021 武器を作ろうⅡ
ダンジョンの外に出て、鉱物を採ってきたのはいいが、よく考えたら作業場を探して無いじゃんと思った。
……今、ルナはギルドだろうか、セーラさんのところに行くか。
小鳥の泊まり場に戻った俺は、セーラさんを探す。
「セーラさんどこかに武器製作が出来る作業場はないですかね」
「あ、作業場?
何だ、お前武器作りなんて出来んのか」
「ええ、魔法を使って作るつもりですけど」
「そんなもん有ったか?
ドワーフの連中はそんなもん使ってなかったが」
「ええ、そうでしょうね。
俺が作った魔法ですから」
これは、龍たちどうやって武器を作った?と言う疑問を元に、魔法を使ったんならこの方法を取ったんだろうと、思って考案した物だ。
だって、あいつら手がないし……
鎚振れないだろうし、あ、もしかして、そっちを魔法でやったのかもしれないが。
「お前、もう魔法学者にでもなっちまえばどうだ?」
「それだと、リルちゃんの旅は出来なくなりますよ」
苦笑しながら言う。
「それは、困るな」
適当に返してくる。
「まあ、いいですけど、知ってます」
「まあそうだな。
鍛冶ギルドに行けばいいんじゃないのか」
それだと、あまり意味が無いんだがな。
「それ以外は」
「それ以外か・・・」
なんだか、ルナと行ったときの店を紹介したときみたいな雰囲気だな。
「俺の知り合いの鍛冶屋に行けば、貸して貰えるかもしれないが……
あいつは、気難しいから、貸して貰える確率は低いと思うがそれでもいいか?」
「ええ、大丈夫です」
店の位置の地図を貰い、その店に向かおうとするが、タイミングの悪い事に?リルちゃんが帰ってきた。
「ただいま~。
あ、おにいちゃん」
何だか、恒例になりつつあるな、このハグは。
しかし、その高速移動でのハグは、どうなんだろうな、毎回思うが常人なら、これ死ぬぞマジで。
ちなみに、この呼び方は何度かやめるように頼んだが、受け入れてもらえず、もう諦めた為この呼び方に落ち着いた。
腕の中で上目使いで聞いて来る。
「おでかけ?」
「ああ」
「そうだ、お前も付いて行け」
「え?なぜ」
「こいつも、新しい武器を作らにゃならんだろ」
「あ、もしかしてダンテスおじいちゃんのお店に行くの?」
ようやく離れて、セーラさんと話を始める。
「ああ、ちょっと鍛冶屋まで案内してやれ。
こいつは、店主と知り合いだから丁度いいだろ」
「まあ、そうですね」
付いて来ることは、もう決定事項の様だ。
まあ、いいか。案内は確かにあった方がいいしでも、何だか少し余計に時間がかかる気がするが、それは気にしちゃダメなんだろうな。
「それじゃあ行こうか」
「うん」
そう言って腕に抱き付いて来るのは、毎回のことなのでもう気にしないことにしている。
街中を幼女と腕を組みながら歩いているので、しかもその幼女が、めちゃくちゃ可愛いこともあり、すれ違うたびに殺気を感じる。
何故この町に住んでいるはずの、リルちゃんと腕を組んで殺気を向けられるのかと言うと、基本的にリルちゃんと実力は釣り合わず、一緒にパーティーを組みたがっていた者が、相当数いる為である。
おそらく、一緒に旅に出るともし聞かれたら、様々な悪評が流れている彼であっても、闇討ちされることは間違いないだろう。
それと、一応付け加えておくが、そう思っているのは、基本的に赤ん坊のころから知っているベテラン達と新しくこの街にやってきたそれなりに実力のある若者達もでもある。
この若者たちは、大体が手籠めにしようとして、返り討ちにあっている。
その為、彼らは恐らくこの後、颯が一人になったところを見かけたら、襲うことだろう。
閑話休題どうやら今向かっているのは、露店の立ち並ぶメインストリートの方だろうか。
まあ、そこまで急ぐことでもないからいいか。
今まで、少し頑張り過ぎた感じもするし。
「お、うまそうなクレープ屋があるから食べないか」
「え、いいの。
………でも勝手におかし食べるとお母さんに怒られるし」
