016 クノ再臨
魔神様の再登場です。
6時間を表す鐘の音で目を覚ます。
「ふぁ~」
十日ぶりのベットで眠れて、いい寝覚めだな。
ここは至福の二度寝タイムといきますか。
コンコン
「ちょっと話いいか」
セーラさんか、なんだろう。
「はい、なんでしょう」
「次の鐘が鳴ったら下の食堂に来てくれないか」
「分かりました」
次の鐘、さっきのが6時の鐘だから次は9時か。
それまでどうするか?
買い物に行くには早すぎるし、二度寝するには時間もないし、散歩にでも行くか。
その後クノに転送された丘の上にいた。
・・・ここに来たのが十数日前だとは思えないな、いろいろなことがあった。
はっきり言うと今更な気もするが現実味がないな、今いるのは俺の都合のいい夢かもしれないという気持ちがいまだにあるな。
『そんなわけないよ』
「クノか」
『そうだよ
久しぶりだね』
「はやいな、数十年は寝るんじゃなかったのか?」
『きみが【真の魔王】になってくれたおかげで一日五分くらいは起きてられるようになったのさ。
ところで悩んでいるようだね』
「悩んでいるというよりも、なんだか今の状況に現実味がなくてね。」
『君みたいに急激に強くなった異世界人が良くするような悩みだね。
安心できるかどうかは分からないけど、そう思った人たちは例外無くこっちで死んでるよ』
「それはどういうことだ?」
『簡単な話さ、帰る方法がないのだから』
「そうか」
『あれ驚かないの?』
「自分もこっちの魔法を使ってるんだぜ、空間転移をするにも向こうの世界を見つけなきゃ、いけない時点で無理だ。
〈諸事万端〉を使って召喚された場所を探してみたけどそこには召喚魔法の残滓も見つけることはできなかった。
つまりもうこっち側から俺たちの世界を見つけるのは不可能と言うことは分かった」
『ならこっちで精一杯生きなよ、こっちなら君の好きなようにできるよ
それに君にはリルちゃんのことを頼みたいんだ』
「俺になぜ」
前にもこんなことを言われたような気がするな。
『彼女は数種の能力を引き継いだミックスブラットだ。
人間からしたら一番の迫害対象なんだ
だから君に守ってほしい、その為に森を一つ消したんだろう?』
「そうだ、なそのために大量に命を奪ったんだからな・・・
任せろ、それでどうすればいい」
『それならいい
あの母親も君に任せるつもりだからね』
「いやそうじゃなくて、どうすればいいんだ。
それとミックスブラットってのは何だ?」
『君も聞いてはいるとは思うけど、ミックスブラットとは人間の特徴である複数の職業を持っている。
それと亜人の特徴である高い身体能力を持っている』
「それと、前々から思っていたんだがなんで人間が複数の職業を持っているんだ?」
『それは、人間の神は1柱しかいないんだけど亜人は違うんだよ』
それはどういうことだ?
「何か関係があるのか」
『職業は神の作ったシステムで神の意識は関係なく行われる。
人間の神は、そのキャパシイが大きいために人間は複数の職業を持てる者がいるんだ』
「へぇ、つまりミックスブラットは複数の神から職業をもらっているということになるのか?」
『そういうこと、まあ神自体はそのことはどうでもいいと考えているけどね』
「じゃあどうして?」
『これは人間の方が原因なんだけどね、我らの神から混ざり者のごときが力をもらっているのが我慢ならないらしい』
何だそれは、自分たちの勝手な解釈でそんなことをしているというのか。
ふざけるなよ、なんでそんな勝手な考えで人を差別できる。
『まあまあ、落ち着いて』
「こんな話を聞いて落ち着けと」
『ふふ、君はぶれないね。
僕の視点から見ても眩しいね。
君を選んでよかったよ』
「そう言ってもらえるのは嬉しいが・・・」
『おっとそろそろ時間だ。
僕はそろそろ起きてられなくなるからね。
お休み』
「ん、ああこっちからすると起きたばかりなんだがな。
まあ、さっきのことは任せろ、次は普通に雑談がしたいな、それじゃあお休み」
あの時と同じように消えてく。
本来なら閑話はこの後にするべきでしたね。




