057 日常風景 颯⑴
邸に戻った俺は気配を消して自室に入った。
ふう、数日間くらいはゆっくりしようかな、ここ数日は色々あったから休んでもバチ当たらないよね。
取り敢えず今日は寝よう。
ベットに倒れこみ数分後には規則正しい寝息が聞こえるだけとなった。
翌日の朝いつも通りの時間に起きた。
……ねむ~。
彼は寝起きはよっぽどの事が無いかぎり弱く、起きてから数十分は基本的にボーっとしている。
なお、何故こんな時間に起きているのかと言うと自分のも、この事を自覚しているのでこの姿を出来るだけ見せない様に人のいない時間に朝食をすませる事にしている為だ。
「ふぁ……」
ふらふらと少々怪しい歩き方で廊下を歩いて食堂に向かう。
いつも通りに食堂で調理をしているミーリャに話し掛ける。
「おはよ~、今日のメニューなに?」
「おはようございます。今日は和食です」
「和食ね~楽しみ」
今日はあの状態ですか、毎回思うのですがギャップがすごいですね。
いつもは綺麗におろしている髪が今は毛先がはねていて、普段は鋭い目元はトロンとしています。
………これはどう使うのでしたっけ?
ミーリャがポケット取り出したのは、一見すると前に渡された通信機よりも一回り大きい銀色の箱に見えるもの。
確か撮影機と言いましたか。確か魔力を流して撮りたいものを指定して、あ、撮れました。
もう何枚か撮っておきましょう。これを渡すと小さい女の子たちは良く言う事を聞いてくれますからね。
写真を撮っている時彼女は恍惚とした笑みと黒い笑みを混ぜた様な笑みを浮かべていた。
写真を撮った後、料理を完成させ座っている席に持っていく。
「お待たせしました」
「ありがと~」
………何とも気の抜ける声ですね。まあ、気付かれていない様ですからいいでしょう。
もそもそとゆっくり料理を食べていく。頬がしっかりとゆるんでいるので満足しているのだろう。
食後のお茶も用意しておきましょうか。
調理場に戻って緑茶を用意して持っていく。
「颯様、お茶を用意いしました御飲みになりますか?」
「ん。もらう………ずぅ、ふぅ」
両手で湯呑を持ち目を瞑って一息入れた。
………ここも写真を撮りたいですね。でもこの距離だと流石にこの状態であっても気付かれますね。
「ん~ん(コキコキ)」
伸びをして肩と首を鳴らす。
あ、もう終わりですか……
残念です。
「ふぅ」
ああ、とろんとして可愛かった目が戻ってしまいました。
………何か言いたい事がありそうなのでいいでしょう。
「いや~。ごめんね」
「いえ、いつもの事ですから」
「それはそれで問題なんだけど………
あ、そうだ。今日から三日くらいはみんなに暇を出すって言っておいてくれないかな?」
「暇ですか?………と言っても元々何かやる様な事は無いと思うのですが」
やる様な事と言えば訓練くらいですが、それも一日につき数時間も無いですし。
それに私の場合は休みになってもしょうがない気が………
「あ、全員にお小遣い渡すから好きに使っていいよ」
「え?お小遣いですか……」
「一人一日大銀貨一枚くらい、この三日間は渡すから食事も好きにしていいよ」
ふむ、と言う事は私もお休みですか。
「でもそれほどの大金を持っていると狙われてしまうのでは」
「それについては何とかなりそうだから大丈夫。まあ、スラムに近づくのは危ないかも知れないけどそれ以外なら大丈夫だらか」
……………何かしたのでしょうか。まあ、この方が言うのなら大丈夫なのでしょう。
「じゃあ、先に渡しておくからみんなに渡してね」
そう言ってポッケトから銀貨の入った革袋を取り出す。
なぜあの大きさの物がポケットからまた新しい魔法具でしょうか?いろいろと便利なものを作りますね………
これは経済に大きな革新を起こしそうな気もしますが。
「分かりました」
「それじゃあよろしく。ご馳走様」
そう言いながら食器をキッチンの方に持って行って自分の使ったものを手早く洗って、食堂を去っていきました。
…もう少しで他の子も来ますし準備に戻りましょうか。
いつもの様に皆騒がしく朝食を食べていきます。全員揃ったようですからお休みの事を話しておきましょうか。
「お話があるので聞いてください」
パンパンと手を鳴らしてこっちに意識を向けさせます。
「颯様がお小遣いをくれて三日間は好きにしていいと仰っていたので、これからみんなにお小遣いを配ります」
「え、まじ」
「いくら、いくら」
「お洋服買えるかな?」
「お菓子お菓子」
お小遣と言うワードに反応して一気に騒がしくなる。
「一人一日銀貨一枚です」
「「「…………」」」
余りの大金に一同騒然としています。まあ、この反応が普通でしょう。子供にこんな大金を渡す人はそうは居ないでしょう。
「まじ」
「すげー、したい事なんでも出来そうじゃん」
「颯様、太っ腹~」
「ふふふ、お菓子お腹いっぱい………」
ザワザワ
パンパン同じように手を叩きます。
「はい、静かに。みんな計画的に使う様にね」
「「「は~い」」」
まあ、無理でしょうけど自由に楽しく回って来てくればいいですね。
部屋に戻った俺は取り敢えずはねた髪を整える事にした。
これ様に作った魔法具があるしね~。髪を重力魔法で髪を下方向に引っ張ってから、髪全体を均一に湿らせて全体をゆっくりと熱して乾かしながら寝癖をなおす~後は櫛を通して完成ってね~これなら数分で終わるから便利だよね~
ちなみにこの魔法具は全員に渡してある。俺はこれでいいけどそれ以外にもいじりたい奴にドライヤーみたいなやつとアイロンっぽい物を渡した。
渡したら女の子たちを中心に毎日使うようになっていた。最初は驚いていたけど順応性高いな~と密かに思っている。
さて、毎日こんな事をしていたら髪痛むんじゃね?と思うかも知れないか驚くことにこの世界にはシャンプー、リンス、ワックスと言ったものは一通り有った。変な所でこの世界には向こうの世界の物が伝わっている。こっちは別の【勇者】らしいがこっちに来る【勇者】共は何考えているんだろうな。
あ、人の事は言えませんね。まあ、これの作り方は知らなかったのでありがとうございました。大変助かっています。
あ~話がそれたな。さて今日は何しようか?
ん~、そうだ図書館にでも行ってみようかな。ここの図書館は世界一ってくらいに大きいし、色々な事を調べられそうだしね~
あ、そうだ。許可書?みたいなモンも貰いに行こうかな。あった方が楽だろうし。
え?連絡手段?面倒だから不可視化してまた侵入するけど。
〈多面の道化〉が予想以上に使えて不可視化も出来たし。
なお、これには全方位の景色をリアルタイムに認識できてそれを反映する為の思考速度がいるので例え同じ称号を持っていようが彼と同じ事をする事は出来ないだろう。
こんな所にも彼は異常性を発揮している。まあ、少ししたら〈不可視化〉なんて言う。スキルも手に入る気もするが。
その後二人の所に行ってこの事を教えた時に一緒に居たそうだったが今回は遠慮してもらった。
その時に何かを思い浮かんだ様な顔をしたがすぐに勿体ないし~って言う感じの顔になった。
………ここで使ってくれると後が楽なのかも知れなかったかな?
ありがとうございました