嬉しそうな声を上げるが、最後の方は急に声量が小さくなり呟やく様に言う。
こういう時は、ああ言えばいいんだよね。
「大丈夫、お母さんには秘密にしとくから」
口の前に人差し指を立てて‘しー’とポーズを作って言う。
そうすると、パァと表情を明るくする。
「何を食べる」
「バナナ」
今まで話していなかったが、この世界で妙に日本的な食文化が発達しているのは、過去の勇者に職業【料理人】と言う職業を持ってこっちに来た勇者が、広めたらしい。
何やら、筋金入りの料理好きのグルメ野郎(女らしいが)で、こちらの世界で初めて食べたこちらの世界の最高レベルの料理が、大変レベルの低いものであったため、その場でいきなり調理場に走っていき自分の手で料理を作って、その場にいた者すべてを驚愕させたらしい。
まあその後も、色々な事をしたそうだ・・・
味噌、醤油、酢、と言った日本の調味料に始まり、それ以外に洋、中の調味料も一通り作り。
それらの料理のレシピも伝えてこちらの世界の料理文化に大きな進歩をさせて、【勇者】であった事よりも、【料理人】であったことが広く伝わっている。
しかし、ランクはS+で歴代勇者でもトップクラスの実力だ。(前にも言ったかも知れないが最高はSSだ)
彼女は、この世界に生息するほぼ全ての動植物を一度は食べたと言う逸話があるらしい。
この世界にある、ベストセラーの一つの『食材全書』なる本の著者であるらしい。
この本は俺も読んだが、とても面白くて今の俺の愛読書だ。
この世界では解り難いかも知れないが、向こうの世界の者が読むとニヤリとするようなネタが転がっていた。
ちなみに活版印刷用の魔法がこの世界にあり、それとは別の勇者が水の魔法を使いインクを操作して別のものをコピーする魔法を開発している。
本当に歴代勇者は何をしているんだとクノに‘自由すぎるだろお前ら!!’突っ込みを入れたら‘君も大して変わらないだろ’とクノに言われたが………。
そろそろこの話は終わりにしようか。
「分かった。買ってくるよ」
そう答えて、露店に近づく。
「すいません、チョコバナナとイチゴのクレープを1つづつ」
「はいよ」
露店のおっちゃんは、注文を聞き手早く生地を焼き果物を乗せ上にチョコレートソースをかける。
俺はそれを受け取り、リルちゃんの元に持っていく。
「お待たせ」
クレープを持って、リルちゃんのもとに戻ると、目を輝かせながら、
「わ~い、ありがとう」
「どういたしまして、おいしい?」
「うん」
この笑顔を見られるだけで、まあ時間と金は別に払っても全く無駄に感じないな。
このクレープは意外と値が張るからな、幾ら調理法が広まっても、普通の人から見ればまだお菓子全般は高価な食べ物だからな。
銀貨1枚一般家庭ならこれで一日分位にはなるからな。
向こうの世界みたいに、一食分くらいになればいいのにな。
その後も、色々な食べ物を食べ歩き、気付いたら三時を示す鐘が鳴っていて、それを聞いたリルちゃんが‘忘れてた’と叫んで慌てて居たのは、見ていて微笑ましかったとだけ言っておく。
その後、五分ほど歩き目的の鍛冶屋に到着した。
「ここ、だよ」
「ふうここか」
そこは、しっかり見無いと、一見廃墟に見える建物だった。
ここで、大丈夫かな?
リルちゃんは気にした様子もなく店に入って行く。
俺もそれに続く。
「ダンテスおじいちゃん、こんにちは」
「おう、リルちゃんか今日はどうしたんじゃ」
「お母さんが、おにいちゃんに作業場を貸してあげてほしいんだって」
「作業場?」
「あ、こんにちは、颯と言います」
ダンテスさんは、俺の体を見ていく恐らく俺が鍛冶を出来るのかどうかを見ているのだろう。
「ダメだ。
お前さん素人だろ、そんな奴にわしの作業場を貸せるわけがなかろう」
「お言葉ですが、俺は魔法を使って武器を作ります。それなので今のあなたの確認法では、俺の能力は測れないでしょう」
「なに、魔法を使って武器を作る?」
食いついたか?
