012 暗躍中
この話は、澪視点です。
ここに来てはや三日。生徒と共に訓練を受けて、いくつか分かった事がある。どうやら高階級の職業はレベル⒈の時点で他の能力補正を突き放す程に強力な様だ。
おそらくは、勇希を除いた他の奴らなら、同時に相手にしてもなんとかなるだろう。
さらに情報収集のため〈分身〉と〈隠形〉の合わせ技を使い城内と街に送っていた。
スキルも〈聞き耳〉、〈思考分割〉、〈空歩〉を手に入れた。
さらに称号も〈斥候者〉、〈暗躍者〉、〈千の目、耳を持つ者〉、敏捷と情報収集に補正をかける事の出来る称号を手に入れた。
さて、私の新しく手に入れた能力の報告が終わったので、次は勇者たちの訓練の様子を紹介しようと思う。
まず、私達を前衛型、後衛型、斥候型、魔法戦士型の四つに分けそれぞれに合った訓練をした。
前衛型、魔法戦士型に武器の使用の基本と対人戦の訓練を後衛型、魔法戦士型は詠唱文の暗記と魔力の操作法、斥候型が暗器の使い方に気配の消し方、不意打ちのコツなど教えられた。
私としては、四つ全ての訓練を受けたかったが、それでは隠している能力を露見させるはめになるので、〈分身〉と〈隠形〉、〈思考分割〉を使い私が受けていた後衛型以外の訓練を見ていた。
それの途中で、〈観察〉を入手した。
さらに、その技術を何度も繰り返し、自分のものに成る様にしていると、スキル〈模倣〉と称号〈技術泥棒〉を手に入れた。
これによって武器、暗器の使い方をほぼ精鋭の兵士レベルでは習得できた。
自分の中でスキルが更に強化されていく感じがした。
さらに、夜にはこちらの世界の情報を得る為に、図書館に行って読書に読みふけた。
こっちの文字は、〈言語理解〉のスキルで自動的に理解することが出来るので問題なく読む事が出来た。
調べた事は主にこちらの地理に物価、歴史、一般常識、教会、生物そして魔法のことだ。
魔法の事には特に面白かった。魔法には二つの種類古式、現代式があった。古式の特徴はまず自分に適性のあるものしか習得することができない点、だが威力と汎用性は現代式をはるかに上回る。
それと魔法を下級~最上級で区別する事が挙げられる。
それと古代語を理解する必要があることかでもこれは、
「漢字だよねこれ」
そう古式の魔法の詠唱式は漢文で書かれていた。
確かにこれは、こちらの人では解読出来ないよね。
こっちの魔法は過去に来た最初の【勇者】が使ったとされている。
そして現代式は、精霊を使って行う魔法である。
そしてこちらは階梯で区別する。
1~3階梯は空中に存在する微精霊に魔力を与え行使する魔法。
4~7階梯が精霊を封じ込めた武器や杖を使って行使する魔法。
8~10階梯が精霊と契約をして行使する魔法。
11~13階梯が通常は精霊と契約した者が儀式をして行使する魔法。
となっている。
現代式は7階梯までなら魔力さえあれば誰にでも使える点が特徴だろう。
まあ、8階梯以降は特定の属性の魔法師以上に就き、精霊と契約する必要がある。
これはこれで、精霊に好かれるという才能が必要となるのだが、古式よりは技術的に体系化されていて、使い易いものになっている。
そして私たちが習っているのは、当然ではあるが現代式魔法となっている。
まあ、当然だろうな、古式を教えられる様な人間はここにはいないし、もちろん使える者もいるだろうが大体が秘伝とされていて、門外不出となっている為殆ど情報が外に出る事は無い。
まあ、まさか召喚された殆どが古式魔法に使われている古代文字まあ、詰まるところの漢字が理解できるとは思わないだろうから無理もないか。
て言うか〈言語理解〉のスキルがあれば簡単なんじゃないのか?
