113 復讐の英雄 奪われる者
先週はすいませんでした。
昼には投稿できると思っていたのですが、私用で実家に帰らなければならなかったので書く事で出来ずに更新が出来ませんでした<(_ _)>
本日一話目です。
私は忘れない全てを奪われるきっかけになったあの日の事を奪われ続けた日々を………
帝国の辺境の奥地にひっそりと存在している名も無い人口百数人の小さな村。
私はそこで生まれた。
この村に住んでいる人は、全体的に色素が薄く主に灰色の髪をしていた。
その中でも私は一際薄く完全な白だった。
と言ってもこの村ではそれが普通であり、黒髪の中にちょっと茶色いのがいるなと言う認識くらいでしかない。
私は引っ込み思案で友たちはそんなに多い方じゃなかった。
だけど特に仲のよかった親友と呼べる一人がいたので寂しいと思った事はないし、親にも愛情を注がれて育った方だと思う。
別段その村は貧しくも無く近くには、動植物の豊富な森があったので食事の面で見てもかなり恵まれている方だったと思う。
でも、それはほんの些細な他人の思惑によって簡単に無くなってしまう様な脆い物だった。
私は許さない原因を作った全てを………帝国の王も………勇者も………魔王も………人間も………神も………この世界も………全て………
必ず殺す。
私から奪える可能性のあるものは全て無くしてやる。
一面真っ白な部屋の中。
ミドルソードとショートソードを持った一人の少女そしてその少女を殺そうとしている魔物。
少女と魔物の能力値の総合はほぼ同じ、本来なら冒険者、探索者どちらであっても何人かで囲って安全を取りながら戦う事を推奨されるだろう。
総合的な能力値が同じくらいと言う事は、この戦いは勝つ事もあれば負ける事もあると言うものだろう。
そう言ったギリギリの戦いを一日に何回だろうか?何回も何回も行っている。
ゆえに、余計な事を考えている暇はない。
出て来る魔物はその日の内では同じタイプのものはいない。
平均的なものであったり、力に特化していたり、速度に特化していたり、魔力に特化していたりと様々だ。
気を抜けば本当に死んでしまう。
「私は死ねない」
少女はボソッと呟く。
まるで感情の伺いしれない平坦な声………恐怖も怒りも疲労も戦闘高揚もその声からは、伺う事の出来ないただ無感情な声。
魔物の体には、多くの小さな傷がそれこそ体中についている。
少女の戦い方はシンプルで、相手が焦るまで小さい傷をつけ続ける。
そして相手の焦りがピークになるまでこちらからは、大きな隙を作る様な大振りの攻撃はしない。
ただ待つ。
その時を虎視眈々と………
そして焦った魔物は咆哮をあげながら少女に跳びかかる。
少女は動かない。
棒立ちのまま、魔物の攻撃を待っている。
自分の数週センチの距離まで魔物が入った。
少女は流れる水の様に何の遅滞も無く魔物の股下をすり抜けた。
戦っていてこの魔物の構造的にここへ攻撃をする事は難しいと分かっていた。
少女は魔物首を落す。
しかし、その表情には声と同じでなんら感情を窺う事は出来ない。
ただ、空虚な雰囲気が漂っている。
「D715終わりだ。部屋に戻れ」
今日のそれを終わりにする声。
少女、D715と呼ばれたモノは逆らう事無く自分に当てられた部屋にも載って行く。
白亜の部屋には床一面に魔物の夥しい数の死体との血が広がっていた。
部屋に戻ると私は武器の手入れをする。
ある一定回数生き残れば向こうから渡されるが、これは貰ったばかりなので当分先になる。
これを怠って武器が壊れ数日間素手で魔物と戦う羽目になった事があった。
あの時は本当に死にかけた。
同じ愚行を行わない為にしっかりと手入れをする。
「私は死ねない」
ここに来た初日事だ。
私と親友の子がいた。
私たちはお互いに武器を持たされて白い部屋に入れられた。
そしてここの者は私たちにこう言った。
「戦え」
そう言ってそこから出て行った。
ここに着いた時、私たちはすでに奴隷にされていた。
故にその命令に逆らう事は、どれだけ抗おうとしても出来なかった。
