038 謎の女王
紫苑視点です
私は勇希を倒し出て行く権利を得た後与えられた部屋に戻り荷物をアイテムボックスに入れて旅の準備をしていた。
「ん?」
何だろう?
自分の部屋のドアをノックする音が聞こえる。
「ちょっといいですか?」
誰だ?聞いた事の無い声だな。
それに先程の事もあり今私は相当恐れられているだろう。
このタイミングで人が訪ねて来る事などないだろう。ましてや見ず知らずの者が……
まあ、勇者を圧倒したのだから当然ではあるが。
「誰だ?」
「サミュエル・イシュ・チェル・グローリー」
「グローリー?」
王族の家名だがなぜ何故王族が……
それにサミュエル?聞いたことも無い。
一体何者だ?
「入ってくれ」
「失礼する」
入ってきた人物は、癖の無い金髪を膝下まで伸ばした美しい女?だろうか、何だか体の骨格に違和感かあるな。
「お前は、誰だ?
サミュエルと言う名の王族は居ないはずだ。
偽るならもう少しマシな名があるのではないか」
艶麗な顔でこれまた絵に成る様な仕草で笑って、
「ふふふ、ええ、そう言う事になっていますね」
「気になるが私は一刻も早くここを出ないといけないからそんな話を聞いている暇はない」
「まあまあ、聞いておいて損は無いと思いますよ?
あなたが此処を出て行く理由は」
息を吸い一区切りしてから。
「白髪の少年を探しに行くのでしょう」
そう、確信を持って言った。
「何………貴様どこでそれを」
私が誰にも話していないことを何故知っている。
いや、それよりも私が出て行く理由を知っていたとしても、なぜ彼の特徴を知っているのだ?
「なあに、単なる推測だったんだけどねえ。正解みたいだね。
知りたいこの事、いいよ、教えてあげる」
「何かその後に来るのだろう、いいから条件を言ったらどうだ?
時間が無いのだが」
「ありがとう」
万人が見とれてしまう様な笑顔を浮かべて礼を言ってくる。
「なあに、そこまで難しい事じゃないよ。連れて行ってほしいんだよ、私も彼を探しに行く旅にね」
「は?」
つい淑女としてどうなんだと言う声を出してしまう、しかしこの理由は意味が解らない。
なぜ彼女は彼に興味持っているのだ?
やはりここで斬っておくべきだろう、後で邪魔に成りそうだ……
「待ってください、あなたが思っているような興味ではありませんよ」
「信用ならないな」
〈暴戻の夜叉〉〈放擲者〉〈刀神〉発動
〈鬼気〉〈縮地〉発動
【黒煉】固有属性【黒炎】発動
相手がどれくらい強いのか分からない、流石にすべての感情を捨てての攻撃はしないが、自分に出来る最強の攻撃を繰り出す。
「そうですか……
まあ、貴方で私を倒す事は不可能です……
〈無限結界〉」
「っ!?」
急に現れた魔壁によってあっさりと攻撃を止められ、まるで手招きをするかの様にゆっくりと手を向けて来る。
その瞬間今まで感じた事が無い程の膨大な殺気を感じ、無意識のうちに部屋の角まで下がり距離を置いていた。
重心を落し刀に手をかけいつでも攻撃できる様な体勢を取っているが内心は、
何だ、こいつは!?なぜこんな化け物こんな所にいるのだ。
とてもではないが戦う事など不可能としか思えない心情である。
「まあ、落ち着いてほしい。私は君と争うつもりはないよ。
だから剣から手を話してくれないかな?」
そう言うと先程の殺気が嘘の様に消え、穏やかな印象を与える表情に戻った。
「はぁ、はぁ…」
私は殺気が消えた事により、気が緩んでしまい、地面に膝をつく。
強くなったつもりだったんだが……上には上がいる。
まあ、確実に問題事が起こるだろうが、ここで断って殺されてはたまらない。
それに彼女ほどの実力者となら追っ手もやり過ごしやすいか、どうせ面倒事は起こるのだろうから一人分くらいは、誤差の範囲だろう、自分にもメリットがあるとそう結論づけ、
「分かった一緒に行こう、よろしく」
「こちらこそ。あっ、私のことはエルでいいよ」
さっきの攻撃なんて気にも留めていないと言うような口調で言って来た。
「じゃあ、私のことは紫苑でいい」
「うん、紫苑。よろしく」
見惚れて仕舞う様な屈託の無い笑顔で返事をされたせいで、算段的な思考に対し少々自己嫌悪の気持ちを抱いたと言う。
ありがとうございました




