072 推薦状
さて、戴爵式から二週間貴族爵位は基本的に名誉職だから俺の生活は特に変わってことは無い。しいて言うなら交友範囲が広くなったと言う事くらいか。
ここ二週間で俺の元を訪ねて来たのは基本的に三種類の人間だ。
一種類目は俺の爵位が低い事から俺の事を取り入ろうとした者。
二種類目は魔法具局の職員。
三種類目は貴族の令嬢や何故か貴族の御曹司などだ。
二つ目までは意味が解るのだが三つ目は俺には理解できない。
「ウェイン。で今日呼び出したのは何?」
俺のほかにリルとレティシアまで呼んで何を話すつもりなんだろう?
「今日はそっちの二人あてに帝国で開かれる武術大会の推薦状が届いている」
「推薦状?」
「そう、推薦状だ」
え~と。帝国武術大会か……
確か俺達から見て五代前、大体千年位前の【勇者】が始めた大会で他自共に認める戦闘狂と言われていた男で唯一人間がSS-級に到達した猛者だ(以下【戦勇者】。
そんな猛者の開催した大会である為、大国以外からも様々な国から強者が集まる大会だ。
そして【戦勇者】は力がすべてそんな事を言う様な奴である意味人種無差別論者だ。
更に【戦勇者】は帝国分離戦争(本当は内戦だが)のおりで開戦のきっかけとも言われている。
付け加えてこの世界の一年の周期もついでに説明しておこう。
この世界での一年は三百六十日、十二か月で一年だ。この世界に明確な四季と言う言い方は無くこちらの言い方では大まかに昼長期、夜長期、中間期の三つ。
これはこの世界に存在している太陽神と月神が力の関係にある。
太陽神の力が優勢な時は昼長期が夏。月神が優勢な時が夜長期が冬。
そして細かく分けると夜長期の後に来るのが暖中間期、春。
昼長期の後に来るのが寒中間期、秋と考えれば解り易いだろう。
なお地方による気象のばらつきは、精霊の分布の違いで起きるそうだ。
しかし、今までの【勇者】の文献を見たけど技術革新などプラスになる事も起こしてるが,実を言うと圧倒的な不利益を起こす災害と呼んでいい様な者もいる。
その大半は暗殺により死亡している。
しかし,この【勇者】は女にも興味が無くそもそも毒も聞かないような奴であった為,暗殺は根本的に不可能だった。
最後は【天龍王】に挑んで死んだらしい。まあ神や精霊王を除けばこの世界で最凶だろうからな。
これは俺の頭の上に居るシェンに聞いたので真実だろう。
ちなみにその場所は俺がちょうど〈半■霊化〉を手に入れた帝国、聖国、皇国の領土上の境界線で半径五十キロは良く戦場になる為に砦はあっても街の無い場所だ。
「二人は出たい?」
「うん!!」
「出来れば出させて貰いたいです」
「そうか……」
俺としては大会期間中帝国にも近づきたくない。
だってそうだろ絶対なんか起こるじゃん、起こる事に俺の作った魔法具を百個くらい賭けていいくらいだよ。
【勇者】と【魔王】が同時に居てなんか起こら無い訳がない。
絶対いい機会だから、とか言って魔人が来るよ。
でもこの推薦状を断るのも難しいし、根本的は二人は乗り気だし。
「君は出ないのかい?」
「冗談はよしてくれ。俺は人前に出るのは嫌いなんだ」
正確には大衆の目の前で力を晒す事とこれ以上付きまとって来る連中が増えるのがだけど。
