128 国境の森で Ⅴ
本日二話目です
俺はソルさんに指示を出され、荷物の整理をしている付き人たちと雇われたであろう冒険者たちを見た。
「女性が多いですね」
パッと見た雰囲気で思った事を言った。
「貴女が盗賊たちから助けて来るであろう人たちを考えれば、彼女たちに余計な負担を与えない様にした方がいいだろうと思いまして」
「余計な気を使わせてしまいましたね。すいません」
俺はソルさんに余計な負担をかけてしまった事に対し謝った。
「気にする事はありません。むしろ私たちがやらなくてはならない事を貴女に押し付けてしまったのですから」
ある意味お決まりな社交辞令的なやり取りを一通り終え本題に入る。
懐をしてんにして〈アイテムボックス〉を使用し盗賊と奴隷商との商談書を入れた封筒を取り出す。
「それじゃあ、よろしくお願いします」
「……………予想以上にひどいものねこれは」
ソルさんは封筒を開け、ざっと中のものを見て言った。
「ありがとうございます。これくらいの証拠があれば、ここ一体の商会に対して奴隷の取引に関して一斉に調査がおこなえます」
「そうですか、よろしくお願いします。では、私は皆の所に戻るので」
俺はソルさんに礼をし、別れを告げて集落の外へ向かって移動して行く。
ふと空を見上げると、闇と星のベールが赤を食い尽くし終えたところだ。
俺は歩きながらこれから動くであろうとある局の事を思い出した。
カールスルーエにある違法品取締局………ホントに何のひねりもない直球の名前だから何をするところなのかは、説明をする必要が無いだろう。
ここはその性質上から相当な権力を持っているのだけど、それを使うには陣営の違う三方向から執行の許可を取らないとならない為、あまり機能しているとは言い難い。
奴隷が違法ではない事から、それが違法かどうかを確認し、証拠を出す事が難しい事かつそれをあまり過度に行う事で商業全体に遅滞が生じる事が主な理由だ。
憤りを感じないわけではないが、運営の仕方に関しては理にかなっていて文句は言いずらいが、今回の様に他の陣営を黙らせるくらいの証拠を出せば動かす事が出来る。
ちなみにここの調査で違法と出た時、裁かれるのは実を言うと違法を行っていた商会だけではない。
そこと多く取引を行っていた商会さらにもう一段階取引を行っていた商会までもが、厳罰の対象になる可能性がある。
動かすのは大変だが、一度動くとその周囲を完全に真っ白にするまで動く事をやめない。
なお、これは普段仕事が無いので来た仕事に関しては徹底的を通り越して病的に行う。
ここが動く可能性があると聞いただけで商会のネットワーク全体で問題を起こしていそうなところを探して、見つければ差し出して一刻も早く調査を終了させようとすると言う噂があるくらいだ。
…………こう言う時に潔白を確信出来るって言うのは中々楽なものだな。
奴隷の購入の時の事は何か問題になりそうだが、それは商会を作る前の話それ以降の事を捌く権限は持っていないし、万が一問題になろうが解放すればいいだけだから問題はないだろう。
手放したくない子はいるがそう言う子に関しては多分残ってくれると思っている。
まあ、確信出来るほどではないけどね。
リスクの一つとしては考えていたから、そうなっても問題はないだろう。
「ちょっといいかな?」
俺が考え事をしているとおそらく護衛に雇われたであろう冒険者のリーダーらしい人とアリサが近づいて来た。
「何でしょう?」
「…………ん~」
「本当に何でしょう」
「ちょっと、バ、バレッタさん!?失礼ですよ。何してるんですか!!」
俺の顔に触れんがばかりの距離から覗き込んできて、後ろに付いて来ていたアリサは彼女の急な行動にギョッとした様な反応をする。
「いや、すまんな。どうも見た事ない顔だなと思ってな」
ふむ………バレッタか。
確か、女性冒険者たちだけでつくられた〈牝鶏之晨〉の言う連合の幹部の一人………
俺を彼女の顔を見返した。
陽気な雰囲気を放っているが目は笑っていない。
………探りに来ているのか?
「私は冒険者ではないので知らないのは無理はないかと」
俺はこれで彼女がどう反応して来るか見る。
「へぇ、それじゃあ何で今回の依頼を受けたんだ?」
そう来るか……
「私は元々、迷宮を活動の主にしていた探索者です。
その時の繋がりで今回依頼をして来た商会と個人的の繋がりが出来まして、魔法具もその時に頂いたのでその時の恩です」
「専属って事か?」
そう解釈してきたか。
違うと言えばおそらく勧誘をしてくるのだろう。
「違いますよ」
実際そんなものは作っていないので違うと言っておく。
「ふぅん、違うのか……なら何でお前はこんな実力を持っているのにもかかわらず。
お前は少しも名が知れわたっていないんだ?」
「知れわたっている必要があるんですか?それに武術大会の推薦状は何故か来たので知られていないと言う事ではないでしょう。
ただたんに貴方たちの情報力が低いだけではないのでしょうか?」
第一声目で勧誘をして来ないのなら彼女を怒らせれば、勧誘して来ないだろうと思い挑発で奇な事を言った。
まあ、推薦の件これには疑問が残るがね。
本当に一体どこから来ているのだか。
「…………」
表情が硬くなる。
「ところでどの様な用件だったのでしょうか?」
俺はふてぶてしくたずねる。
「いや、私たちの連合に所属している者たちを助けられたので礼を言いに来たのだ」
「そうですか」
明らかにそんな態度じゃ無かったけど指摘するだけ面倒だからいいか。
「では、要件は終わったでしょうから私は行きますね」
再び歩き出そうとすると。
「おい、待て!?護衛をするんじゃないのか?」
「私が引き受けたのは盗賊の討伐だった。それ以上は引き受けていないので」
「何だと?」
「それに待たせている人たちもいるので」
俺はそう言うと不意をついて一気にその場を離れる。
「あ、アリサ。魔石と包帯は君たちの好きにしてくれ」
手を振りながらアリサにそう言い、集落の外へ出た瞬間〈瞬動絶隠〉を発動させて一気に彼女たちの視野から消えうせる。
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