた。

今の距離は自分に有利なので近づけさせない様にする為、〈思考詠唱〉を使い多くの魔法を組み立てて行く。


数秒の間を置き、最初に作りあげた物は、まずは様子見ち言った感じで各属性の初級魔法。

いつもなら、雨霰の様に作りだす所ではあるが、様子見とは言え相手は自分よりも格上、そんなものを作ったとしてもあまり意味は無いので、各八個づつ作りそれぞれには普通の者なら、一つ作るだけで魔力が枯渇してしまう程の物を込め、更に自由に操作できるように設定を加える。

ここまですると最早、元の魔法の原型なんて形くらいしか残ってない気もするが、気にしたら負けだろう………


雷の矢から放ち、それについて風と火の合成魔法の爆裂の弾丸、氷属性の槍の後ろに、風属性の不可視かつ真空の層に囲まれた無音の槍を続かせる。


妲己を取り囲むように散開し、頭部、首、胸部、腹部、にそれぞれ二個づずつ放つ。

頭部に迫る雷の矢を手で弾き、その他を尾で弾いた。

それに間入れず爆裂の魔法が襲うが、尾に気を纏わせ強化し、それで全身を囲むようにして防ぎきる。

しかし、それの目的は視界と聴覚を奪う事。

隙間を縫う様に氷槍が続けざまに襲う。


「ふっ」  


しかし、その状態でさえ驚異的な反応を見せ、尾を使い八本の氷槍を同時に破壊した。だが尾の威力は本気には程遠いとは思うが、索敵は本気で行っているとは思われる。

たった一人を相手にしているとは思え無い程の魔法の量。

それに加え、相手の裏を書こうとする、性根の曲がったと言える魔法の運用。

まあ、その運用は彼の〈思考加速〉と〈並立思考〉があって初めて出来ると言う物であるので、そうやろうとしても出来ないと言うのが本当の所なのだが……


それは予想していた事とは言え、全てを完全に防がれた事は驚いたが、これでどうだ………


今の所上手く行っている状況に、彼は多少笑みを浮かべながら、風の槍を操作する。

氷槍から数メートルずらして飛ばした風槍が尾の中に入り込んだ。


どうだ?


爆裂によって出来た土煙が晴れ、妲己の姿が見えて来る。

普段は〈諸事万端〉により視覚に頼ることなく、相手の状況を視る事が出来るが魔力を同調され、感知能力が現在極端に落ちているので、相手の位置以外は知る事が出来ない。


っ……………!?


煙が晴れ、その姿正確には表情を見た時に感じたのは、今まで感じた事の無い様な悪寒。

状態は手に裂傷を見る事が出来、攻撃は成功していたと言う事が分かる。

が、俺はその表情を見た瞬間に凍り付いた。

浮かべていた表情それは…………はっきりと浮かべている訳ではないが、それは紛れもなく恍惚の表情。


妲己が見せたその表情は、数千人の男が同時に骨抜きにされる程のえもいわれぬ色香を放っていた。

平時であれば、彼もそうなっていたのかも知れない………しかし、今の状況で見るのは控えめに言っても恐怖しか感じる事が出来ない。


額から冷綾が流れ、顎を伝って行く。


彼も格上と戦っていない訳では無い、この世界では少々有り得ない程の速度で上り詰めたが、元に世界にいる時自分の家の流派の道場の特に世俗から身を引き、己を鍛える事だけを生きがいとしている者達も多かった。

