123 移動中
「快適だな」
俺は以前乗った馬車のレベルとの違いにものすごくいい笑顔で言った。
まあ、自分で作ったんだけどね~
俺はカールスルーエの図書館から持ってきた古式魔法無属性禁級編と言う本を読みながら、机に置かれたティーカップをとりそこに入れられた紅茶を口に運ぶ。
今日のおやつは茶葉たっぷりの濃い目に入れた紅茶に砂糖漬けのレモンを皮ごとすり潰したもの混ぜたマドレーヌ。
「そうですね~、これに慣れてしまうと王族の待遇でも満足できませんよ~」
うさ耳をピンと立たせて、ご機嫌そうな雰囲気を周囲にふりまきながらマドレーヌを頬張り俺の呟きに答えた。
この馬車に乗って時間がたたない内は、呆然としていて居心地が悪そうだったが慣れてしまえば快適そのものなので開き直ってくつろいでいる。
「そうかね~、まあ、そうなったとしてもうちの商会から商品として売るからその時は買ってね~」
俺は間延びした声で笑いながらそう言った。
「いえ……僕はそんなにお金ないですよ?」
残念そうな声で答えた。
ん~、これはあれだよね~、ほしいけどお金が問題か………これ原価の無いに等しいんだけどね~まあ、売るところには高値で売るけど。
とは思っているが、ただ当然で売ってしまうと魔法具の価値が無くなるからそんな事はしないし、今以上に多方面から恨みを買うのでそんな事は根本敵にしないだろうが。
「知り合いだし、お試しのサンプル品としてあげようか?」
「サンプルですか?これ以上手を加えるところがあるんですか?」
「ん~、そうだね~、ここにつけられている魔法具は、俺たちの魔力で起動できるから問題はないのだけど、魔力の少ない者たちが使う時に何か問題があるかも知れないから、そう言う意味では俺たち以外の者たちにも使ってみて、どうだったかなって言う事を聞きたいからね」
「そ、そうですか?それなら貰えるとうれしいですね」
大人しいギョクとしては、比較的大きな声で俺の提案に答えた。
「じゃあ、帰ったら用意するね」
俺は笑顔でそう答えた。
……これを個人じゃなくて向こうの局にあげたと言う事にすれば、後々で何かあった時に何かに使えるだろう。
と笑顔の裏で黒い事を考えていた。
「また、負けた~」
俺とギョクでそんな会話をしている所でそんな声が聞こえた。
リルとレティシアは部屋の角の方でボーゲームをしていて、これはもう何度目になるか分からないリルの悲鳴だ。
この世界にはリバーシやチェス、将棋、囲碁、トランプ、ウノもなんでもあった。
いつもの通りこれらは俺たちの世界から伝えられたらしいが伝えたのは【勇者】では無い。
俺は【勇者】だと思っていたのだがそうでは無かった。
では誰が伝えたか、それはクノだ。
以前、道楽の神と自分で行っていたが本当だったんだな……
スポーツの方も伝えようとしたらしいが、能力差の所為で無理だったらしい。
道具を使わなくていいものは、それなりに伝わったらしいがそれだと結局あんまりおもしろく無くて広まらなかった様だ。
超人的なスポーツにはなりそうだけど、それを見て面白いと感じるのは普通のものを知っていると言う下地が無いと無理なんだろうね。
しかし、よくもまあ、こんな事をするよなアイツ……
古式の魔法を作ったのもアイツって言う話だし、人の神って何を伝えたのかいまいち分からないんだよな……
まあ、これはいいや。
ゲームの話だがここの全員で一通りやってある。
その中で一番強かったのは俺だ。
と言っても、俺が強いのは魔法行使によって鍛えられた思考速度のおかげで、数百手先でも総当たりで潰して行けるからだ。
二番手は驚いた事にシェンだ。
本人曰く、シェン自身はやった事は無いが、知識としては知っていて物凄い量の記憶があったからだそうだ。
如何なんだろうね、それって?
