074 移動中(2)
さてと、如何したものかね?目の前で起こった事に処理不備を起こしているみたいだ。まあ、さっきまで恐怖のそのものであっただろう存在を文字通り一蹴したのだから当然と言えば当然だろう。
…………………あ、いい事思いついた。
おそらく悪戯を思いついた子供の顔とはこういう顔だろうと言う顔をしいる。
最近、彼は向こうの世界で出せなかった弱い自分を受け入れて貰えるものができたので、本来の性格を表に出し始めている。とは言え最初の頃の彼も確かに彼の気質なので何時でも切り替えようと思えば切り替えられる。
‘シェン。終わったからこっち来てくれない?’
‘何~。私が行っていいの~’
お互いに念話で会話をする。
出発の時に怖がらせるから人前に出るなって、言ったのを根に持っているな。こいつめ。
‘あの時は悪かったって、それにそっちもこっちに来られるならいいんじゃないのか’
‘まあ、いい。私は寛大だから許してあげる’
‘はは~、ありがとうございます’
………こう言う風に率先してボケに回るのはどうなのだろうか?
「と~ちゃく」
「早いな」
「と~ぜん」
………だんだん鬱陶しいな。
シェンの事を見てその声を聴いた少女は、
「ええ、竜!?喋った!?」
お、予想通り。戻って来た。
「わ、わ、わ、私はた、た、食べてもおいしくないです」
お~、感動だな~現実でこれ言う人いるんだ。
その後いつも通りの説明をしてシェンが愛玩モードになった所で説得が完了した。
「すいませんでした。助けて頂いたのに失礼な事を」
「気にしなくていいよ~」
「本竜もそう言っている事だから気にするな」
「ありがとうございます。私はミミルと言います」
「俺は颯よろしく」
「私はシェンよろしくね~
所でいつまでその姿でいるの?」
あ、忘れてた。これ危ない兆候なんじゃないのかな……
〈多面の道化〉を解除する。
「ふぅ」
「は・や・て・く~ん、忘れたんじゃない?」
「そんな事は無い」
「どうかな~どうかな~」
「………………」
「ははは、じょ、冗談だよ~怖いよ?」
「気にするな。大丈夫だ怖くないよ~」
俺達がギャアギャアやっていると。
「あははは」
ミミルが大声で笑った。
「「っ」」
「あ、ごめんなさい」
「気にしなくていい、客観的に見たら笑える光景だろう」
「こう言うのって周りが反応して気付くんだね……」
そんな馬鹿のやり取りをして俺達の警戒も解いてくれて、更に彼女の顔見知りしない質なのだろう俺たちはすっかり打ち解けた。
「あ!!!」
「ん?如何した」
「帰り道わかんない………」
「あっちだな」
「そうだね、彼女に似た魔力が固まっているし間違いないね」
「わ、分かるんですか」
「ん~ん、説明はしづらいけど。分からなかったら助けにもこれなかったよ」
「それは確かに」
納得と言った反応をしてくれた。余計な説明をしなくていいのは楽でいいな。
その後ミミルを集落に送り届けた後にミミルがこんなに懐いていると言う事は悪いものではないと言う事で滞在を勧められたが丁重にお断りした。
それならばと渡された、このあたりの固有のハーブや山菜はありがたく貰っておいた。向こうの世界でも似た様なものを知らない正真正銘初物だ。
去り際にミミルが連れて行って欲しいと言って来たので、
‘今の年頃で親からは慣れちゃいけないよ。もし大人になってその時同じ気持ちで自分の身を自分で守れる様になったらカールスルーエのマユズミ商会を訪ねて’
と言っておいた。
他の集落の人にもこの事は良く言っておいた。外は危険だからね。
ちなみにアルに合流するまでこのような事はもう数回あったと言う。
これは一人と一竜の知覚能力が高すぎる為にこんなに見つけられているだけだ。
おそらく彼の周りで面倒事が起こるのではなく、面倒事を見つけて行動するか如何かなのだろう。
ありがとうございました
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