今、感じている悪寒は、段を手に入れ始めてその者たちを前にした時に感じた恐怖が、小さい物に感じる程だ………

記憶の中にある恐怖を上回るのは、それはもう相当なものであると自分でも理解が不思議と出来た。

それは詰まる所、彼女と彼の力量が、大人と子供と言って比較出来るほどの開きがあるとも言える。


無意識の内に自分の呼気が乱れている事に気が付く。


落ち着け……


ハッとして、そう自分に言い聞かせる。それと同時に風の魔法を使い、酸素を血液中に直接流し込み、自分の体に溜まり始めていた疲労物質を破壊して行く。

自分の体にそう言った系統で魔法は出来るだけ使わない様にしては来たが、今はそんな事を言っていられないと感じている。


これは、模擬戦だ………正直この力量の差なら、もう稽古をつけて貰っていると考えた方がいい。


此処からはいかに、格上の技術を見る事が出来るかに、考えをシフトした。


俺の考えを読み取ったのかそれとも、もうそんな事をしなくても俺が反応出来ない様な動きをする事が出来ると言う自信の表れなのか、もしくはそれを維持する余裕がなくなると言う事なのかは分からないが、一応技術を盗む条件は整った。


妲己は口元に薄く笑みを浮かべながら踵を上げた瞬間………


消えたっ!!


先程と比較しても圧倒的な加速力だ。

しかも、〈諸事万端〉は機能している筈なのに、出だしを感知できなかった。

気付いた時は、もう目の前、攻撃は頭部を狙った掌底。

普通の方法では回避できないと直感し、筋肉が体を動かすよりも早く動く為に、体の負担は二の次気にして魔法を使い、身体を強引に逸らして躱す。


「ぐぅ……」


強引な体の使い方により、全身に激痛が走る。


良くない事とは解ってはいるが、今はそんなもので動きを妨害されるわけにはいかないので、痛覚を伝える信号を一時的に遮断。


最早なりふりかまわずに、魔力を散布。

数メートルの範囲に限定し、感知能力を極大化する。

しかし、それはこの範囲から自分も出ないと言う事でもあるので俺も取って置きを使う。


〈半*霊化〉発動


事故…………ミスにより、姿が固定されてしまってはいるが、攻撃を回避するのだったら小さい方が良いだろうと考えて、姿の事は気にしない。


と言うかそう考えないと、やってられないのでそう自分に言い聞かせる。


まあ、こう言った事もあるから、あんまりこいつは使いたくないのだが、これを使う事による恩恵は絶大だ。

思考速度は、先程までと比較になら無い程に上がり、魔力操作もこの状態なら、魔力は体の一部となるので自由度や精密さも比較になら無い物となる。

それにより〈諸事万端〉も更に精度が上昇する。


さてと、これで少しは相手が出来るかな?


「おおっ!!」


急に目を輝かせて俺を見て来る。


こいつ………やっぱり、ショタ好きだよな?


少しは俺も真面目に、模擬戦やろうと思ったのだが、急にやる気をそがれている。

俺がジトッとした目を向けていると急に、咳払いをして真面目そうな表情をする。


「…………(ジィ)」


「ええい、その目をやめろ」


おっ、こいつの狼狽えている顔を始めてみた気がする。


おっと。


先程よりも速くかつ、出だしの緩急も早くなった。

頭部を狙った蹴り。

身体を逸らして回避するのではなく、しっかりと後方に飛び退いて回避、するが足が俺の頭部の延長上に来た瞬間、全身の筋肉が瞬間的に動きそのまま、前蹴りに変化。

しかし、それが分かりさえすれば。


避けられる!!


多少は驚いた様な顔をしているが、この連繋ながれにつなげて来たと言う事は、こっちがある程度動きを読める様になった事が分かっているのだろう。

動いている間であるが、裏回し蹴りに繋げた。


俺はこの連繋には、嫌な予感しかしない。


俺は尾の攻撃が当たらない範囲まで一気に飛び退く。

それは全身の筋肉比を見た時、全身のそれと尾一本のそれの比は大体、一対二くらいになる。

つまり、尾の攻撃は今の動きの倍以上の攻撃速度になると言う事だ。

この攻撃は、筋肉の動きを感知してからでは、今の状態でも回避できる気がしない。


………あれ?