「惜しいな。君なら優勝も出来るだろうに」
「お兄ちゃん出ようよ」
「変装でもなさればいいかと」
レティシアに至ってはもうすでに俺の断る理由を潰しに来てるし。
「まあ、それだけなら。お前に渡されたこれで連絡を入れればいいんだが」
そう言って銀色のカードを取り出す。
ちなみにこっちも性能の上昇に成功した。
カードごとに処理するのではなく、所々に中継点を作ってそこに声色をクラウドの様に保存しておいてそこから声色を再生するようにした。
色々と作業に手間がかかるので出来なかったが爵位を持って事によって実験的に配置する事が許された。
ちなみに今現在これの調整が出来るのは俺とミーリャとシャノンと言う名前の三人いる女の子の中の一人だ。
もう一人のスルトって言う子は〈魔力操作〉が派生して【破炎】って言う特殊属性を習得していた。
これは触れた物を破壊する属性で特殊属性は詠唱がいらないので習得するための最低条件に〈魔力操作〉が有るのだろう。
皆、色々と特別なスキルを入手しているな………
あそこに居たのは何だか訳有の子が多いのは知っていたけど何だか都合がよすぎる気がするけど………
まあ、原因は本人にあるのだけどまだ知らなくていい事だね。
その原因は本人には確認出来ない様にしているからね、これは本人にはまだ秘密。
「紅髪の悪魔に推薦状が届いているんだ」
「は?」
おい、今何つった!?俺の変装姿に何でそんなもんが来ているんだよ。
「君の疑問はもっともだろうが………
君が倒した護衛の者が前回大会の五年前の大会の決勝大会入賞者上位128位に入っていたから」
「へ~、アイツそんな事してたのか。
なんでそんな奴あんな所で用心棒なんてやってんですか!?」
「理由は不明だ。
が、勧誘に言ったものを斬り過ぎて指名手配され裏稼業専門になったと言われている」
分かってんじゃん。俺はどこまで運が無いんだろう。
「え~と、何とかなりません?」
「無理だろう」
「はぁ」
そうだろうな。
この推薦状意外なくらいに逆らわないんだよな推薦された連中がまあ、推薦状持ちは決勝大会からの出場ちなみにここに来ると賞金が出る。
つまり出るだけで金が貰えるのだから断るものも稀なのかも知らないけど。その所為で推薦状を貰った者が出場する事が不文律になってるんだよな。
これに選ばれるのは最低S級相当大体このランクは五十人前後しかいないそうだ。
しかも大体が戦闘狂。
本当に溜息が出る俺的には賞金じゃなくて唯戦いたいから来ていると予想している。
なおS-級なら世界で二百人ちょっとくらいは居るらしい。
「でも、俺達は商会としては出ませんよ。まだそこまで広まるのは早いですから」
「私としてはそっちの方が都合がいいのだが」
「勘弁してください」
「そうだな冗談だ」
「やめてくださいよ。そう言う冗談は」
「へ~、出ちゃいなよ~」
俺の為の上のシェンが行き成り話に加わって来る。
「…………………」
ああ、流石のウェイン辺境伯様もこれは、反応に困るよな硬直してるよ。
一応姿を見た時は少しくらい反応が有った程度だったけど、言葉を話すって言うのはそんなに衝撃的な事なのかな?