私は勝った。
私は魔力を生まれた時から持っていなかった。
その為、将来狩り等をする時は身体能力と戦闘技術を頼りにしなければいかないと思い、小さい時から体は鍛えていた。
だから剣だけを渡され戦えと言われれば同世代なら負けない。
それは私にとってその時は幸運だったかもしれないが、今になって考えるとその時に死ねたら私はどれだけ幸運だっただろうか………
「お前はこっちだ」
「お前はこっちだ」
私たちを戦わせて終わった時に男が二人入って来た。
私たちを別の場所へ連れて行こうとする。
「な、はなせ………」
私が声を荒げようとすると体の奴隷紋が反応し、体を動かすことが出来なくなる。
その時私と彼女の目が合った。
涙を流しながら私に助けを求めて来る。
動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け………
何度も何度も体にそう念じるが、体は動くどころかさらに奴隷紋が反応し私は意識を失った。
私は扉を開く音で目を覚ました。
はじかれた様に顔を上げる。
「おら、お前の友たちだよ」
そう言って彼女を私の前に投げ捨てる。
彼女はボロ布にまかれていた。
落とされた時の衝撃でそれが少しはだける。
その中が見えてしまった。
それと同時に獣臭い臭いが鼻をつく。
それだけで何があったかを理解してしまう。
「ひっ!?」
顔を見ると大きな二つの空洞が開いていた。
その中から、白濁した液体と血が混ざり合い溜まっている………
私がいる事に気付いて顔をこちらに向けた。
その時、その液体がドロリと漏れ出し床に流れた。
私は後退ってしまう。
その時の私の心は親友をこんなにした相手に対しての怒りを抱くよりも恐怖に支配された。
身体が振るえる。
足に力が入らない。
歯が噛み合わない。
視野がぼやける。
息を吸っているのに息苦しさが無くならない。
「私は………あなたを許さない……幸せになる事も……逃げる事も……ぬくもりを得る事も……苦しみ続けなさい……痛み………に泣き叫びなさい……その末で………死になさい……自ら死を望むなんて…………絶対に許さない」
私は弁解をしようとするが、声が出ない。
何とか声を出そうとしている内に、彼女からは力が抜けて行き私に対する呪詛を言い終えると終えると彼女は果てた。
「あ…………ああ…………………」
「いや、お前は間違っていない。
力の無い者は無残に死ぬ。
それだけの事だろう。
お前は勝った。
お前は何も間違っていない」
そう言うと死に絶えた彼女をもって男はそこから出て行った。
私は極度の精神的外傷により私はまた意識を失った。
次の日私は同じ部屋に連れて行かれた。
その時、二本の剣を要求したら渡された。
何故と言う表情をしていたら。
「勝ったからだ」
と言われた。
その日は魔物だった。
十数回魔物を殺した所で扉が開く。
中に入って来たのは男と奴隷紋を刻まれた女。
「戦え」
昨日と同じだった。
連れておられた女はそれを聞くと蒼白になった。
何の躊躇も無く私に斬り込んでくる。
速いっ!?
私は上段から振り下ろされる斬撃を後ろに飛び退いて回避する。
私は肩を薄く切られ血が流れる。
「死ね死ね死ねぇぇぇ」
狂った様に同じ言葉を繰り返し、剣を振り続ける。
私はそこに勝機を見出した。
私はバックステップを繰り返し、壁際に行き背が壁に当たった時、表情を驚いた様なものにした。
「死ねぇぇぇええぇぇ」
大上段にまで剣を振りかぶり、私は相手が踏み込む瞬間に踏み込んだ。
そんな動きが来ると予想もしていなかった彼女には私の動きは目で追う事が出来なかっただろう。
足下から剣を突き上げ、顎から剣を差し込み脳を破壊して、後頭部から剣が飛び出し頭部を串刺しにした。
「ごめんなさい。ゆっくりと寝てください」
即死した彼女には届かなかっただろうが口から零れた。
狂った場所での私の生活が始まった。
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