三番手はギョクでボードゲームは趣味でよくやるみたいでシェンに負けた事を地味に気にしていた。
まあ、シェンは記憶だけとは言え、元はこの世界でも上から数えた方がいいレベルの長寿だったらしいから仕方ないと思うけどね。
四番手、五番手でレティシアとリル。
これは仕方ないだろう。
そして最後がモルトだけどこれは順位に入れる事自体がまだおかしいかな。
生まれて数年だって聞いたし、【魔人】になったのも最近でこう言った下むなんて無縁の生活をしていたのだから、強く無くて当然だとも言えるが……教えた事を吸い込むことに関しては天才的でこのペースだとゲームにおいて、リルとレティシアに勝つのは時間問題に思える。
モルトはこれをひく仕事があるので遊ぶ時間が無い為、このスキに上たちしようと考えてずっとボードゲームしている。
「う~何で勝てないんだろう……」
リルたちは床にボードを置いて座りながらやっているのとこの二人は室内にいるとかなり薄着になる。
その為、リルは胡坐をかいた状態でさらにあおむけになるのは、健康的な白くしなやかな足とその付け根が見えそうになり大変危険な絵だ。
さらに尻尾がある事がある事がそれに拍車をかける。
ギョクなんてそれを見ない様にする為に俺の方に視線を固定している。
なお、レティシアは綺麗に正座をしているのだが、同様に薄着をしているので状態的には今のリルの状態と何ら変わりがない。
「それはさ~、リルって相手の先を読んでないよね?」
シェンはリルのそう指摘する。
「してるよっ!」
「それって、こうなれば自分が一気に勝てるとかそんな事じゃないの~」
「え……そんな事無いよ………」
シェンの指摘に対して勢いよく返すが、すぐさま論破されて言い返す言葉も力無いものになってしまった。
「あのさ~相手だって負けないように考えてやっているんだよ?リルに有利に成る様に動かす訳ないじゃん」
「うぅ……」
いつもは天を向いている耳が今は随分とたれてきている。
シェンに言われた事が相当こたえているのだろう。
目に涙をためて俺の方を見て来る。
はぁ~、しょうがないな。
俺は手招きをしてリルを自分の隣に座らせる。
「……」
俺の膝をジィ……と見ている。
「………」
「……おいで」
俺はそれが如何言う意味なのか理解し、苦笑しながら自分の膝を叩いてそこに座る事を促した。
そこで頭を撫でながらお菓子を口元に運んで食べさせて泣き止ませる。
それにしても、本当にリル天才肌だからな………今まで相手を考えながら追い込んで行くと言った様な戦は、殆どして来なかったんだろうな………その証拠に俺が受けの戦い方から同じくらいの速度を出して、攻勢に回ると結構あっさり負けちゃうからな。
こう言うのは、如何にかしないといけないんだろうけど、リルの年齢を考えるとそう言うのって言うのは出来なくて普通だけど………
俺は泣き顔から安心した様な顔になって行く過程に和みつつも、これはいったい如何しようかと考えていると二つの視線に気付いた。
一方はまたですかと言いたげなギョクからの視線とズルいと言いたげなレティシアの視線のものだ。
シェンはリルがこっちに来て、俺の膝に座った時点でああまたかと言う顔をして台所の方へ消えて行った。
俺はレティシアも手招きしてリルと同じ様に撫でたり、お菓子を食べさせたりした。
「颯様、日沈んだ……………ごゆっくり?」
その後、レティシアも同じ様にした所でギョクも自室に戻って行きモルトが、俺と決めていた一日のノルマを終えて俺に伝えに来て、首を傾げられて呆れられるまで続けていた。
しかし、コイツも言う様になったな………最初は俺の見るだけで震えていたのにこんな事を言って来られる様になるとは……
ありがとうございました。感想待ってます。評価お願いします。




