121 災者の集い Ⅰ
本日二話目です。
極東。
それはこの大陸において魔の土地と呼ばれている場所である。
世界最大の魔の源泉が存在しているにもかかわらず、世界樹がそこに生えていない唯一つの場所だ。
世界樹とは魔の源泉にはえ、そこから噴出する魔力の勢いを調整して普通の生物の生きる事が出来る環境にすると言う能力を持っていて、根本的にこの樹は膨大な魔力が無いと芽が出ない。
その為、世界樹は魔力に対してこの世界でも屈指の耐性がある。
それが生える事が出来ない事が、この土地の異常性を表している。
一切の調整のなされていない魔力は大地に浸み込み、転がっているただの石ころであろうとも人間の国では高レベルの魔材とされる。
魔の源泉のある場所は、数百層に及ぶ膨大な迷宮となっていて最下層には【双極王】が封印されているとも言われていたり、神にも匹敵する様な【魔王】がそこにいると言われたりとされている。
迷宮の周囲にある森………正確にこの樹と言うのは、魔力が地面よりも高濃度になった物が更に集まり木の様になった物……の中に開けた場所がある。
この樹は人間の持っている魔金属の数倍の硬度を持ってる。
これらを切り開き、さらにそれらが発生しない様に整地されているそこは、尋常ならざる何かによって行われた事が予想が出来る。
そこにぽつんと置かれて………その地面を切り取られて作られた机に十二の椅子がある。
そこに石造の様に微動だにしない、立ち上がったらおそらく二メートル半くらいになるだろう鎧が座っている。
「相変わらず早いのぅ、絶殻の」
「フロストか。ふむ、そうであろうか?我としては時間通りのつもりなのだが」
絶殻のと呼ばれた者は、鎧姿であるにもかかわらず全く音を立てずに振り向いた。
そこにいたのは、永久凍土を思わせる様な白く足下に届きそうな長さの髪に、きめ細かい足跡の無い初積雪の地を思わせる傷一つない肌、雪を降らせる時の曇天を思わせるグレーの瞳をしていて白い着物を着た妙齢の美女。
彼女は北の地の魔物を統べる【紅蓮の魔王】
皮膚が破れ真っ白な凍原に赤い蓮が咲いたかの様に死ぬからそう呼ばれている。
「絶殻のお主も王であるのなら王らしく振る舞うべきではないか?」
「お主もかなり早くに来ていると思うが?」
この2人は一度殺し合った事があり、その時は彼の絶殻が彼女の攻撃を全て防ぎ切るが、無尽蔵に生み出される雪や氷の物量を突破できず。
一か月間の戦闘の末に引き分けになった。
そんな事もあって二人はもう闘わない方がいいと言う事で意見が一致している。
「そうでは無いさ、私のすぐ後にもう何人か来る」
フロストがそう言うと二人は気配を感じその方を見る。
「やあ、フロストさん、リテスさん。数十年ぶりかな?」
黒い着流しを着て糸の様な細い目をしていて柔和そうな笑顔を浮かべ、丸眼鏡をかけた何とも胡散臭さそうなおでこの中心に一本の角がある青年がそこから現れた。
一見する特徴は頭部に角と和服だろう。
この組み合わせから予想するに彼は鬼族である事が分かる。
「む、山祇の」
「タムケか、そうだな。お前が【真の魔王】になった時だからそれくらいになるか」
「そうですね。懐かしいです」
「山祇のお主は相変わらず自ら国を治めず、【鬼人王】が収める国を転々としているそうじゃないか?」
自分達は国……もしくは集団を作ってそこを守っているのでタムケと呼ばれた【魔王】の行動は気に入らないらしい。
「ははは、僕は元々子鬼だったんですよ?
そんな奴が国の上に立つなんに無理ですよ」
彼は笑いながら手を顔の前で振りながらそう言った。
と言っても彼は、【魔王】にまでなったのだから当然それなりのスキルを生まれながらに持っていた。
それは気の操作と〈気喰い〉と言うスキルで他者を喰った時、気も吸収するのと気の貯蔵量を無制限にすると言うものだ。
【魔王】となった今で作る方が喰うよりも圧倒的に多くなりあまり使用されている感じはしないが、それでも生み出される膨大な気は日夜彼の体の中で貯蔵され続けている。
「まあ、それに鬼《僕ら》なんて子鬼の一匹でも残っていればまた増えますよ?」
あっけからんと自分たちの事を評価する。
ある意味では鬼の個体差は人間並み……【魔王】がいる時点で以上か、さらに繁殖能力も人間よりも高い。
まあ、詰まる所意外とこの若い王は人間からすると脅威だ。
「ぬぅ……」
「フロスト、こいつを論破するのはお主では無理だぞ?」
「なっ!?絶殻のお主も敵か!?」
「そうでは無い落ち着け」
ヒートアップして行くフロストにリテスが落ち着く様に言う。
「あはは、所で今日僕らを集めたのってお二人です?」
自分で原因を作っておきながら自分で回収する。
彼が嫌われている理由はこの辺にあるのだが、本人も分かっていてそれで相手の反応を見て楽しんでいるのでたちが悪い。
そう言われてまたやったと言う顔を二人はして疲れた様にため息を吐いた。
「うぬぅ……私達では無い」
「あれそうなんですか?と言う事は誰でしょう?妲己さんは僕達に興味が無いでしょうし、ドラキュラさんは動く時に僕たちにいちいち言って来る様な配慮は内でしょうし、グライフさんは……まあ、馬鹿なんでお話をする様な頭は無いでしょうし」
彼は自分よりも高位の【魔王】に対し容赦のない評価をする。
「そうじゃの、この中で言うとなると一応極夜のかの?他の二人よりもまだましじゃ」
「ふむ、そうだな……グライフは考えなしだろうし、妲己は我々よりも一段上の【魔王】で最古参だからな私達に関わろうとしないであろう」
「あはは、上位の方って相変わらず碌な人がいませんね」
そう言うタムケに二人はお前だけには言われたくないと言う顔をして彼をにらんだ。
なお、現在生きている【魔王】は古参と新参の二種に分けられ古参は【銀仙王】妲己【極夜王】ドラキュラ【混血王】グライフ【絶殻王】リテス【紅蓮王】フロストといると言われている【魔液王】の六人。
最後の一人?は迷宮から出て来ないので世界には知られていない。
古参は最低でも二百年以上前に【真の魔王】の職業を入手していて新参の【魔王】達よりも一段以上上の能力値を持っている。
その時、魔力汚染の所為で灰色に近い色をした空が夜色に飲み込まれた。
「ん?ドラキュラさんですね」
「その様じゃ」
黒い光が集まり黒い髪をして病的な白さの肌、真紅の瞳顔の造形は完全な左右対称、さらにそれぞれのパーツも計算されつくされた配置をして国宝級の芸術品でも彼を超える美は無いだろう。
「よく来てくれた。今日呼び出したのは我だ」
そこにいた三人は凍り付いた。
今までの彼ならそんな事は言わなかった。
絵にかいた様な傍若無人、唯我独尊、周りの者は俺に着いて来いと言うものが彼の考えだ。
「もう少し待て、グライフがこちらに向かっている」
彼はそう言い椅子に座った
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