014 それぞれの戦い方
澪視点です
雅柳君がボスフロアに、伸びをしながら入っていく。
何だかいい感じに体の力が抜けてリラックス出来ている様だね。
これなら、見ていても安心かしら。
スキル〈観察〉〈模倣〉発動
称号〈技術泥棒〉発動
さて、盗めるものは、盗んでおかないと損だよね。格闘術はまだまだ彼の方がうまいから。
二十五層のフロアボスはゴブリンキングのようだ。見たところ今まで出てきたゴブリン達とは何やら風格が違うからそう予測した。
でもまあ、余裕で勝つだろうね。この程度なら。
「があああ」
ゴブリンキングが〈眷属召喚〉を使い十数体のゴブリンを呼び出す。
へぇ、やっぱりキングともなるとこう言う事も出来るのかな、それともこう言う事が出来るからここまで大きくなることが出来るのかな?
それでも自然体を崩さないところから、これでも行けると確信しているのだろう。
〈闘気〉を纏いゴブリン達のなかにゆっくりと近づく。
「げげ」
「ぎぎ」
剣を持つ数体が斬りかかる。
剣を振り切る前に手首を極め振る力を利用して、後ろの個体にぶつける。
そこに手に〈闘気〉を纏わせ手刀で縺れている個体の首の骨を手刀で折る。
「が」
「ぎ」
「げぅ」
自分たちの仲間があっさりと殺され少し勢いが緩む。
すかさず、そこに潜り込み正確に頭部、首、心臓を潰していく。
最初のゴブリンが斬りかかってから数秒の内に過半数を殺した。
何だか、今まで練習した動きをそのまま使えるか如何かを試している様な雰囲気だな。
おっ、構えた。
雰囲気も変わったし、何か技でも使うのかねえ。
「はっ」
声を出し胸部にこぶしを叩き込む。
ドバッ
うお、当たった部分がはじけ飛んだ。
拳の当たる瞬間に足下が弾け飛んでいたところから、当たる瞬間に自分を固定して衝撃を余すことなく敵に伝える技と言ったところかな?
確か中国の発頸がそんな感じだったかな?
自分のした事の結果に満足したのか〈闘気〉を高め始める。
脚に〈闘気〉を込めゴブリン達に一気に放つ。
なんだよ、遠距離技あるのかよ。
ああ、そんな内にもうゴブリンキングしか残ってないね。
「ぐぎぃ、がああ」
叫び声と共に手に持つ剣で、普通のゴブリンとは一線をかす鋭い剣技。彼は攻撃に触れる事も無く避け続ける。しかし剣の速度は攻撃が続く程に速くなっている。そんな速度で止まる事なく斬り続ける。
だがそれも危なげなくさばいている。恐らく速くはなっているがそれまでの様で、ただ速いだけだ。つまり無駄は無いがフェイントも無い
その余裕の回避に業を煮やしたのか、ゴブリンキングが体を捻って上段から大振りで剣を振り下ろそうとするが、それを待っていたのかすぐさま懐に潜り込み、一気に掌を振り上げる。
ん?特に外傷が見えないけど?
「ごば」
ゴブリンキングが血を吐き倒れる。
あれは、寸勁か!
なんか本当にいろいろなバリエーションがあるな。
ゴブリンキングが倒れたことを確認し構えを解いてフロアの入り口に向かう。
「随分と手こずっているようじゃないか、一人でやるなんて言い出しての程度かい」
勇希君には今の戦いがそう映るわけか、自分の方が速く敵を倒せる、それでしか今の戦いを見ていないということか。
もったいないな、今の戦闘は技術的に色々と見本になる様な所があったんだけどな。
「次は私がやろう」
今の戦いを見てなんだかスイッチが入った様に雰囲気が変わった紫苑君を見て勇希君は驚いたような顔をする。
と言っても私も同じような反応をしてしまっているのだが・・・
意外と戦闘狂?
何だか見てて怖いな、今の紫苑君。
ボスフロアに入り同じようにゴブリンキングか現れる。
そして〈眷属召喚〉をするまでは同じだ。
フロアの真ん中で居合の態勢を取る。
ゴブリン達は先ほどと同じ様に侵入者に向かって斬りかかるが、彼女に剣の間合いに入った瞬間に黒い線が走ったと思えば、ゴブリン達の首が落ちる。
すごいな、動きが目で追えない、これでは盗み様が無い。
そして刀の能力も使うようだ。
あの刀【黒煉】の能力は刀身の高温化による物体の溶断、そして刀身の瞬間的な伸縮による攻撃範囲を拡張する事。
それを使い全方向から向かってゴブリン達を全身を回転させて刀を振るう事でバラバラにした。
何だか速攻で傷口を焼いて行くので、血が出ずに見ている方としてはスプラッタ感がしないからいいんだが、あの周囲は肉の焼ける臭いで酷いんだろうね。
まあ、最後の動きはギリギリ下半身くらいは見えたから、踏み込みと体重移動が見れただけいいとするか。
次は勇希君だが、今まで訓練を見ているところからしても、まあ能力に任せて戦うんだろうな。
無言で入れ替わりボスフロアに入る。
ゴブリンキングが現れた瞬間に、
「〈極致突破〉、ライトニング・シュラッシュ」
ボスフロアに雷が溢れる。
煙が晴れ中が見える様になると。
うぁ、あれじゃあ魔石も取れないな・・・
ゴブリンキングは上半身が炭化して無くなり下半身が僅かに残る程度だった。
オーバーキル過ぎるだろあれは。
無駄だなあ、アンデットを相手にしてるんじゃないんだぞ。
しかし【勇者】の固有スキルは強力だな、〈無詠唱〉に〈極致突破〉か、これらを組み合わせて使うとこれ程までに強力になるのか……
一瞬で魔法剣を作る。
更に込められた魔法は数百万ボルト級の雷を作り相手に向かって放つ雷属性第8階梯 ライトニング・ブラスト。
本来なら十数秒の詠唱が必要になる強力なもので、魔法剣は本来なら3~5階梯の詠唱が数秒で終えるものを使うのが普通だ。
それに第8階梯の魔法を魔法剣として使うなら、魔法剣の威力は単純計算で8~32倍となる。
しかも〈極致突破〉が使われていて更に数倍、しかもまだ上の魔法を覚えればさらに強力なものとなっていく・・・
チートだよな。
さて、見るもんは見たし、おさらばさせて貰うかな。
ありがとうございました




