029 カールスルーエへの道中
今回の投稿で十万字突破しました。
これからもよろしくお願いします。
俺達は、迷宮都市ザクセンから、馬車に乗ってのんびりと移動するつもりだったのだが………
誤算があった。
この世界で街の外は、いつモンスターや盗賊が襲って来てもおかしくない危険な場所だ。
その為特に舗装もされて無い道をそれらから追いつかれない様にする為に、特別に掛け合わされて作り出されためちゃくちゃ足の速い馬を使っている。
ここまで言えば、どう言う事が起きたのか、もう想像するのは難しくないだろう。
舗装のされていないがたがた道+高速で移動する車=揺れが、酷くて、馬車酔いしました……
現在は、他にいる乗客にばれない様に、寝たふりをしながら、敷いたマントを操作の魔法で浮遊させて体に衝撃が来ないようにしている。
こんな事に魔法を使っているのは、世界広しとは言え、こいつと王族くらいだろう。
次に、移動する時は絶対に、揺れ無い、馬車を俺が作ってやる。
と、大変、下らない決心をしている位なので、この馬車の移動がどれだけ安全が確保されているか良く解るだろう。
何故ならこの馬車は向こうの世界の自動車位の速度は出ているからだ。
しかし、世の中に例外は、良く有る事だろう。
特に、異世界から来た人間が乗っている馬車には、不自然な程に面倒事がよって来るのは、何故なんだろうね?
「と、盗賊だ!!」
「なに、おい、荷物を守れ‼」
遠くからそんな声が聞こえる様な気がする……
「おにいちゃん、盗賊が来たみたいだけど如何するの?」
とても、重くなっている頭を持ち上げる。
「危なくなったら手を貸すけど、まあ大丈夫なんじゃないの?」
「ええ~」
……ああ、これはそう言う事か。
「じゃあ、やって来て良いよ」
「え、ホント、行ってくるね」
と言って、外に出ていく。
はあ、セーラさん。
なんでこんな風に育てるんですか……いや、貴方なら率先してそう育てそうですね。なんだかんだ言ってセトさんも大人しそうに見えて同じ戦闘狂なんだろうから仕方ないのかな………
仕方ない。
〈諸事万端〉発動
知覚能力を外に向けて外の様子を確認する。そして何時でも魔法で援護出来るように、魔法を用意しておく。
まあ、必要ないとは思うけどな。
俺が作ったあの双剣を持っている限り、上手くやればS-位の敵なら多分倒せるだろうから、杞憂になると思うけどね。
さて、外に意識を向けるか。
「荷物と女を置いていけば、命だけは、助けてやるぜ」
髭を手入れもせずに、伸ばしっぱなしにしていると言う雰囲気のおっさんが、正直言えば、使い古された定型文の様な事を言う。
なんで盗賊は皆同じ事言うんだろうね?
ランクはB-って位ところか、まあ強い方だな真面目に迷宮に潜っていれば準貴族位の暮らしは出来るのだけどなあ。
何でそんな簡単な損得勘定が出来ないんだろう?
でも、この程度なら、部下を含めて一人で任せても怪我一つも負う事は無いだろう。
護衛の冒険者たちが隊列を組んで盗賊たちから馬車を守ろうとする。
「魔法に気を付けろ」
「近づいて来るまで、攻撃は仕掛けるな」
と、言う感じの指揮を出しているのが分かる。
気の強そうな女だな。
出来れば関わりたくないタイプだ。
「お、いい女が居るな。
分かってんだろうなお前ら、女は殺すなよ」
舌なめずりをしながら言う。
そこに、リルちゃんが出ていく。
「っ、こいつはエライ上玉じゃねえか」
こいつ、ロリコンか、救いようがねえな。
てっ、周りの連中も同じような顔してやがる!!
ロリコン盗賊団か、こいつら!?
「おい、ガキ馬車に戻ってろ。
あっちの男の方を連れてこい」
「大丈夫です」
そう、答えて剣を抜く。
そこにいる全ての者が抜かれた剣の放つ威圧感と美しさに息を呑むのが分かる。
こんな良い反応をしてくれるとは頑張って作ったかいがあったな。
「いや、お前が戦うのは、いいが。
あの腰抜けを連れてこいと言ってるんだ」
「危なくなったら、援護してくれますよ?」
「はあ、馬車から出てこないやつに何言っているんだ?