「颯君。その竜は一体どこに居たのかな?」
「シェンに関してはノーコメントで。
危惧している様な事は在りませんのでそれに関しては大丈夫です」
「そ、そうか」
「そうそう、私は安全だよ~」
俺はため息を吐きながら。
「そう自分で言うのは相手の不安をあおるから止める」
「え~、人間って面倒だね。
何で相手の言う事を信用できないのかね~」
「そう言うもんなんだよ。
お前らと違って人間は弱いから相手の事を少しでも出し抜いたり、自分を優位にしようとするんだよ」
「え~、しょうも無いね。
もっとシンプルに行けばいいのに」
「ははは、痛い言葉だね。
竜にこんな事言われるとは」
乾いた笑みを浮かべながら答える。
「すいませんね。こいつ今言ったとうり思った事をそのままいうので」
「いい。私としては嘘に塗れた奴よりは好感が持てる」
「そうですか。
ところで孤児院の方ですが」
「ああ、手配しておいた。
私の信頼のおけるものを職員としておいた」
「そうですか。ありがとうございます」
「気にしないでくれ。孤児院は常に金欠だった。
他の者達はどうもそちらよりも観光や魔法開発に金を使えと言って来る
まあ………」
「その事に関しては俺としてもあまり責められませんね。
俺としても多くの子供を助けたいと思いますがここの都市の性質上あまり声を大にして言えません」
はぁ、こう言う時にかがって言えばそう言った者は仕方ない。
利益を求める事が仕事に奴にそれに反してまでどうにかしろと言う訳にはいくまい。
それにこの街のスラムの規模は他の街に比べても圧倒的に街面積に対する比率が小さい。
全体の1~2%程となっている。
普通の街であるならこの数字は驚愕にあたいする数字であるが、それでもこの街の人口は百万人を超えている。
その事から単純に考えて、数万人はスラムで生活している。
これは実際に〈諸事万端〉で調べたので確かだ。
「俺が保護するのは子供を中心としてある一定の年連の者は…………
何か仕事を斡旋する方向でいいでしょうか?」
「何と言うか君が子供を育てるとすべて化け物になって謀反を起こすのではと言う者もいるのだが」
「その化け物と言うのは〈魔力操作〉の事ですか?その言い方には問題が有りますね。
それに誰でも習得することが出来ると言われているようですが、そんな事はありません。
最低限の魔力を一定以上生まれながらに持っていると言う条件が有ります」
「生まれながらにか?」
やっぱりいい所に反応するな。
「そうです」
「レベルアップによる魔力上昇では駄目なのか?」
「まあ、駄目ですね。
元より持っていたものよりも倍以上になったらアウトです」
「その理由を聞いてもいいかな?」
「ええ、構いません。
成長する事によって魔力が増えるのはいいのですがレベルアップをすると言う事は自身の魂に余分なものが混じります。
自分の魔力を操作できないものがそうなった場合〈魔力操作〉の習得難度は跳ね上がります。
それはそうですよね、本来持っている以上のものを持っていると言う事になるのですから。
まあ、例外とするのなら召喚者くらいでしょうか」
「そうなのか………」
「どうしました?」
「そこまで正確な事を知っている者はここの魔法局に持いないよ。
君は本当に魔法慣例の事は良く知っている」
「俺の知識は……まあ、反則みたいなのもですから」
「そんな事は構わないと思うが、本人が使いこなせているかどうかだと思うぞ」
「そうですよ」
「そうだよね」
「そうだよ~」
「………お前ら今まで喋ってなかったのに行き成り喋るなよ」
まあ、肯定されるのは嬉しいが。
「まあ、参考にさせてもらうよ。
所で話は変わるのだが紅髪の悪魔の詳細なプロフィールを考えておこうと思ったのだが」
「詳細なプロフィール?」
「そうだ。それが無いと大会に出られん」
そして俺を除く三人と一竜が話し合い名前は紅から率直にルージュに決定した。
背格好は俺よりも五センチほど低くし手足、胴体を変に見えない程の極限まで細く。
顔は結局仮面で隠し声色は男性にしては高く女性にしては低い不思議な声色に。まあ、基本的に無口だけど。
使用する武器は手甲、脚甲、雷を使用しての魔闘術。
過去の設定は元々孤児で育ち、不正を働く者を殺してきた義賊と言う設定。
………下手なことすると指名手配されるんじゃないのかよ、と言いたくなるが完全に乗りで決めているので無粋な突込みはしないでおこう(面倒臭いこの設定の話し合いに混ざらないといけないので)。
何か聞かれた時に俺が臨機応変に出いけばいいか。
正直言うと勘弁して欲しい。確かにこれなら俺を特定するのは難しいけど面倒臭いな。
まあ、無口な分意外と楽だと思うけど。
ありがとうございました




