018 模擬戦
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ギルドの訓練室でセーラさんと旦那さんと対峙していた。
「ルールは魔法、魔力操作なしで、先にデカいもん入れた方が勝ちでいいか」
「ええ、そうですね」
ちなみに、一般的に言う魔力操作とは体にしみこませた技術を瞬間的に魔力を使い加速させることを言う。
これは一般的に〈戦技〉と呼ばれる。
だが俺はスキルに〈魔力操作〉持っていて完全に魔力を使えたために、これを知らなかった。
本来の過程を飛ばして、能力を手に入れるのが、召喚者、転生者の特権だそうだ。
だが残念なことに、この世界の転生者に記憶はないらしい、クノに聞いたから確かだと思うが、こんな流れだそうだ。
まず、この世界または、他の世界で死んだ者は極めて人間として高い技術、及び極めて巨大な単一の感情、これは殆どの場合が、負の感情だそうだを持っている。
負の感情を持っている転生者の場合の殆どは、人間の神の言うところの【魔王候補】となる。
その特別なスキルは、【罪証】と呼ばれ、特に破壊の特化したスキルを持って、亜人によく生まれるそうだ。
極稀に生まれてくる、正の感情を元に転生したものは、【罪証】とは反対に【聖証】と呼ばれる。
回復、防御に特化したスキルを持って、人間によく生まれるそうだ。
技術についての転生者は、人間、亜人関係無く生まれ、このスキルは【天才】と呼ばれる。
このスキルについては、ただ単に技術が高いだけで、そして人間にも生まれるところから、差別は受けていないらしい、疎まれたりはするが。
ちなみに、この世界でスキルカードは、誕生が確認されれば例外なく作られる。
【天才】のスキルが見つかれば、基本的にその技術を持っていれば大体は大成出来るので、国がそのものに対して、どんな身分であろうとも国立の施設に特別待遇で迎え入れられる。
これはまあ、程よい待遇だと言えるだろう。
だが、これ以外のスキル、【罪証】、【聖証】そのどちらかが見つかると、国はどのような手を使ってでも手に入れるらしい。
しかも、【罪証】持ちなら、洗脳をして自分たちに逆らわない様にして軍が、【聖証】持ちは、教会が自分たちの都合のいい道具として使うらしい。
何故なら、この二つのスキルは、特定分野においてではあるが、【勇者】のそれと比べても強力であることが多いからである。その為放っておく訳にはいかずに完全な管理下に置いておきたいからだ。
なお、これを聞いた時、当然俺は激怒し、なぜそのように生まれ来る種族に偏りがあるのかとか、なぜそのような扱いをするのだなどの言い合いをして、
《種族につては僕も分からないし、扱いについては恐れているからだよ。
理由は、その二種類のスキルを持った二人が昔、二人で【双極の魔王】として君臨して、何人もの【勇者】、上位精霊を殺し、そして、何柱かではあるけど神殺しまで成し遂げたからだよ》
それを聞いた時は、半分は納得できたが半分は納得がいかなかった。
そんなことがあったとしても、拉致して洗脳はダメだろと思った。
理屈としては、解るが感情の部分で理解することが出来なかった。
おっと、話がそれたな元に戻るとしよう。
過程を飛ばして、スキルを持っているということは、その技術を鍛えるのがとても容易になるとも言えるだろう。
ちなみに今は、〈思考加速〉使っているわけではないが、思考速度はこっちに来た時の十倍以上の速さにはなっているだろう。
高速で思考することに、慣れてきたからだ。
さて、模擬戦のことについて意識を戻すとしよう。
セーラさんは、大剣を持ち、旦那さん…そろそろ名前で呼ぶとしよう、さっきここに来た時の会話の中で名前を聞くことが出来た。
セトさんと言うらしい。
セトさんは、短い剣を二本使う、二刀流。
どちらも、A級の中位くらいの実力はあるだろう。
ルナと合わせて、A級クラスの実力者が三人って、後で過去を聞きたいと思うが、なんだかそこには地雷が埋まってそうで、なかなか聞けないでいる………
さて気を取り直して、今回の訓練では前々から出来るんじゃないかと考えていたスキルの使い方を試そうと思っている。
使うスキルは〈諸事万端〉これは超遠距離のことを感知するために今までは使っていたスキルであるが、この四文字熟語の意味は『全ての事』を意味する。
ゆえに、逆に狭い範囲で使えば対象のことをより深く知ることが出来るのではないか?
