079 新武装の訓練使用
俺達は互いにスキル・称号を使い魔力を高める。
「さてと、準備はいいか?俺は大会に出る時の戦闘スタイルを試したいからこの手甲と脚甲を中心にして今はやる。
搦め手を多く使うからそっちとしてはやり難いと思うけどそれでいいか?」
「はい。そういうタイプとはあまりやり合えないので寧ろやってみたいですね。
よろしくお願いします」
そう丁寧な口調で答えてはいるが口元には獰猛な笑みがはりついている。
強くなる事は絶対こいつも好きだよな………人に事を絶対に言えない気がする。
まあ、部下が強くなる事はこちらとしてもうれしいがこれが伝染するとちょっと物騒な集団に成る可能性があるから勘弁してほしいな。帝国武術大会の推薦状が二枚も来ている事から下手したら商会では無くて傭兵団と見なされる可能性も否定できないから困る。
「行くぞ」
折角なのでここは格闘戦をメインで行う。それと合わせて手甲、脚甲に組み込んだ魔法を使おうと思う。
と言っても自分で使えるのだけど大会で使う物だから少々コンセプトが今までのものと違う。俺が幾つもの魔法を使う事に対しての所持適正属性数を誤魔化すために有効的なだと思われる武器が優秀だからと言う理由づけ使おうと思う。これなら適度な所で適当に負けてもそこまで観客を含む者達におかしく感じさせないだろう。
「はあ!!」
先手はアルにとられた。
アルは〈魔力操作〉でだいぶ慣れて来た様で、魔力を使って足下で爆発を起こして加速するためのエネルギーを生み出すのではなく、一つ一つを小さくして関節部分で爆発させてそれを行う。
これによる利点は俺の様な探査能力が無ければ魔力を探知しにくく魔力を使った加速と見抜かれない事と加速エネルギーに変換するときのロスが少なくなる事の二つ。これによって加速し続ける剣技これにはリルに似た様な印象を受ける。リルと違うのは恵まれた体格からく知りだされる脚りだろうか、しかも攻撃のパターンの増加と体勢上無理の無い方を選択できると言う点だろう。
俺はその突進の速度度十分に乗せた斬撃を手甲に仕込んだ魔法の一つの結界を使う。これは特に強い物では無く精々中級くらいのものだ。しかしこの結界は少し違う。本来結界は空中に固定する物が一般的だ、だがこの結界が固定されている場所は手の甲の部分を中心にしている。更にこの各界の大きさは任意で変化させる事の出来る様にしてもちろん小さくすればするほど強度を増す。
そして一番の利点は手の甲に結界を固定している事から自分が習得した合気術の受け流しが使える点だ。
いつもの槍でやっている様に攻撃をいなしていく……いや、本来合気術は無手の技これに関して言えば武器を持っている気とよりも容易だ。相手のスキを見つけて手首を極めて投げた。
それを俺は足下で空気を爆発させて加速して追いかける。
この様な加速は意外と簡単ではあるが戦闘中は魔法の詠唱が困難である為熟練者にしかできない。
しかし、大会の推薦者たちレベルになればこれくらいは出来ると予想しているが、あえてそれ自分でせずに脚甲で行うのは他の選手よりも下に見られる為だ。
受けに回る事が多かった俺が急に接近して来る事に驚いているのか反応が多少遅れて呆気にとられた顔をしている気がする。
こんな事で反応が遅れてどうするんだ?と言っても直ぐに顔に獰猛な笑みを先程よりも深くして彼方も踏み込んでくる。
持っている剣で横に振るって来る。地面スレスレを這う様に体制を低くして斬撃を回避する。
再び足下で空気の爆発を起こしバク転の要領で頭部を狙った蹴りを放つ。
しかし、回避するようなそぶり一つ見せずにアルは俺の頭部に蹴りを放ってくる。
「っ!!」
「ぐっ」
俺の蹴りはアルのこめかみに入り、アルの蹴りは俺の交差した腕に入った。空中で蹴りを受けた俺はそのまま後方に吹き飛ばされる。脚甲の魔法と〈空歩〉を発動させて空中で宙返りをして地面に着地。
アルはその間に今度はこっちか体と言わんばかりに俺を追って距離を詰めているので一息つく暇も無い。
途切れる間も無くはなたれる剣閃を手甲で弾き、逸らして攻撃をやり過ごす。
ん~、訓練としても本当に手加減が無いな。それにこれは旅を始めた頃のリルと同じくらいの剣速………
この短期間でここまで強くなるとはいったいどれ程魔物を殺し、どれ程の訓練を積んできたのだろうか?だけどそれってそれだけ魔物に襲われたって事だよな、どれだけ運が悪いんだとも取れるけど……
さてと、今の俺のハンデは大会に出るレベルで戦う事だからまだこれが使える。
〈紫電の魔人〉発動
さあ、ここからが本番だぞ?