そう思って大きく回避したのだが、予想に反して尾による攻撃は来なかった。

俺がキョトンとした顔をしていると。


「え?お主、今の状態の尾を躱せんじゃろう?」


「な……」


事実だが、それは………


他人に言われるのは、何かやだ。

くそっ、やってやる。


〈アイテムボックス〉の中から、今持っている槍と同じものを取り出す。

そしていつもなら、〈操作〉や〈重力操作〉系の魔法で浮遊させているが、今の状態なら魔力をもって直接、手を増やする事が出来る。

しかし、これをすると出した数に半比例して移動させられる範囲が、縮んで行くからな。

今、七個出して動かせる範囲は俺を中心として五メートル。

しかも、この状態で出来る疑似瞬間移動も魔力が届く範囲にしか使えないので、ある意味これを使う事によって退路が立たれるとも言えるし、〈諸事万端〉もその範囲内でしか使うことが出来なくなる。


詰まる所、完全に攻撃一辺倒な状態とも言える。


さっきまでは先手を取られていたが、今度はこっちから行ってやる!!


低い身長で更に体勢を低くして、前進。

しかし、全速力ではあるが、しっかりと俺の事を目で終えている様で、かなり余裕が見える。

距離が二メートルを切った瞬間、急速に方向転換。

今の状態はほぼ質量が零に等しいので、急激な方向転換をしようが体に負担が来る事もないし、殆ど消費無しでする事が出来る。


そして浮遊させている槍を全方位から向かわせる。

一瞬の間に数十の攻撃を妲己は正確に逸らしていく。

間入れずの連続攻撃や同時攻撃も掌で払い、引くときの肘で叩き落し、体を回転させて肩で槍を逸らしたりもした。


これは、自分も合気術として使えそうだな。


攻撃をしながら、妲己の回避術も観察して行く。

やはり、経験が違うので回避も読みがかなり精確で、払い方も超絶したものを感じる。


そんな攻防が、数分間続いた。

その途中で〈霊槍の王〉と言う称号を手に入れた。

これは〈半*霊化〉を使っている状態で更に、この状態での行動に補正がかかる称号だ。

それによって浮かせてる槍でも攻撃を受け止めるだけでは無く、拙いながらも逸らしたり出来る様にはなった。


少し違った攻撃をする必要があるな……


一本の槍を先行させて、それを追う様に突っ込む。

槍の下に潜り込み、下方から掌で打ち上げ、その状態から手刀で俺の首を狙う。

俺はむしろ懐に入って行った。

槍の刃がついている逆輪と言う場所を逆手で持ち、胸部に向かって突き刺そうとする。

妲己はしっかりと刃を片手白羽取りをし、俺の顎を膝で打ち上げ様とする。


今っ!!


頭上に瞬間移動、膝は空を切った。

空中に待機させておいた槍を操作、更に進行方向に重力魔法を使い、重さを数千倍にする。

現状の与えられる最高の速度を与え、たった一メートルと短い落下距離ではあるが、かけられた強力な重力魔法によって速度は更に上昇し、運動エネルギーは隕石に匹敵する物が、頭上から同時に六本。


