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クラスごと勇者召喚されたみたいだが俺の職業は魔王のようです  作者: satori
第三章帝国での武術大会は面倒事になるでしょう
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114 復讐の英雄 誕生

本日二話目です。

ここに来て数カ月間私は数えきれない程の命を奪った。


自分から奪われない様にする為に……


その日々は彼女の感情を唯削り続けるものだった。


瞳からは光が失われていき目の下には濃いクマができ、表情も暗く陰気なものになって行った。




白亜の部屋で六体の魔物モンスターに囲まれながら回避を続けている。

彼女は自分と同等の魔物モンスターと少ないながらも自分の同族を殺し続けた事により、能力値も短い時間で有り得ないほど伸びて行った。


バックステップ、サイドステップで攻撃を躱し相手の攻撃の線上にはいる様に移動する。

能力値としては同等。

しかし、相手は複数。

基本的な視点から見れば自殺行為でしかない。


手にしている武器は双剣。


相手にスキが出来る瞬間に機械じみた精確性で急所に攻撃を入れて行く。


全身から汗が滝の様に流れ、動くたびに床に落ちている。

呼吸も安定していない。


それでも動き続ける。

相手の動きの全てを見透かすかの様に目を凝らし、敵の動きの予兆を掴む為に耳澄まし、出だしに反応する為に足の裏で地面の振動を感じる。


全ての感覚を総動員して先を読む。


相手が複数に成る様になってから一回の戦闘時間は長くなり続け、数時間以上動いている。

しかも今日はそれの三回目。


それくらいの回数になって来ると動く要素を考えては無い。

ただこの数カ月の動きの全てを思い出し無駄を削り、さらに業を合理化させていく。


彼我の戦力差は約六倍。


能力値で勝とうとすれば直ぐに殺されてしまう。

それ以外のモノを能力値以外の要素を持って敵を下す。


彼女は戦いの中で動きを更新させていく。


彼女は恐怖に支配され、それは今や狂気に変貌しいていた。


彼女の戦いに派手さは無い。

長時間敵の隙を好き続け動きを鈍らせ、弱らせて一体一体確実に殺していく。

それが生き残る為の最善策だからだ。


今日もそれを忠実に守り生き残った。


「………………」


いつもの男が彼女の事を見る。

今日の分の戦闘は終わった筈であるのに部屋に戻れと言って来ない。

そして次の瞬間彼女にとって予想だにしない事を言われる。


「お前はもういらない」


「え……………………」


彼女は絶句し何も言えなくなった。

しかし、次の瞬間には顔は恐怖に染まる事になった。


幾たびの戦闘訓練によって感情は摩耗していた。

その為、恐怖が顔を出す事は無く今までの自分は、唯奪う側の者から今の状態を与えられているに過ぎない事を冷静に理解してしまった。


急な浮遊感。


足元の地面が急に消えた事に遅れて気付く。


「あ………………………」


呆然としていた彼女は反応が遅れた。

普段通りの彼女なら気を足場にする事で落ちる事な無かっただろう。


しかし、この地獄の中でも彼女は慣れてしまった。

故に言われた通りに目の前の者殺してさえいれば、現状維持は出来ると思っていたのに……と言うものを真っ向から否定されてしまった。


壊れた少女は心の支えにしていた。

現状さえも他人・・に儚く散らされる。

そんなものであった。





落下していた時間は数秒間だっただろう。


彼女は幸せだった村の生活を思い出していた。

走馬灯と言う奴だ。

今の生活と正反対な危険もない穏やかな生活……死の直前にそれを思い出す事が出来るのは、このまま死ぬことが出来たとしたら幸運だっただろう。


しかし………


地面に落ちた時に感じたのは柔らかな感触。


直後に感じたのは鼻に衝く濃縮された腐った血の臭い。


それは紛れも無く、死の臭い。


床を埋め尽くす夥しい数の人に死体。


走馬灯は消え去り、現実に意識を戻される。


「ああ……………………………………………あはははは……………………………………」


狂った様に笑い出した。

記憶と現在の落差に、そして生き残ってしまった事への悲哀に………


「自分の意思じゃ………私は死ねないのに…………………」


親友の残した呪い。


それは彼女の心に消えない傷を残し。

そして傷はスキルとなり、本当に死ぬ事の出来ない身体になった。


精確に言えば、ある程度の回復力と死を選択できない思考。

戦闘中ならそのスキルは、他のスキルを勝手に喰らいって統合して勝手に強くなる。

戦う事を放棄しても体を勝手に動かす。


これがあったからこそ心が摩耗しても、今まで生き残ってこられた要因であった。




そこに落とされて数週間がたった。


彼女は幻覚に魘されている。

怨嗟の声が彼女の耳元で囁いている。


それは耳を塞ごうが、鼓膜を引き裂こうが聞こえた。

足下に転がっている食料を喰らっている時も、ここから出ようと足掻いている時も、睡眠中であっても聞こえた。


「喋るな、消えろ、五月蠅い、黙れ、囀るな…………」


思いつく限りの言葉を発しながら、壁に頭を打ち付けて耳元の声から意識を逸らそうとする。


「嫌だ!!私にそんな事を押し付けるな!!私の中から消えろ!!」


赤に交じって白いものが額から見え始めても彼女は壁に額を打ち付ける事をやめない。

もうそんなものでは、彼女は死ぬ事は出来ないので動けなくなる兆しも無い。


頭の中で響く声、それは今までここで喰った者の意識………恨みを持って死んだ者の魂。


「止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ………いなくなれいいなくなれいいなくなれいなくなれいなくなれ」




〈スキル〈魔力支配〉を入手しました〉


〈一定量の魔力と魔力操作、気を持つ事が確認されました。

 スキル〈魔鎧気〉を入手しました〉




更に数週間………体は言う事を聞かづ食べ物を勝手にべ。

声はさらに酷くなっていった。


彼女は今一日の殆どを声に耐えて過ごしている。

蹲る様に横たわり、空腹感を感じると体が勝手に足下のものをべる。


更に声が増える。


これを繰り返している。


「………………………いいよ」


彼女は呟いた。


誰にとでもなく。


空気に溶ける様な小さな声で。


しかし、それを聞いた者達はいた。


「やってやるから、私に強力しろ!!」


彼女は立ち上がり自棄を起こした様にそう叫んだ。


〈スキル〈魂覗眼〉を入手しました〉


それと同時に左の瞳は色を暗闇の中でも鮮明に見える金色〈こんじき〉色に変えた。


受け入れる事を了承したので肉を喰うなんてまどろっこしい事は必要ない。


〈魔力支配〉発動


魔力を操作して周囲の魂を回収して自分の体に入れて行く。


〈スキル〈一身多魂タバネルモノ〉を入手しました〉


「さあ、行くぞ。奴らを殺すぞ!!」


彼女は叫んだ。


戦争を始める時の英雄が将軍が聖女が兵たちを鼓舞する様に。


〈職業【英雄】【将軍】【聖女】を入手しました〉


〈スキル〈死拒者〉〈魔鎧気〉〈一身多魂タバネルモノ〉〈魂覗眼〉〈魔力支配〉は統合されます。

 〈昌殻〉を入手しました〉


〈特定スキル及び職業、称号の入手を確認しました。

 職業【英雄】は職業【真の英雄】へ変化しました称号〈復讐の英雄〉を入手しました〉


ありがとうございました。感想待ってます。評価お願いします。

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