「ふん、馬鹿馬鹿しいつまりお前は、太古に失伝した。
精霊鍛冶が出来ると言いたいのか」
なんだそれは、俺がやろうとした事って、そんなたいそうな事だったのか?
「おそらく出来ます」
「面白い、セーラの紹介でもあるし、やってみろ」
「それじゃあ、作業場をお借りします。」
よし借りられた。
今までの感じで強化すればいいんだから、落ち着いでやれば失敗をしないはず。
作業場に案内された俺は、持ってきた黒紅銀を取り出し、作業を始める準備をする。
スキル〈並立思考〉〈諸事万端〉発動。
称号〈魔の極〉〈戦略級魔導士〉発動
様々な術式を組むために〈並立思考〉を素材の状態を細かく確認するために〈諸事万端〉を発動させ、魔力量と魔力純度を高めるために〈魔の極〉と〈戦略級魔導士〉を発動させる。
当然のことながら、いきなり大量の魔力にあてられたダンテスさんは、驚愕したような表情になるがすぐに元に表情に戻る。
へえ、意外と肝は座ってるな。
まあ、鍛冶をすると言っても、俄か知識を魔力で補うだけだから上手く行くかは解らんが頑張るか。
まずは、風属性上級魔法 虚空 を使って自分たちに熱が来ないように真空の壁で金属周辺を蔽う。
次は、火属性上級魔法 恒焔 を使い金属を熱する、黒紅銀は完全に液体状になった。
次、闇属性上級魔法 極点 、土属性上級魔法 燥殻 で均一に凝縮しつつ形を整える。
最後に氷属性上級魔法 死界 指定した領域内に存在するすべての運動エネルギーを零にする魔法で一気に冷やす。
体積が変化する分も重力魔法によって、一気に凝縮され続けることによって、均等にされ歪み等は一切ない綺麗な槍が完成した。
スキル〈金属鍛練〉を入手しました
スキル〈聯絡魔法〉を入手しました
称号〈魔導鍛冶者〉を入手しました
取りあえずは魔力による強化無しの、試作品の完成かな?
だが、俺の手の中にある槍を試作品なんて言うことの出来ないやつが今に限ってはこの場にいた。
「お、お前、その武器が精霊鍛冶による武器なのか………」
ダンテスさんはこの時驚きよって口調が、疑問形になっていた為、彼にこんな勘違いさせることになってしまった。
そう、まだこの程度ならまだまだ改造を加えても大丈夫だと。
おそらく、この武器でさえ、通常より密度が数倍になり硬度がこの素材としては、有り得ないほどの硬さになっておよそ第6等級クラスの武器であるだろうが………
なお、重さについては、闇魔法の重力操作のおかげで、問題に成らないどころか、自由に重さを変えることの出来る、便利な………危険な武器になっている。
「いえ、こんな物はただの試作品ですよ、まだ途中の工程で金属を魔力で強化していませんから」
そう、この世界の物質は向こうの世界の分子論が当てはまる。
それらに、この世界の特有の不思議物質、魔力が取り込まれることにより、向こうの世界では無い様な多種多様な金属を作り出していると言えるだろう、何が言いたいかと言うと、こちらの物質は魔力のよってある程度限界は、有るとは言え、称号使用強化、総合SS-の魔力値極振りの奴が魔力の全てを使って強化すればどうなるだろうか?
A、まともな物が出来る訳が無い。
次は、魔力をどのタイミングで入れるのがこれに一番魔力を注げるかを探す事にした。
さあて、やるぞ。
見たものが、見れば確実に危険人物指定するであろうと言う顔をしていた。
称号〈狂騰を招く者〉を入手しました
称号〈狂科学者〉を入手しました
ありがとうございました