出来る訳が無いだろう」
まあ、普通の反応だろう。
でも何かしておかないと、後で五月蠅そうだから多少驚かせてやるか。しかし腰抜けって言っているのなら戦わせようとするなよ。
火属性中級魔法 灼球 50cmほどの当たると爆発を起こす魔法を同時に16個作り、馬車の周囲に配置する。
そして最近出来るようになった一芸を披露しよう。
〈魔力支配〉発動
これを使って、彼女の目の前に、漂っている魔力を使い空中に文字を書く。
‘見えているし、聞こえているから、安心して戦うがいい。
お前らが全滅したらこれで、盗賊たちは殲滅しておくから‘
「っ」
あははは、面白いくらいに目を見開いて驚いている。何度も文字とこっちを見ているな。
まあ、これは当然であろう。
自分から離れている場所に魔力を使い文字を書く。これは巨大な立体魔法陣の必要になる、超級、禁術、第13階梯を使うために使われる技術であるからだ。
なお、超級、禁術、第13階梯が使えない理由は本当はここに有ると言っても過言ではない。
最低でも習得難度が高いとされている〈魔力操作〉を出来れば〈魔力支配〉であることが望ましいからだ。
そして今までその階級の魔法を使われた記録は大半が【勇者】【魔王】である。
理由は魔法陣を書く以外に魔法を使うすべを持っているからである。
「大丈夫なのは、分かりましたね、では行きましょう」
本当にノリノリだな。
それから程無くして盗賊は全滅した。ちなみに殆どリルちゃんが全滅させた。
まあまあ強いと言えるリーダーも重力による急加速にまったく反応できずにあっさり殺された。
俺の〈瞬動絶隠〉はあれに、〈闇歩〉による隠形も加わるから空気の揺らぎも気配もしないからもっと質が悪いんだろうな。
護衛達は殆ど何かする訳ではなく盗賊の襲撃騒ぎは終わった。
「すまなかった」
盗賊達の死体を片付け終わって、馬車が動き出してしばらくして、護衛役のリーダーらしき女が、いきなり言ってきた。
「何の事だ?」
「失礼なことを言ったことと、護衛でもないのに盗賊と戦わせたことだ。
冷静になれば君たちはここを護る義務は無かったな」
「ああ、その事か。俺は別に構わないリルは?」
「わたしは。勝手にやったことですし、気にすことありませんよ」
「だ、そうですよ」
「すまなかったな、アイツはこの辺では、有名な盗賊団で今までに何人も殺されている。
しかも、あの頭領は元々探索者でランクB-級まで言った猛者なんだ。
それで動揺して君たちにも戦えと道理の合わないことを言ってしまった」
「あなたも、B-級ですよね。そこまで動揺するとは思えないんですが?」
彼女は、驚いた顔をして、返した。
「ランクを教えた覚えがないのだが」
「視れば、解りますよ」
「そうか。
そういえば、彼女の剣はどこで手に入れたんのだ?
素晴らしい物だったが、魔剣かな?」
「おにいちゃんに、作ってもらったの」
「おい、リル余計なことは」
「なんだと!?
お前、魔剣が作れるのか・・・
いや、先ほどの魔法の腕を見れば、出来てもおかしくないか」
ぶつぶつと一人で自問自答を繰り返している。ある意味はたから見れば滑稽な姿であろう。
「当然だがこのことは」
加減はするが、殺気を出しながら言う。
「無論だ。
人に話して言いレベルの事では無いだろう」
「分かっているならいい。脅してすまなかったな」
殺気を消しながら言う。
「まあ、当然だろう」
納得してくれたようだ。
最初は、面倒そうな人だったが思ったよりいい人そうだな。
「ところで、リル後でお仕置きね」
「え……」
リルが冷や汗をかきながら、振り返る。
そこには、笑っているけど、笑っていないおにいちゃんがいた。
「ご、ごめんなさい」
「おいおい、こんなに怯えているけど何をするんだい?」
「一週間、お菓子抜き」
「ええ、おにいちゃんそれだけは……一週間は長すぎるよ」
「ダメ」
「そこを何とか」
「ダメ」
「わたしとね」
「家に帰る?」
「ごめんなさい」
ため息をつきながら言い、リルは物凄い速度で謝ってくる。
護衛のリーダーさんは、そのやり取りを苦笑しながら、見ていた。
ありがとうございます