自身の身に雷を纏い、更に自分の周囲に雷球を作り出して浮遊させる。これは自分が攻撃を終えた瞬間もしくは攻撃をする一瞬前に使う事でたった一人で時間差攻撃をする。
雷球を先行させて自分も接近する。
アルは直感か何かだろうが目視もせずに攻撃を回避する。
まあ、これくらいはする事は予測しているので特に驚きもしない。だが剣の間合いの内側に入るのには充分な時間を稼ぐことが出来た。それに動揺する事無く柄を使ってまで攻撃をしてくる。
しかしこの間合いでは剣を持っている者がしてくる攻撃など、これか膝蹴りくらいしかないのでむしろセオリー通りに対応する事は容易い。
頭部を狙ってくるそれを軽く頭を横持って行きして回避して腹に掌を撃つ。
もちろんただの掌底などでは無い。雷と手甲に組み込んだ魔法の一つである無属性の強振を使えようにしてある。強振とは言ってあるがこれは精々初級レベルの魔力しか使っていない。しかし、そんなレベルでも直接生物に叩き込めば生物の持つ水分を強振させ強制的に温度を上昇させたり、細胞に直接ダメージを与える凶悪な技になる。
歴代勇者たちも〈無詠唱〉の恩恵で派手なものを使い事が殆どと聞いているから、こんな事を知っている者達はいないだろうから多分最初の方は毒か何かだと思われるだろうね。
「ぐぉ」
後方に跳ばれたせいで雷はともかく強振はほとんど機能しなかったが。まあ、今のタイミングならあれくらいはするよね。
俺はそれを追ってさらに加速。その勢いと全身の筋肉を連動させて回し蹴りを放つ。
脚甲でも強振が使える。そしてこちらの思惑通りに剣で攻撃を防いだが腕に強振の振動が伝わり腕が力を失う………筈だった。
あれ?…………あっ、魔断剣……自分で作っといて忘れかかってたよ……
となると魔法攻撃を一定以上のランクの魔法じゃないと攻撃が通らないしな。
こつこつと強振で体にダメージを与えて行く方にしようか。
着地する事無く〈空歩〉を使用して蹴りをもう一度放つ。もちろん剣で防ごうとするが、ここで更に〈空歩〉を使って攻撃の軌道をずらす。
ふむ。これはあれだな。打点がずれるから衝撃が伝わり難いな、他の武器でやるにはもっと練習がいるかな?まあ、いい。強振がある時は何も問題は無いのだから。
その後アルもこの攻撃に対しては攻撃の出を止める事くらいしか、この攻撃に対して最も有効な対処法を見つけて来て対応をしては来るがそれまでに蓄積されたダメージが限界を超えたのかついに膝をついた。
さて、そろそろまとめこの武装は空気の操作と無属性の強振が使用可能。この武装の一番の利点は強振によって接触するだけでダメージを与えることが出来る事だ。
まっ、こんな魔法を入れている訳だから威力度外視の当てるだけみたいな、威力の無い攻撃でもゴーレムとか非生物以外には十分なダメージを与える事の出来て、防御や加速まで出来る鬼畜低燃費系武装となっております~後で量産する予定となっています~
「ふぅ」
そう軽く馬鹿な事を考えながら一息ついて〈平速思考〉を解く。
っ、おっと。
いつもとは違い。称号による強化と体を魔力で動かすと言う戦い方をしなかった所為か疲れが〈平速思考〉を解いた瞬間に一気に来て軽く眩暈がしたためその場で少々ふらついた。
…………やっぱ称号無しの素の状態の身体能力じゃこんなもんか。しかし体力ないな。
レベルとかが上がっても上がってる気がしないんだよな、これは……
まあ、魔力で強化できて極論普段の戦闘時みたいに体は魔力だけで操作しているのだからいい気もするけど……
今思うと俺の持っている称号って魔力が上がるのが殆どだし身体能力が上がるのって〈龍殺し《毒》〉、〈白焔の魔王〉〈死氷の魔王〉くらいか……いや、〈紫電の魔人〉もか、これだけじゃ今の戦闘を耐えるだけの体力は無いか……
一応職業にも前衛職はあるから上げようと思えば上がられる気もするのだけど……
あれ?魔法戦士系って前衛じゃなくって中衛かな、となるとあんまり期待できない?
ん~、これだけで帝国武術大会に挑むのは普通に危険なレベルか………注目されないためにも適当に負けたいところだけど、もう少し強くしないと怪我をする可能性がな………
自分で回復魔法でも使えればいいのだけど光属性に対しては適正が無いからな………精霊魔法なら水なり風なりでも回復魔法はあるけど俺は精霊魔法も適正が無いしと言うか精霊に好かれないし………
と大会に向けて何か今よりも有効な物は無いかと考えていると妲己と雰囲気のよく似た集落の者に話し掛けられた。
ありがとうございました




