001 職業は魔王
光が消え目を開けられるようになると。目の前に広がっていたのは、巨大なそれこそ森の奥地に行ったとしても、お目にかかれない大きさの地球に無いだろうな規模の雲まで届きそうな巨大な樹だった。
「すげぇ…」
「すごい……」
「でけぇ…」
みな、同じような感想のようだ。
「皆さんこんにちは」
俺たちは、声を掛けられた方を見るとそこには、細部は違うが巫女服のような服を着た黒髪12歳くらいの幼女と金髪で豪華なドレスを着た15歳くらいの女の子がいた。
ふむ、こっちの世界にも黒髪っているんだな、異世界って黒髪がいないイメージがあったんだけど。
それにこの二人は、まるで神がバランスを取って作ったかの様な美少女だ。
証拠にクラスの大半が見とれて固まっている。少々見ていて見っとも無い。まあ仕方ないだろうそれくらい造形が整っているのだから。
「あなた方をよんだのは、我々を・・・」
鈴を鳴らしたかの様な綺麗で耳触りの良い声。
「あ、魔王とか魔族とかから世界を救ってくださいとかそんなかんじですか?」
そこにクラスのヲタクが無粋にも割り込む。
「え?あ、はい。よくわかりましたね」
少女は、驚いた顔をして返事をかえした。
割り込んで言う事でもないだろうに、彼女は何故解ったのとか、何故こんなに冷静なのとか。
そんな事を考えている顔だな。
しかし、まあ普通に考えれば異常だな。
こんな誘拐されたとしか思えないのに、30人近い人数であるにもかかわらず取り乱していない。
日本の小説やサブカルチャーでよくある展開だとはいえ実際に体験してもこれだとは………
まあ、どんなに真面目なやつでもこう言う事は、内心で期待して言う事なのかな?
それよりも、さっきの声はなんだったんだ?
「おい、おいていくぞ」
ボーとしている俺に声をかけて来る。いつもならほっとかれると思うが状況が状況だから声をかけて来たのだと思われる。
「ああ、すまない」
当の本人は。
……やべ。テンプレ説明聞きのがした。ちゃんと聞いておきたかったのに……
まっいいか。
あれ、どこに向かっているんだ?
王城とかかな?
「なあ、何所に向かっているんだ?」
「はあ、聞いてなかったのかよ。いまから王様に謁見するんだよ。
ちゃんと聞いておけよ」
苛立った様に返してきた。
誘拐と言える様な事をされているのによく従おうと思うな、まあ見た目がいい女に迎えに来てあなた方は特別なんですよと言われたらまあ仕方ないか、とは言えクラスに中にも何人かは疑っている様だけどクラスを仕切っている、輝崎 勇希って言う奴がついていくことを了承したみたいだな。向こうにいた時から女を侍らして王様気取りの奴だったと記憶している。
「ああ、そうだったな。すまない」
…行かないほうがいいよ…
ん、なんだ。また声が。
疲れているのかな?
…幻聴扱いしないでくれないかな…
思考を読んだ様に返事を返して来る。
(………誰だ?おまえは)
…僕はこの世界で人間に魔神と呼ばれているクノと言う…
(人間にとはどう言うとだ?)
…この世界には神と呼ばれている存在は幾つもいて、神と言う存在は1柱だけでは無いんだよ…
(絶対神がいると言うわけではないと言うことか?)
…絶対神と呼ばれる程の力がある神は、いまは亡き創造神だけだよ…
へえ創造神って死んでいるんだ。もしかしてこの世界って神が体を削って作ったって言う神話みたいな出来方でもしてんのかな?
(じゃあ、お前はなんの神だ?魔神というからには魔族か?)
…うんそうだよ、と言っても魔族だけでなくて獣人もさ、つまり亜人たちの神つまり人間が迫害している種族全ての神だよ。何せ僕は人間の神とは対極の存在なのだからね、世界で迫害をするのは人間だ。だから迫害を受けている者に多く信仰を受ける神なんだよ…
(そう言えば、継承者と言っていたがそれはなんだ。
そして俺に何かさせたいのか?)
こっちに連れてこられる前に聞いたここを思い出して聞いてみる。
…僕の守護している種族を守ってほしいんだ…
と言う事は、迫害を受けている。種族全てを守ってほしいと言う事か?
まあ、俺としてもそんな事をするような連中は嫌いだからいいんだけど。
(それは別にかまわないが、俺にそんな力は無いぞ)
…僕の力をあげる。それを使って教会や【勇者】をどうにかしてほしい…
(それが継承者か。それとここで出て来る【勇者】とは何だ?)
…【勇者】とは他の種族を滅ぼすために、人の神が創った兵器みたいなものだよ。人の神が自分の力を称号と人が呼ぶ形にして授けるんだ。
信者の数が僕ら神の力だからね、自分を信じる人間を増やすために他の種族が邪魔なのさ…
確かにそう言った種族が居無ければもっと繁栄出来て数が増えるからというわけか?自分勝手だな。
(兵器か本当に俺がどうこうできるのか?
そして今ここでついていくと何かあるのか?ついていくなと言っていたが。)
…継承者は僕たちの力の大半を渡すから圧倒的な存在になるよ…
(たち?他に何柱もいるのか。
そんな事をして本当に大丈夫なのか?)
