073 移動中(1)
さてと、大会に行くにもアル達に帝国に行くことを伝えないとな。一応孤児院の管理をしてくれるのはソルさんと言う事だけどやっぱり伝えておいた方がいい事にこしたことは無い。
俺の作った物は俺に魔力が微弱に残っているので〈諸事万端〉で探そうと思えば結構楽に見つかるだろう。
「じゃ、ちょっとアルたちに会って来るから」
「「「はぁ?」」」
いつもの三人の疑問の声。
「じゃ、行って来る」
有無を言わさず俺が行こうとすると。
「いえ、待ってください。どうやってアルさん達の所に行くつもりですか」
「場所は分かっているからそこに向かって駆でいくけど」
「ええと、もう数週間前に馬車で移動しているアルさん達の追い付くのは無理ではないでしょうか」
「そうでも無いと思うけど。なあシェン行けると思うよな」
俺の本気の移動速度を知っているシェンに声をかける。
「ん?まあ、あのスピードなら大丈夫じゃないのと言うか私も連れてってよ。
まだほかにも仲間がいるのなら見て行きたいよ」
ん~、確かに早めに会わせておいた方がいいかな?
それにシェンは俺に付いて来れるから遅れは生じないし。
「よし。いいぞ」
「やった~」
他の三人は俺の速度に付いて来られないことが分かっているのか俺についてきたいとは言って来ない。
俺の予想通りに行けば往復に一日かからないけどここは余裕をもって伝えて置くべきだろう正直俺が動く中で何も起こらない確率はかなり低い。と言うよりも問題を見つけてしまうと言うのが実際の所だろう。
「多分三日くらいで帰ってくると思うからそれまでソルさんの言う事をよく聞いていつも通りにしておいてくれ。
「いってらっしゃい」
「お気を付けて」
「行ってらっしゃいませ」
そして氏俺達が街を出てから数分。
「あ~そ~ぼ~」
とか言ってシェンが始めたのは自分の魔力を押し固めてお互いにぶつけあうと言うゲーム。
ルールはすべて『操作魔弾』を使う事。速度が一定以下になるかアルのいる方を前として後ろに行ったら減点1。魔弾に当たったら減点2。減点10で負け。
と言うこれだけ聞けば簡単そうなゲームだが今俺たちは音速をはるかに上回る速度で動いている。
ハッキリ言うとこの速度で動いていればあと三十分くらいでつく。
まあ、それを考えれば遊んでもいいか。
ちなみにこれをするには『操作魔弾』は〈魔力支配〉を持っていないと使えないものなのだが……
初期のころ使っていたのは魔法で今使うのは純粋な魔力だけで行う物だ。
この二つの違いは座標変数を変え続けるのと自分の空間認識感覚で操作する物の違いだ。
まっ、最終的にはどっちも慣れると無意識なものになるんだけどね~
あ、今のシェンのサイズは馬くらいのサイズだから何方もハンデ無しと言えるだろう。
「じゃあ、行くぞ」
「いくぞ~」
そう言った瞬間に俺達は上空に向かって飛んだ。こういうのは上に居る方が有利だからね。
そうはさせまいとお互いの進行方向に魔弾を配置して行かせない様にする。
それを回避、同じ魔弾によるパティ、魔弾の操作権の乗っ取り。
主に防御法は三つ。
結局決着がつかなかった。最期の方は俺は乗っ取りを中心にして行い。シェンは取り敢えず攻撃をし続けたと言う感じになった。これは性格の違いがよく出る遊びだろう。個性が出て面白いともうが最低条件が…………
「はぁはぁ、疲れた………」
「ははは…、ほんとうに強いよね~
同じ【龍王】でも此処まで出来ないよ?」
ん~、あ~。何か【龍王】じゃないけど龍たちの『操作魔弾』の雨は有ったな~狂天と極点も使ってたけど今と同じような状態か…………
これは詰まると事強力極まりない魔法を抵抗しながらと言う事は、今の様に高速移動しているのと同じだったと言う事だ。
「これってよく龍はやるの?」
「そうだよ。子龍の頃に良くやるゲームさ~」
つまりゲームとして〈魔力支配〉を習得するのか……
元のスペックの高い種族は羨ましいな。
高速移動こみならあいつらの強さも納得だ。
「ふぅ、所で………」
「うん。いるね~盗賊かな~」
「本当にどこにでもいるな」
ため息を吐きながら話をする。
「そうだね~。奴らも見たら後三十匹はいると思えだっけ?」
「それはイニシャルGの害虫だ」
「ウザさで言ったら変んなくな~い」
……否定はしないな。
「それと何か追いかけているよね」
「そうだね~多分亜人なんじゃない?」
「ふう、じゃ、ちょっくら。消して来るわ~」
「物騒だね……消して来るなんだ」
〈多面の道化〉発動
一応変装。変装する姿はルージュ。デフォにする予定のマントと手甲を〈アイテムボックス〉から取り出す。
「じゃ、言って来るね」
「行ってらっしゃい~」
「はぁはぁはぁ」
何でこんな事になっちゃたんだろう?
森の中をウサギの耳を頭から生やした少女は走りながら考える。
彼女は集落の中でも一番を争うお転婆娘でいつも大人のいいつけを破って危険な場所に近づくと言う悪癖が有った。
今まではウサギと言う危機感知能力と生まれながらに卓越した脚力によって危険な場所も難なく遊び場として来た少女であったが他人にしかも自分よりも数が多くしかもランクの高い物から逃げるのは困難を極める。
しかも追っているは少女を傷つけないように捕まえようとしている為、無理に追いつこうとはしないで一定の距離を保ち、しかもそれでおいて集落には近づけない様に逃げる方向も誘導している。この慣れ具合は明らかにこの道のプロであろう。
少女はこのままでは彼らに捕まり皇国で商品となる事は逃れ様のない事であっただろう。
しかし。彼女にとっては最高の好運。追跡者にとっては最高の不運を運んで来る者が現れる。
「きゃっ」
普段は絶対に躓かない様なくぼみに足を取られてその場に転んでしまう。
「あ、こないで……」
懇願するが追跡者達は無言で近づいて行く。おそらく彼らは本当の意味のプロ。奴隷商に直接雇われている者達だろう。
彼らは商品を傷つける様な事はしない。しかし彼らに捕まった物達はそこらのゴロツキなどよりも結果的にはよっぽどひどい目に合わせられる。
彼らにとって目の前にいる物は、者では無く物なのだ。
そこに音も無く視界が赤い髪と赤いマントによって赤く染まり、更にその先頭にいた者の視界は次の瞬間に暗くなり二度と光を見る事は無かった。
先頭に居た物が一瞬で殺されしかも自分たちも何が有ったか何も分かっていない。その事から自分たちの敵う相手でない事を瞬時に把握。一目散にその場から離れる。
いい判断だ。だが逃げられると思って言うのか?
冷静かつ冷酷に追撃の魔法を使う。
現れたのは人の頭ほどの雷球。しかし当たった者を瞬間的に吹き飛ばすには充分。
「行け」
雷球に短く命令をする。
男たちは何が起こったのかも分からぬままに唯の黒い炭化した。その後は炭の欠片が残るだけとなった。
まあ、精々B級程度ならこの程度か。変装して損した。
「大丈夫かな?」
そうして呆然としている少女に話し掛けた。
ありがとうございました




