126 国境の森で Ⅲ
本日二話目です
「はぁ……、よくもまあこんな所にこんな人数がいるかね………」
俺は全部で五つあった抜け道を俺が入るのに使ったもの以外すべて塞いで中に入った。
そこで隠れる事もせず、ここに連れ去られて聞き物がいる場所へ向かって一直線で動いていたので日も沈んでする事のない連中が、そこへ向かうのだから当然なのだろう。
俺の目的が分かれば、捕えられている者を人質にとるくらいはするだろうが、向こうとすれば何故いるか何て分からないだろうからね。
ここに来るまでで十数人これでもまだ倍以上いるって言うんだから驚きだよな………
俺はそう思いながら薄暗い道を通りながら浚われてきた人が入れられている部屋の前に来た。
意外な事に等間隔にろうそくがつけられていて、道もならされている事から魔法を使ってここが作られた可能性がある事が分かる。
「ここか」
そう呟いて俺はそこに結界を張る。
ここさえ、手出し出来ない様にしておけば存分にやれる。
さっきまでは俺の元に向かってくる連中が、ここに逃げて行かないかびくびくしていた。
無論どうにも出来るが、出来るだけ精神的にこれ以上傷を与えない方がいいだろう。
………と言ってももうダメそうなのはいるけど……
俺は深く息を吐く。
精霊魔法の回復系統が使えれば、精神的な傷を癒す事が出来るんだけどね…………
そうして出来ない事に対しで自分の無力さを感じる。
気持ちを切り替え、敵に位置を確認する。
さっきまでは数人が抜け道の方や普段使っている出入口の方へ向かっていたが、そこが塞がれている事を確認し一番大きな部屋に全員が集まっている。
………ばらけているよりはいいな。デカい魔法でも打ち込めばそれで終わりそうだが、そこには俺の目的のモノがあるからやれないな……
俺の目的。
それはカールスルーエの方で孤児院を作ろうとした時、都市中の奴隷及び不当に連れてこられた子供を探した所、この辺一帯から連れて来られていた事が分かり、公的に都市の警備局を動かす為に証拠が必要になる為、その証拠を手に入れに来た。
おそらく襲撃を受けた時に迅速に動く事が出来ない様に複雑に作られていると予想出来る道を通り大量の反応があり部屋の前についた。
そこの扉の大きさは俺の背の倍、横幅は俺が手を広げた時の四人分でよくもまあここまで大きく作ったと思う。
そして問題は子供がいる事だろうか………
ここで生まれた者なのだろうか………浚われてきて生きる為にやっているのだろうか………俺には判断が出来ない……出来ないが、おそらく普通に生きる事は難しいだろう。
俺が殺さなくて、保護したとしても暗部等で使うしかないだろうし、ここにいて普通の倫理観を持つ事も難しいんだろうな………
覚悟を決めて一瞬で殺す事にした。
魔力を圧縮し、弾丸を作る。
一人につき頭部、首、胸部に一つずつ計三つ。
〈並立思考〉を発動させて撃ち落とそうとするのにも対し、さらに変化する様にする。
「行け」
扉を無駄に破壊する事はせずに先頭の弾丸を追う様にしてたった一つ以外は一切穴をあけずに弾丸を送った。
その数瞬後内側から扉が吹き飛ばされ、爆風と扉の破片が俺を襲う。
へぇ、いい反応。
さらに扉は内側から衝撃を加えると散弾の様に飛んで来る様な作りになっている様だ。
俺は破片を結界で止める。
こいつらが想定していた様な普通の兵士なら効果もあったのだろうがそんなものは俺には通用しない。
破片を受け止めきった所で俺は中へゆっくりとした足取りで入って行く。
土煙がはれ、生き残っている者たちの姿が俺の目に映る。
一人は怒りで体を震わせている大男。
もう一人も同じ様に体を振るわせている魔法使い然としたやせ男。
「てめぇ………いったい何だ!!いきなり現われてよくもこんな事をしやがるな、おい!!」
大男は歯を軋ませる音を立て、俺に向かって怒鳴り散らして来る。
「何だお前は?こうなる事が予想出来なかったのか?」
俺は何を言っているんだと言わんばかりにそう言う。
「そうですね。ですが、子供を容赦なく殺すあなたには言われたくありませんね」
やせ男がそう言って来る。
俺としてもそれは言われると痛いところだが、それについて俺は責任から逃げるつもりはない。
「そうだな。それは言い返す気はないさ。可能性のある子供を殺す事は悪だろう。だがね…………」
俺は言葉を切り。
深く息を吸う。
眼を鋭くし、さらに殺気を抑える事無く発する。
「お前らの事が殊更に気に入らない。それの片棒を担いだ子供も残念だが、子供だからと言う理由で許す気はない。
お前らも言いたい事は、私にあるあろう。だが、それはもう言葉では解決しまい。自分が正しいと言うのなら………私を殺して自分の正しさを証明して見ろ。私から奪われない様に足掻け」
俺は二人の男を殺し終え、この巨大な集団は消えた。
死体を処理している間に子供の大半は此処に生まれた者達である事が分かった。
死体の中でも強力な者と似た魔力の波長を感じる。
だがそれは、同じ様に此処にさらわれて来た者の数を俺に教えてきている様な気もした。
処理を終え目的の証拠となる都市外で活動している奴隷商との契約書を回収し〈アイテムボックス〉の中へ入れる。
その後、さらわれて来ている者たちがいる部屋の扉の前に戻り結界をとき、かけられた鍵を破壊して中に入る。
………酷いなこれは。
腹が膨らみ子供を宿しているであろう女性たちは、変な体制による子への影響を考えている事なのか、手を縛り天井から吊るして膝立ちをさせられている。
そうで無い者たちは、特に拘束もされてはいない様だが動く気力も残っていない様だ。
子を宿している生まれる寸前の者、もう生んだ事が一度でもある跡が残っている者は完全に目が死んでいる。
捕まえられていた者は合計で三十人前後上で表したものは約半数。
彼女たちはもうダメなんだろうな………近づいても全く反応しない。
俺はまだ反応が見える者達と話を聞いて彼女たちをどうするべきかを聞いてみた。
「殺してあげてください」
全員がそう言った。
無理な事をされ、子を産めなくなったり、その子を売られたり、遊びで殺されたりともう生きていく気力は無いと。
俺は〈白焔〉を使いまず男たちの体液だけを完全に消し去ってから、〈死者の行進〉を使いって魂に刻まれている苦しみも焼いた。
〈死者の行進〉でそう言う事をするには、体から解放しないと出来ないので生きる事を選んだものには使えないのは残念がっているが、そこの残留思念も解放した。
生きる事を選んだ女性たちにも〈白焔〉による焼却は行い。
子供が出来ていてもまだ気付いていない者の子は消して置き、気付いているものもまだ痛み等は感じておらず愛よりもまだ憎しみの方が強かった為、全て焼いた。
そして俺は女性たちを連れ外に向かって歩き出した。
女性たちは深い傷を受けながらも助かると言う事で表情は多少は明るくなっているが、おそらく完全に心の傷がいえるには長い年月がかかるか、消える事は無いのだろう。
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