と考えている。
では、やるとしよう。
〈諸事万端〉発動。
訓練用の短槍を構えて、特に合図などをするでもなく模擬戦は始まった。
セーラさんがまず大剣を構えて攻撃を遮り、セトさんが遊撃をするような戦闘スタイルのようだ。
セーラさんの性格からして思うイメージと何だか、違うな。
当然だが、大剣と短槍をぶつけ合えば打ち負けるのは、目に見えて分かるので、打ち合いをせずに、セトさんを狙うが簡単に躱される。
くっ,速い。
俺は、基本的に魔法を中心にして戦い、挌闘をするときは、身体能力を魔力で上げることを暫定にしてきたので、相当と言えるほどに身体能力が低い。
殆どのキャパシイが、魔力に極振りされていると言っても過言ではないくらいだ。
その分、有り得ない位の魔法を使うことが出来て、〈魔力操作〉のスキルも持っているのでバランスが良く見えていただけである。
くそっ、魔力が使えない状況になった途端にこれか。
そうは考えてるが、今回の実験は大体、成功だと言ってもいいだろう。
魔力による強化が無ければ、俺の身体能力はせいぜいB級の下位くらいであろう、しかもその中でも敏捷値は壊滅的だが、完全に相手の動きを見切ることに成功した。
そのお蔭か、だんだんと相手は回避しきれないようになってきた。
魔力や魔法を使わないと言うことは、向こうでの技術のまま使って問題がないと言うことである。
今、俺は居着きと、言う技術を使っている。
これは踏み込みの瞬間や体重移動の瞬間の死に体に、攻撃を繰り出すと言うものだ。
これは、通常、複数人に使うのは不可能とされているが、完全に相手の動きをせ先読み出来るので、その不可能を可能にしている。
だが、それでも完全に攻撃は入らない、何故なら癖のようなものは、つかんで来てはいるのだが、一度足りとも同じパターン攻撃は来ていないからと、俺の攻撃が遅すぎるからだろう。
おそらく、これは長寿であることと、膨大な経験の全てがスキルの効果で保存されている為であるだろう。
厄介だな。
攻撃に回れば大剣で攻撃を防がれながら、双剣による攻撃を受ける。
防御に回れば双剣で牽制をされ、大剣の攻撃が来る。
流れを変える必要がありそうだな。
俺はカウンターを狙うことにした。
普通の者ならこの速く正確な剣撃を掻い潜ってそれを狙うのは困難であろうが、〈諸事万端〉を使える俺なれやれる。
セトさんの正確に頭部、首、手首を狙ってくる攻撃をやり過ごしながら、その瞬間を待つ。
来る。
俺が待っていた、大剣による横薙ぎ、それを槍の石突の先端で受け衝撃を全身で受け流しさらにそれを利用して、足の先で円を描くように剣の上で回転し、十分に速度が乗った足を振り下ろす。
だが、それも予想されていたのか腕で受け止められるが、剣の速度を利用し振り下ろされたものの衝撃に耐えられなかったのか、そのまま訓練室の端もで吹き飛ばされる。
「ふぅ」
デカい一撃を決めた。
「強いですね、ギリギリでしたよ」
セトさんに話し掛ける。
「そちらも見事だ」
あ、セーラさんが戻ってきた。
「いや~、負けた負けた、本当に強いなあ、お前。
あんな短期間でこっちの癖を見切られるとは思わなかってぞ」
「そのとおりだ、あれは厄介だ。
同じ動きが出来ん」
「ははは、これならリルを任せても大丈夫そうだな
でどうする?
次は魔法有りでやる?」
「遠慮します」
「いいじゃないか、勝ち逃げをしようとすんなよ」
どうやらこれで開放はされないらしい。
その後は、自分たちの本来の武器まで持ち出して、模擬戦どころかガチの殺し合い寸前までやって、訓練室を穴だらけにしまくって、その後、ルナに見つかりこってり絞られた。
槍の使い方と体の使い方、対人戦がうまく出来るようになったと思うから、まあ満足できる有意義な時間だったと思う。
魔王様が魔法をポンポン打てるのはこんな理由でした
ありがとうございました