私はその後、自分の適性がある闇属性の魔法くらいは、古式でも習得しておこうと思って訓練を始めた。
この漢文だが、返り点も付いて無いのでとても読み難かったが、まあ何とかなった。これでも教師だしね。とは言え所々おかしな点もあったから多分中途半端な知識の者が創ったのだろう。
そして中級魔法くらいまでなら使えるようになった。
その間にスキル〈速読〉と〈情報整理〉なんてスキルも手に入っていたりもする。
さて、勇者についても語ろうか、だがこの事については殆ど調べた訳では無い何故なら、
‘俺たちのコンビネーションをより良いものにするために、自分の持っているスキルのことを詳しく話そう’
なんて言った為にそれを聞いているだけで情報収集は済んだ。
その中で特に強い者達を紹介するとしよう。
もちろん最初は、輝崎 勇希 。
職業は【勇者】【聖騎士】【雷魔法師】の3つそれぞれ最上級、上級、中級となっていて、どれも強力な職業だそうだ。
スキルは〈聖剣技〉〈聖身〉〈無詠唱〉〈英雄崇拝〉〈極致突破〉この5つが始めから持っていた勇者の固有スキルのようだ。
〈聖剣技〉これは〈魔法剣〉〈魔刃〉〈聖気〉などのスキルが一つになったものらしい。
〈聖身〉こちらは上のスキルと似たようなものだな、〈聖気〉〈魔力操作〉等が1つになったものだそうだ。
〈無詠唱〉これは私の持つ〈詠唱破棄〉の上位のものだ。
私の〈詠唱破棄〉は魔法の名称を言う必要があるが〈無詠唱〉は完全に無言で打つ事が出来る。
〈魔法剣〉が本来なら熟練すれば詠唱を破棄する事が出来る4~6階梯を使うのが一般とされているが、〈無詠唱〉を持つものであるなら、それよりも上の魔法を使い魔法剣を使えるそうだ。
あれは戦うとなったら、接近戦の最中でいきなり高階梯の魔法が使われる事になると、対処が面倒になるだろうな。
〈英雄崇拝〉と〈極致突破〉はさらに強力だ。
上のモノとは一線をかす能力を持っていると言える。
〈英雄崇拝〉は大気中、敵の体内の魔力を集めて自分の物にする事ができる。
当然それは自分で使うことも可能だが、それは味方に譲渡したり、そしてその逆もすることもできるらしい。
自分に仲間が多ければ多くなる程強力になるスキルと言う事だろう。
ざっくり言うと、魔力使い放題。チートの権化のようなスキルである。
〈極致突破〉は自分の体力、精神力、魔力を極限まで極短時間で使い切るスキルのようだ。
使っているところを見たが、身体能力を1~数百倍にまですることが出来るようだ。
オンとオフを瞬時に切り替えられる為、ほんの一瞬だけ使える様になれば、とても強力な凶悪なスキルになるだろう。
見たところ、まだそれは出来ない様だったが。
更に〈英雄崇拝〉との組み合わせはさらに強力だ。相性が良すぎる。
まあ、それ以外は特に珍しいものもなかったので割愛させてもらう。
二人目は 榊 紫苑。
この子は、勇希のハーレムメンバーと言う訳ではないがここで紹介するのは、彼女は勇輝の次にスキル、職業そして称号がすごかったからだ。
職業は 【侍】【舞士】と持っているものは二種類と少ないが持っているそれらは、共に最上級でしかも本人は確か江戸のころから続く家の生まれで、小さいころから古流剣術を習っていたらしい、そのおかげか訓練の時も自分の体をうまく使いきれていない勇希君を軽くあしらっていたな。
スキルは〈刀術〉〈舞術〉〈刀舞〉〈居合〉〈合気〉〈脚術〉〈縮地〉とまあ説明するまでもないような雰囲気のスキルであるのだろう。
そんな基本の物しか持っていないが、そもそもそんなものが無くとも出来る事なので、他の者とは動きが全く違う。
あと多分〈思考加速〉も持っている様な気もする。
ちなみに彼女は私達を指導していた、騎士団長に訓練初日の時点で勝っているので、それ以来勇者の訓練は彼女がしている。
それ以来、彼女の気を引こうと必死と言う感じではあったが完全に無視されている。
本当に節操の無い奴だと言える。
しかし身体能力で完全に劣るのによく勝てるなと思う……
しかも称号に〈刀神〉と言うものがあって契約も効かなかったとか……
更に彼女の武器は、勇者の剣にも勝るとも劣らない物だと言うが出所不明らしい。
あっ、容姿は長身で同じ女として、うらやましくなるレベルの巨乳に、真っ黒な鴉の濡れ羽色と言えるくらいに綺麗な髪を膝上くらいまでに伸ばしている。
三人目は 佐藤 雅柳
職業は【国士無双】【魔闘拳士】【闘術士】と言う身体能力の補正だけではなく、魔力に補正も入る優秀な職業だ。
【国士無双】はユニーク職で腕力の上昇が特に大きくさらに敵に応じてさらに上昇すると言っていた。
スキルは〈体術〉〈拳術〉〈脚術〉〈合気〉〈柔術〉〈縮地〉〈闘気〉〈大力無双〉〈迅速無双〉この中で説明がいるのは〈大力無双〉と〈迅速無双〉の二つかな。
このスキルの特徴は、敵対者の数や強さに応じて、能力の補正の大きさが変化すると言うところが特徴に挙げられるだろう。
おそらくは、【国士無双】とこのスキルはセットになっているのだろう。
それと容姿は、細身で冷徹な雰囲気のイケメンで黒髪の長髪・・・あれなんだかうちのクラス男子の長髪率が何気に高くない?
あと性格だが向こうにいた時から颯君と同じで誰かとかかわろうとしない子だったわね、紫苑さんと同じでかなりストイックに自分を鍛えているようだ。
あと、あんまり自分のことを話さない子で彼の事はあまり分かっていないんだよね。
多分この二人は、こっちでの立場に危機感を持っているんだろうね、自分たちは【勇者】である勇希君のおまけでしかないことが分かっているんだろう。
この二人以外は浮かれて、ちやほやされているのに満足しているようだ。
私たちなんて【勇者】と違ってこちらの世界でも、変わりを探そうと思えば、難しいがいない訳では無い。
つまり捨て駒にされる可能性が極めて高い、と言う事が解っているのだろう。
なにせ向こうが必要としているのは【勇者】だけなのだから………
ありがとうございました