普通なら、俺でさえ妲己と同じ状態になったら、俺の持つ特殊属性の一つである〈絶堺〉でも使わないとこれは、どうにか出来る自信が無い。

しかし、こいつならその体一つでどうにかしてしまうと言う、感じがしてしまうので次の攻撃にそのまま移る為に、槍を放棄。


立体魔法陣を作り上げ、さらににもう一種類の属性のものを重ねる。

そしてほんの数瞬であるが、全ての思考演算のキャパシイを詠唱に回した。


なお、槍の攻撃は気を纏い、自身の質量を増加させる事で身動ぎ一つする事無く、槍を逸らし躱した。

そして、それが地面に落ちる前に跳躍をした。


はは、あれでも本当に数瞬の時間稼ぎにしかならないし………


予想していた事でもこれは驚く。

だが、その数瞬で準備は整った。


火属性最上級 焦熱獄 範囲内の温度を等しく極熱の温度まで持って行く範囲内に文字通り、焦熱地獄を召喚する。

なお、熱は何時もの様に結界と真空の壁で防いでいる。


指定した範囲は、今、張っている結界内の全て、結界で切り取られている地面は全てが溶岩とかし、空気は温度の上昇によって気圧は数百倍以上になっている。

当然この状態でさえ、生物は死に絶える様な空間になっているのだが、魔力で自身の温度を保存し魔法の効果から逃れている。

まあ、それが無くとも気を全開にしていた時のこいつの質量は、この結界内に存在しているすべての物質を全てを足しても一パーセントにも及ばない程の質量だったから、超質量に阻まれて、しっかり効果で出るまで大変な時間が掛かる気もするけど。


そしてもう一つの魔法は闇属性最上級 重獄鎖 光さえも飲み込み縛りつける黒球の作り出す。

俺以外の全ての物体がそれに引き寄せられていく。

そしてダメ押しに。


〈死と境界の王〉発動


〈絶堺〉を使い超高温の地面、空気と共に押し潰す。


両者の魔法も維持したまま、圧縮を始めたので進めば進む程、内部は更なる地獄と化して行く。

流石にこれなら、出て来るのには本気を使わざる負えない事だろう。


俺がこの中にいたとすると〈白氷〉で熱の方を如何にかして、〈白焔〉で結界を如何にかするって言った所かな?

………最上級二個と〈絶堺〉、周囲の環境を使って禁級に届いたって感じかなこれは。


ん?気がさらに上がって行く………


さっきまでと尚、比べ物にならない。


「いったい、どこまで上がるって言うんだよ………」


つい声に出してしまった。

しかし、これはしょうがないだろう。

今、膨らんでいく質量は大陸か小惑星に匹敵する程だ。


「あいつの気は無尽蔵か………」


お前は魔力がほぼ無尽蔵だろうが、と言うツッコミが来そうではあるが、俺はほぼ魔力極振り……魔法使いだろうがとおそらく反論するだろう。

まあ、魔法使いなのに〈思考加速〉を持っている時点で、完全な後衛では無いと言われるだろう。

このスキルは〈思考加速〉と〈並立思考〉は、実はこの世界ではある程度の実力は必要であるが、それほど珍しい物では無い。

しかし、前者は戦士と言った前衛職が、後者は後衛職が得るのが普通でこれを同時に持っている者は、この世界にはそうはいない。

魔法戦士が〈並行思考〉を持っている者はいるがそれくらいだ。


〈絶堺〉が内部から破壊された。

それと同時に解放された空気と溶岩の蒸発が始っていたものが冷えて、飛翔中に固体に戻る。

そしてそれが弾丸の様に飛んで来る。


「あぶな!!」


自分に〈絶堺〉を使って飛翔物を防ぐ。


「………」


元々重獄鎖の置いてあった場所に妲己が魔力を足場に立ってる。

パッと見た限りでは、傷は無し、服が少々焦げたかな?と言う程度だ。


「ふむ、今日はこのくらいでいいかの。

久々に本気の攻撃を撃つことが出来たからの」


今日はって言う言い方は、何だか次がありそうで嫌だな……

まあ、結局尾は使って無かったけど、あれだけの気を視れたからいいか、あれを向けられたら即死しそうだけどね。

ああ、疲れた。




「てな、感じだな」


シェンの上にいる颯はそう説明を締めくくった。


「………」


シェンは説明中は何も喋らなかったし、説明を聞き終えた今でも口を開く気配が無い。


どっちも相当ヤバいって事しか伝わってこない……

と言うか、二人ともそんな事をしていたのに、まだ余力が残っている感じがするんだけど?


将来的には最強の〈龍王〉になるであろうシェンでもこんな反応なのであるのだから、常人には真っ青なくらいの頂上決戦であると言う事が分かるだろう。


10/3に移しました


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