131 暗闇
気付くとそこは暗く何も見えない場所だった。
どこだここは?
俺は全感覚を総動員して周囲を探った足下はならされていないむき出しの地面、空気の流れからここは高さもある巨大な空間である事が分かる。
それが分かった時ここに俺と同じ様に周囲を探っている者がいるのも分かった。
人がいると分かった瞬間に安堵感を覚えた。
しかし、俺の身体が勝手に動き出した。
身体勢を極限まで倒して足の回転が追い付かなければ即座に倒れてしまうそんな姿勢で走り出した。
更に走っている最中で手に持っている槍の石突の部分を片手で持ち肩にかつぐ様に構えた。
それに俺の驚きは最高になる。
正にそれは奇襲をする場合において相手を一撃のもとに殺すと言う技の構えだったのだから。
距離にして十メートルの時点で敵も自分の事に気付く。
そして普通の事であるかの様に重心を下げて手にしている刀を構える。
その動作には迷いもなければ一切の遅滞も無い正に常在戦場をなしていた。
相手との距離は次の瞬間には槍のとどく距離になり、俺の身体は全身の関節及び筋肉を一斉に駆動させ人身体の構造上において最高速の一撃を放った。
相手はそれに対し刀を斜めにしてそこを滑らせる様にして衝撃を逃がしてしのぐが、手から伝わってくる感触から衝撃は逃がしきる事が出来ずに腕と脚の関節に通すことが出来た事を知る。
俺の身体は即座に次の行動に移す。
地に手をつき敵の後頭部を狙い踵を放つ。
それを後ろに跳ぶ事で回避するが、足元がおぼつかない様で身体制を崩す。
蹴りを放った足を折りたたみ地面をしっかりと踏みしめ、なおも当初の速度を落とさずに次は肘を胸部に叩き込む。
「ぐげぇ………」
胸筋と肋骨の固い感触がし衝撃が臓器を蹂躙して行き感触を数瞬の内に感じ、強制的に肺の空気を出され、蛙がなく様な声を聞く。
そして相手はそれによって意識を手放した様で無様に吹き飛ばされていく。
俺は身体を逸らして頭部と胸部の狙い飛んできた短刀を回避し、腕と足を狙って飛んできたものは手にした槍で落とす。
それは俺の槍と刀がぶつかり合った時の音を聞いてこちらに向かっていた時から感知出来ていた。
投げるタイミングは、胸部に肘が当たった轟音が響いた瞬間だった完璧だったと言えるだろうが、完璧すぎて読むのは容易であった。
俺の身体は叩き落とした二本の短刀を蹴り上げ手に持ち、そしてそのうちの一本を敵に向かってそれを投擲する。
驚いたようにそれを回避するが、やはり見えていないからだろうか大きく回避する。
さらにもう一本を回避方向へ向かって投擲した。
俺はそれが相手に躱された事が分かる。
それは正に五感を超えた何かによって伝えられた。
俺は地面を蹴った。
天井に足をつき、加速をし相手の頭部から接近して殴り気絶させる着地する。
俺の身体は即座に次の相手を探して動き出した。
他の者たちは固まっている様だが、戦闘は行っていない。
どういう訳か分からないが、ここにいる者たちはどうやら俺一人と戦う事にしている様だ。
俺はそれに疑問を覚えるが、特にそれに対して不思議とそれ以上の感情は抱かなかった。
全員を倒し終えた瞬間、暗闇が消えた。
俺の身体はそれが分かっていたかの様で予め目をつぶっていた。
目が慣れていくまで、眼をつぶっているがそれでも周囲の警戒は怠らない。
十数秒して目が慣れたころあいに目を開いた。
そこにいるのは人間とは思え無い存在感を纏った者たち。
見覚えはある。
彼らは俺や紫苑お嬢様が通っていた道場の皆伝位を貰い、さらに五十年以上にわたり修練をかさね、人間をやめたととってもいい総白の髪を持ち目を固く閉じた人たち。
だが、ここまでおかしい雰囲気を纏っていたか?
これは………………………………クノ?
まだ、上手く分からないが、神と同じ雰囲気を持っている。
周囲を見るとどこからともなく顔の無い人形たちが現れ、俺が倒した者たちを運んで行っている。
………………………は!?
何だこれは?何故こんなものと道長が共にいるんだ!?
俺は混乱しているが動く事が出来ない為、混乱は外につながらない。
運ばれて言っている者や周囲の地面にも目が行く。
地面は朱く染まり、運ばれて行く者たちも放っておかれた者は瀕死になっており、年齢もまちまちだ。
俺くらいのものもいるし、短刀等を使って来た者たちは多くいて、それらの者たちは全て自分よりも幼かった。
しかし、それを見ても俺の心は動かない。
何故と思ってみるとそれは直ぐに分かった。
そうか。攻撃をして来たから、敵と認識したからか。
それと同時に盗賊たちを討伐しに行った時の事がフラッシュバックした。
正確には捕まっていて、生きる気力を失った者たちを殺したその情景に………そして俺が〈白焔〉と〈死者の行進〉まで使って殺したのかを理解した。
俺がそちらに集中している間に、〈多面の道化〉と〈並立思考〉が発動し本当に俺が気にしている事を封じ込め、その場にあった丁度良く俺がそう思っても不思議が無い事にすり替えていた。
そしてそちらなら少しすれば俺が一時は後悔しても忘れられるからだろう。
しかし、それはクノが来て意味深な事を言われた事によって深く思いだし、俺がおかしくなっていったことはそれによるそごが感情をおかしくしたのだろう。
そして何気なく話した二人にそれを指摘された時に拒絶反応が起こったのだろう。
俺がそう思った瞬間、意識が薄れていく。
それだけでは無く身体の方も倒れて行った。
薄れていく意識の中で最後に見たものは道長たちの瞳。
………………赤?
それは見た瞬間、俺の意識は消えた。
「……………うぅ」
「お兄ちゃん!!」
「颯様!!」
俺は倒れる直前に聞いた声を聞きながら目を覚ました。
「………………ここは寝室?」
俺は寝かされていた部屋を見て呟いた。
…………………何だろう……………とてつもなく重要なものを見た気がするのに思い出せない。
俺は頭を抱えながら思い出そうとする。
それを見ていた二人が突然、俺に抱き付いて来る。
びっくりして二人を見ると二人は泣いていた。
「あ………………」
それを見て俺は二人にどれだけ傷つけていたのかを理解した。
今は二人に謝った方が良さそうだな。
これでは気にさせない様に一人でやっていた意味が無いな。
俺は別の意味で頭を抱えたくなった。
自分はどれだけ自分で隠せているものと思っている者が隠せていないと思い知った。
五人ほどの集団が馬車に揺られている話をしている。
「あの男はどうだった?」
商人の姿をしている者がそう言った。
しかし、それは手に傷一つ付いていなく商人には思えない。
「一目見た限りであ危険人物とは思えませんでした」
颯の前で大酒を飲んでいた男はそう言った。
「お前は?」
「そうですね。私もおおむねそうですが、心に不自然な曇りがありました」
「曇り?」
「はい、自分以外のモノに本心を封じ込められている様な印象でした」
「そうかでは、今の段階でどうかを判断する事は出来ないな………では、これからも観察を続けろ」
「………はい」
「分かりました」
颯と話をした二人は、直ぐにそう答えた。
ありがとうございました。感想待ってます。評価お願いします。




