044 市長との会話
俺とレティシアはこの町で一番大きな建物、街の産業管理局の前に来ていた。
「大きいですね」
「そうだね、ここは貿易が中心の街だからね、殆ど貴族がいないんだそして此処にはこの街にいる数少ない貴族の一人である。
ウェイン・カールスルーエ辺境伯がいる」
「え?此処に居るんですか」
「ああ、何でも仕事にしか興味がない様で自分の屋敷に帰らずに一日平均15時間くらい事務仕事をしているという噂があるくらいだ」
「な……それはすごいですね」
驚愕した顔をしている。お、珍しい。
「まあ、そうだね。考えられないよ」
「……」
「まあ、商会を開いてから当分は俺もそう言う生活になると思うけどね~」
「そんな事をしたらお体を壊します!!」
「大丈夫大丈夫、だって俺だよ?」
「そうですが………」
え?反論無しか~まあ自覚してるけどね………
「さあ、中に行こうか」
周囲の目も厳しくなっていたので中に入ることにした。
中に入り受付に向かう。
「すいません、商会の設立書を持ってきたのですが」
「拝見します」
受付嬢に俺の書いた設立書をチェックしていく。
「確認しました、登録しておきます。他に何か御用はおありですか?」
懐から市長の面会許可状を取り出す。
「市長との面会をお願いします」
「…………お預かりします。少々お待ちください」
エントランスで三十分程待っていると受付嬢に呼ばれた。
「この札をお持ちになって奥のエレベーターにお乗りください」
知ってはいるけど人に有ると聞くと、本当にあるのかと驚く。
自分のスキルがおかしいとは思え無いけどねぇ、ちょっとこれは……
そしてエレベーターに乗り市長のいるフロアに向かう。
どうやら特定のフロアにはこの様な札を持っていないと、そこには行けないらしい。
俺はこの魔法陣はもう覚えたからいつでも来れる様になったけどね~
重そうな扉をノックして
「失礼します、本日面会を希望していた颯・黛です。」
と言う。
「入りたまえ」
答えが返って来たので部屋に入る。
「失礼します」
「失礼いたします」
そこにいるのは、色白ではあるが体も鍛えてある様で貧相な印象も受けずに体から覇気も感じる壮年の男性がいた。
軍人みたいな風格だな。
「ふむ、君かね。新しい魔法具の開発をしたと言うものは」
「ええ、そうですよ」
「君と会う今日を楽しみにしていたよ。この報告書が本当なら君を発明はこの国の産業を大きく発展させることだろう。
おっと、すまないそのソファーに座ってくれ」
「失礼します」
「ふ、何そんな固くならないでくれ、君とは長い付き合いになるだろからな」
何と言うか貴族らしくない気さくな印象だな。
本心からいっているし本当にこの国のいやこの街の産業を本当に考えているんだな。
どうやら信用を置けそうだ。
「茶を用意しよう」
と言い自分で部屋の角においてあるティーセットで紅茶を入れている。
「わざわざ辺境伯がすることも無いでしょう」
「いや、これは私の趣味であると同時にこれは安全のために必要なのだ」
「安全あのため?」
キョトンとした様な感じの声でおうむ返しに聞いてしまう。
「昔此処でメイドに運ばせた茶を飲んだものが毒殺されてしまってな。
それ以来自分で入れる様にしているのだ」
「はぁ、そうですか……」
それは自分の危なかったのでは………
レティシアもポカーンとしている。
「ほら、入ったぞ」
「ありがとうございます、いただきます」
「ほお、今の話を聞いて警戒もしないのか」
「毒が入っているかどうかは、見ずにでも分かりますから」
俺のスキルなら何か入っているかなんて成分表を書けるくらいに詳細に解るし。
「ふ、羨ましい限りだなそれは、私はいつも毒に怯えているからな」
「そんな事は無いでしょう、あなたなら絶対の信頼を置ける人間はごまんと居るはずですけど」
「残念だが世の中何があるか解らん家族を人質にされたら、簡単に裏切るだろう」
「あなたがそんな事を考えて無い訳が無いでしょう。
それにここで働いている人間に……特にこのフロアにいる者の家族にも護衛がついているでしょう」
「耳がいいようだな」
俺はフッと笑い。
「俺には優秀な部下がいますから」
「羨ましいな、私にくれよ」
「あげませんよ」
「「ははは」」
うん、どうやら気が合うようだ。
あ、忘れてた。来た。
ズドン!!!
「何だ?」
「街の東のようですね何があったのでしょう?」
ポケットの中の通信版が振動する。
「何だリル?」
「おにいちゃん、大変だよ。魔人が攻めて来た」
「何?魔人だと」
俺は驚いた声を出す。
「何だとそれは本当か?」
荒々しいノックの音がする。
「お話の途中失礼します」
ここの従業員の男が入って来て、
「大変です。魔人がこの街に攻めて来ました」
「何だと………」
「レティシア。リルと合流し魔人を討伐せよ」
「了解しました。私の力は主の為に」
「任せたぞ」
レティシアは窓から飛び出し音のした方へ向かう。
「大丈夫なのか?」
「ええ、大丈夫ですよ。彼女は、強いですから」
俺はニヤリと自信ありげに笑った
ありがとうございました