…無論僕の存在自体があやういけど。
まあ百年もすればもとに戻るよ…
(なぜそんな事をするんだ?
自分でどうにかすれば、いいだろ)
…神は直接この世界に干渉はできないからこうするしかないんだよ。
それとついて行く事だけど今ついていくと契約と呼ばれる魔法で国に従う事を強制される…
それは聞き捨てならないな……
(それはどうすれば防げる?)
…無理。今日の為に特別な術式を組んでいるからね…
(どうすればいいんだ。逃げるのか?)
…そうだね、そのつもりだよ。僕がそこから転移させる。
他に一緒に連れて行きたい人はいるかな?…
(いや、居ないな。)
これを即答できるあたり俺もひどい奴だよな。
まあ、俺にとってあの場所は監獄に等しく生徒には、一人を除いて誰とも関わる気が無かったからな。
…それじゃあここから一番近い街の近くの森に送るよ…
召喚の時と同じように目の前が真っ白になった。そして俺はその場から消えた。
俺は列の最後尾に居たため、誰に気づかれる事無く転移した。
目が開けられるようになると巨大な街が見下ろせる丘の上にいた。
「て、森じゃ無いのかよ!?」
…やあ、やっと姿を出せるよ…
身長145cmくらいのショートボブのこっちの世界で言うチェーンなどの装飾の付いたパンク系の服に身を包んだ男の娘と言える容姿をしている。
その格好を見て俺は、
「なんだよ!?
何なんだ、その格好はもうちょっと威厳のある神らしい恰好して来いよ!?」
ついそう叫んでしまう。若干相手が神であることを忘れているのでは………
…これが好きなんだよ。文句あるかい?それに神らしいと言っても君たちのイメージじゃないか。そう言うのを押し付けないでくれるかな…
一見正論に聞こえ返す言葉も無いが…
はあ、一気に疲れた気がする。
「それはさておき、これからどうしたらいいんだ」
…別に今からどうこうと言う訳ではないよ…
「そうなのか?」
…君は僕の継承者になる時点で……大量の魔力を持つ事で、寿命も延びているから、こっちから急かすって事はよっぽどの事が無い限り無いと思うよ。
それに僕らは気が長いからね~あと君にステータスカードとこっちの常識を教えておくよ。
ステータスカードは………コレね、ステータスオープンって言うと見る事が出来るよ~…
不思議な色合い金属?のカードが目の前に現れた。
「ステータスオープン」
黛 颯
職業 魔導士Lv1 魔導槍士Lv1 魔王Lv1
称号 異世界人 魔王 魔神の継承者
スキル 思考加速 並立思考 魔力操作 思考詠唱 アイテムボックス
はあ!?なんだこれ…………
「これ人に見せられなくないか?
特にこの魔王とか」
慌ててクノに問い詰める。
…大丈夫このステータスカードは特別製。
情報を偽装できるから大丈夫だよ
だけど君はすごいね、僕と契約して〈魔神継承者〉が増えたけど、持っている職業は君が元から持っていたものとは思え無いよ、特に〈魔王〉を持っているのなら特に力をあげる必要は無かったかもね。もっともあの中で一番強くて差別に対する嫌悪感も強い、これなら僕らの力を持っても変な事に使わないなって思ったらかさ…
「ま、まてこの〈魔王〉はお前の力を引き継いだから出たんじゃないのか」
…いや違うよ、それは元々君が持っていたものだよ…
「………こっちの魔導士と魔導槍士もすごいものなのか?」
…職業には初級、中級、上級、最上級の四段階あるのだけど君が持っているのは二つが上級で魔王が最上級。
最上位派生職や勇者、固有のユニーク職もここのくくりだよ
魔法職はね、初級で魔術、中級で魔法、上級で魔導と頭に来るんだよ。
中級までは特に珍しくもないけど上級からは持っている人が一気に少なくなるね…
「へぇ」
…町にはステータスカードを見せれば入れるよ、後は・・・・・・
…そろそろ、お別れするけど最後に契約で出来ればで、いいから亜人のことを考えるって約束してくれないかな…
「出来ればで、いいのか。
そっちとしては確約させたいんじゃないのか?
こちらとしては、してもかまわないし」
俺はいぶしかむ様な声で聞いた。
…いいんだよ
強制なんかしたら僕の嫌いなあの神と同じじゃないか。
だから出来るだけってことでいいんだよ~…
まあ、確かにそうだな。ステータスにやばいもんがある時点であんまりと思うけどな……
「分かった。じゃあ、出来るだけこの世界の亜人を守ろう」
…たのむよ。
あ、そうそう目の前にある街は迷宮都市とてして有名だからレベル上げにちょうどいいと思うよ…
「分かったそうする」
…それじゃあ僕はそろそろ起きてられなくなるから眠るよ。あ、忘れてた目は色を変えておく事をお勧めするよ…
「分かった、じゃあな」
そう言ってクノは消えていった。
さて、これからどうするか。
クノは冒険者ギルドや探索者ギルドに入るなり旅をするなり、世界を見てほしいとか言っていたな。
しかし、こんなに楽しそうな環境を提供してくれた事には、感謝だな。
それじゃあ、楽しみますか。
ありがとうございました。
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