124 国境の森で Ⅰ
本日二話目です
今、俺達は帝国方面へ向かって国境線上を沿う様にして進んでいる。
カールスルーエは国境線上にあるのでそこに道があるのが、移動の為にも治安の面でも一番だろう。
しかし、それをやろうとすれば二国の間にもっと密接な関係が必要となるので実現していない。
それを作っている時代に魔の源泉がそこにあり、二国がそこでにらみ合いが数年間続いた為、そこを国境とした。
現在は魔の源泉から魔力が樹の成長を促しかつ強靭にして、生命力旺盛で魔物も大量に生息している魔森と言えるものになっている。
ごく普通の国内にあるものなら定期的に兵士が実践訓練、冒険者ギルドが採取、討伐の依頼として適度に破壊し、同じ様な森にならない様にしている。
国内にあるものはそう言ったもので管理しているが、国境線上の魔の源泉を管理しているのは、国境を兵士よりは容易に行き来できる冒険者ギルドの冒険者たちが以来として入っているが、とてもでは無いが縮小させる事は出来ない。
その様な事から、国の政治的にも物理的にも、それを行おう事は現在では難しくなっている。
「やっぱりいるな」
俺は魔の源泉から発生する魔力により成長能力が促進され巨大化した十数メートル級の木の枝にしゃがみ、仮面の奥で視線を鋭くし眼下の者達の会話を聞く。
「ははは、今日はいい収穫だったな」
「そうだな、こいつらは俺が先にやらせてくれよ」
「はあ、俺が先に決まってんだろ」
「てめえは今日は殆ど成果が無かっただろうが、アジトにある使い古しでも使ってやがれ」
「やに決まってんだろ、あんなん子鬼でもたたねえよ」
「ははは、ちげえねえ」
六人の男が手足から血を流していたり、あらぬ方向へ曲がった三人の女性たちを運んでいる。
男たちは笑いながら会話を楽しんでいるが、それでも周囲への警戒は怠っていない。
「…………」
腐ってもここで生き延びているだけあるか………
この森で生きると言う事は、普通に生きるよりも体に多くの魔力を体に吸収する。
空気中の漂っている者を取り込むのもあるし、此処に生息する魔物を食って生きているのだろうから、それは必然的な事であるだろうが、道を外した者達がその様に大きな力を得る事は害以外の何物でもない。
「さて、行くか」
俺は一切の音を立てずにその男たちの進行方向を遮る様に降りた。
「「「っ!?」」」
急に目の前に出現した赤。
森では絶対に見る事が無い様な色彩が、急に視野の中に現れ男たちはそろって絶句した。
「何だこいつ……」
「知るか!!」
「お、こいつ女じゃね」
「ならいいな、こいつも連れて行こうぜ」
「輪りが悪かったから丁度いいな」
そう言って女を押さえている者を除いた者達が、武器を抜いて俺に斬りかかって来る。
ふぅ、自分をそう言う目で見られるのはかなり気持ち悪いな……生き残させるのはコイツでいいか。
一番手前の男の腕を手甲の術式を起動させた状態で軽く払った。
「…………なぁ、がぁあ」
その手甲が触った場所から吹き飛んだ。
男は全く抵抗無く破壊されたので自身の体がどうなっているのか気付くのに数瞬の間があった
ふむ、上出来だな。
振動を生み出すこの魔法具は、相当汎用性のある能力を付けた武器だ。
アルとの訓練では、使えなかった完全な殺傷する為の機能を試したかったからこいつらを探した。
魔物では試したけどやっぱり最後は人で試さないとね。
俺は冷酷に物を見る様な目をして男たちを見た。
「ぐ、があぁ!!」
腕を吹き飛ばされた男が俺へ攻撃を加え様と踏み込もうとした。
ふぅん。その傷で動こうとするか……でもね。
「は………」
男が足を上げた瞬間。
乾いた木の枝が折れる様な音が周囲にこだまし男は前のめりに倒れた。
踏み込もうといた時、軸足にぢた骨が身体を支えられず粉々になっていた。
結構うまく言ったな。
倒れて行く男を見ながら満足げに思った。
まあ、これは〈諸事万端〉が無いと強振する振動数を知る事が出来ないから難しい俺以外が使うのは難しいかな。
………最終的には無差別に粉々にするから問題はないか。
…………さて、他の連中は生かしておく必要もないからさっさと殺そう。
俺は無属性の直接加速の魔法を使い完全に男たちの視界から消えうせ、女たちを抑えている者たちの頭部をすれ違いざまに粉砕。
他の男たちは粉砕音を聞き振り返る。
「なっ………」
「何時の間に!?」
「このアマ!!」
絶句する者に驚愕する者、激情する者。
三者三様の反応をした。
その反応から全く目で追う事が出来なかったと言う事が分かるが、あまりの現実離れした光景に正しく恐怖を感じていない事も分かる。
「五月蠅いな」
同じ様な移動法で男たちに接近し、俺は一番手にいる男の首を裂く。
「ん?」
首に亡くなった男の腹や胸から剣と槍が突き出されてきた。
…………こいつら慣れてるな……
仲間を殺されて怒る様な感情を持っていても死んだ者にはもうどうも思わない様だ。
まあ、価値観の違いか………
俺は向けられた刃先を破壊しながら考えた。
それをやった二人は、そんなに容易に防がれるとは思っていなかった様で俺の手刀で斬り裂かれる直前に見た目は驚きに染まっていた。
……こいつらだけみたいだな。
驚いたと言う事は今までうまく行っていたのだろう。
そしてそう言う事はやられた相手が、そんな攻撃が来ると言う事は考えもしていなかったと言う事のだろう。
「君たち大丈夫かい?」
「………あ、はい…………大丈夫です……」
俺が話しかけた女性は呆然としながら答えた。
「すまないが私は回復魔法が使えない……これを使ってくれ、知り合いの薬師が作った物だ。効果は保証する」
俺は懐に手を入れそこで〈アイテムボックス〉を使って薬瓶や包帯を人数分取り出し渡した。
「あ、ありがとうございます」
「私はあの男からあいつらのアジトの位置を聞き出して来るから、ゆっくり治療していろ」
「分かりました……」
俺はまだ生きている男を彼女たちから見えない位置に持って行って殺した。
彼女たちが俺が奴らのアジトを初めから知っていたと思われなければいいだけだから話を聞く必要は無いんだよね。
俺は頃合いを見なからって彼女たちの元に戻った。
「アリサと言います。助けて頂いてありがとうございました」
「お礼が遅れてすいませんでした。リタと言います」
「ありがとうございます。エマです」
俺を見て一斉にお礼を言って来た。
先程までは、呆然としていて自分たちが助かった事が分かるのに多少時間が掛かったのだろう。
「アジトの位置を聞いてきた。動けるか?」
俺は軽くうなずいてそれを受け入れそれに続いて移動は可能かを聞いた。
「すいません、まだ動けそうにはありません」
「そうか……おいて行くのは危険だから、多少は無理をしてもらおう」
「え?」
驚いた彼女たちの反応を無視し、浮遊の魔法を発動させた。
「あわわ……」
「これは……」
「……………」
「おいてはいけないからこれでいいだろう。では行こうか」
俺は言って移動を開始した。
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