104 鍛練と……
本日二話目です。
寝室から出た俺は、主に武器を振るう為に使われている庭へ向かった。
最近、殆ど出番がなく〈アイテムボックス〉の肥やしになっていると言ってもいい気がする神杖槍を取り出した。
それを取り出した理由は、単純で人前で使う様に作った武器は妲己と模擬戦の時の最後の魔法で溶けて土に帰えってしまった為、現在俺の手元にはこれくらいしか武器が無いからだ。
まあ、正確には土ではないが
新しくの作っておかないとな……
軽く振って重さを確かめる。
今まで使っていた物と多少違うだろうと思い調整していたが、槍が俺の意思をくみ取った様に俺に合わせて重さを変え始めた。
…………便利だな。
それによって調整は必要なくなったので、念入りにストレッチをする。
本当はそんなレベルでは無い事は理解しているが、これについてはまだ謎が多すぎる為、詳しく考えたくないのでスルーする……
ストレッチを終えると目を瞑り〈諸事万端〉を発動させ自身に浸透させていく。
そして妲己の動きを脳裏で再生する。
全ての動きをモノに出来る気はしない。
そもそも数百年の鍛練により得られたモノをそう簡単に手に入れる事が出来る訳が無い。
だが、その一部くらいはあの初速度を最高速度へとする体の使い方なら、脳に焼き付けようとあの時〈諸事万端〉と〈平速思考〉を持って記憶している。
あれは全ての関節、全ての筋肉、筋繊維すべての細胞の生み出す運動を統合させる。
動かすのはほんの一瞬、一刹那で生み出す運動エネルギーの全てを統合する。
故に動き出す瞬間が最高速度となる。
しかも、動かしているのは駆動用だが一瞬故に動いている途中で更に次につなげることも出来る。
そして移動エネルギーを生み出す時間は平時の俺の〈諸事万端〉と〈平速思考〉をもっても察知することが出来ない程、瞬時に筋肉では無く細胞レベルの操作をする………それは現在の脳と細胞の伝達速度では不可能。
なら俺はそれを魔力で代用する。
おそらく、妲己は長期の鍛練により神経系を鍛え、それを成したんだろう。
そして身体制御の方だが、こっちも相当きつい。
筋肉は動き出しの時しか動かさないので、立つ事やバランスを取る事にさえもそられもそれを使えない。
こっちは理解できなかった。
おそらくこれも鍛練の賜物なのだろうが、これは本当に数百年単位の時間がいるだろうからこれも魔力で代用しよう。
…………結局魔力だな。
全身の力を抜き、掌に槍を魔法で固定する。
腰を落とし一番基本の構えを取る。
息を整え、突きを繰り出す。
普段目標に向かい加速して行き、その目標に到達する瞬間に達する様に体を使うが、これは踵を上げた瞬間、最高速に到達した。
それは正に零から百へ、徐々に加速して行くと思っている者なら消えたと思う程の加速。
そして突きから払いへと次の動きにつなげ様とした瞬その瞬間。
「あ!!」
掌に槍を固定魔法が急激な方向転換による勢いに負け、そのまま突き出した方向へ飛んで行く。
即座に停止の魔法を発動させ止める。
これは予想していたが相当難しいぞ………
妲己は武器を使っていなかったから、全身を使っていたのもあるのかなこれは?
もしかすると妲己が武器を持っていなかったのは、彼女の動きに耐える事が出来る出来ない問題では無く、何か武器の様なものを持った状態でこの体捌きはする事が出来ないからではないのかと考えた。
彼は今の失敗を考えるとそれがすんなりと受け入れられてしまった。
武器の固定等は後でそれ用の魔法具を作ればいいか。
しかし、彼は自分でできないのなら、出来ない事は道具を作ればいいと考えた。
取りあえず今は完全じゃないとしても少しでも動けるように練習するとしよう。
下半身と体幹周辺この動かし方で動かし、腕を今まで通り動く様に魔力を使い細胞に命令する。
全く系統の違う動きをする事が出来るのか、と聞かれれば前者の命令は細胞一つとまでは言わないが、言って一定個数につき一つの思考を使っているので寧ろ腕だけとは言えその命令系統で使わないのは大分脳への負荷の軽減になっている。
その負荷は最上級クラスの魔法を一秒に一つ作るのと同じくらいだろう。
その為彼は普段なら思考を加速させなくとも周囲百メートル圏内なら、どこに誰がいるかは無意識の内に察知してしまうが、今は自分を見に来た二人の少女の事に気が付かなかった。
動いている中、息が乱れ体中から相当な量の汗が流れている事に気付いた。
これは、やはりまだ無駄にしているものが多いから体が相当な負担がかかっているか………
魔法で体に空気の循環を促して、細胞に酸素を運ぶ。
文字通り全身の細胞を使っているので、自分でどこの細胞が足りていないかを探し出して、そこに集中的に運ぶ。
上着邪魔だな………
汗を吸い重く邪魔になった上着を脱ぎ捨てる。
乾かす事は出来るが、まだ終わりにするつもりが無くどうせまた汗をかくからと思い、何も気に留めずに脱いでしまった。
さてと、もう一頑張り。
身体に魔力を流し込み、思考を加速させていく。
リルとレティシアは食堂で朝食を食べ終え、リルが颯の朝食をレティシアが水分とタオルを持って行く事になった。
当然この二つを持って行くとなると後者の方が時間がかからない。
その為、レティシアは常備している棚からタオルを数枚持ちレモン味の炭酸水と野菜ジュースをタンブラーに入れリルよりも早く颯の元へ向かった。
リルはその後数分遅れて颯が訓練を居ている庭に到着した。
庭の入り口の所で彼女は顔を赤くしがなら両手で顔を覆っているレティシアの姿を見た。
首を傾げてレティシアの視線の先を見た(両手で覆ってはいるが、指の隙間が開いていて視線を隠せていない為)。
そこにいたのは上半身の服を脱いで、全身から吹き出ている汗を槍舞によって吹き飛ばしている颯だった。
確かにその姿は、朝日を白い髪が反射し宙を舞う大粒の汗が同じようにその光を反射している姿は、武神が演舞を舞っている様な迫力を放っている。
まったく、レティはお兄ちゃんが上半身裸で訓練しているだけで、顔を真っ赤にするなんてしょうがないね。
リルはそう思っているが、彼女も熱っぽい吐息を漏らしているので、はたから見れば二人は同じ様な印象を与えるだろう。
………ちなみに颯は、服を着ているとかなり細い。どれだけ細いかと言うと少々栄養失調気味の状態だろうか。
しかし、それは外見上の話で、筋肉は槍を使う為の全身をねじる様な動きによって圧縮されていき、しなやかかつ強靭な物が全身を覆っている。
つまり細マッチョ?と言えばいいのだろうか。
なお、リルは今までは優しいお兄ちゃんと思っていてもう少し筋肉がつかないかな、と思っていたが脱いだ姿は思ったよりもたくましかった。
さらに狼の因子としてその無駄の無い身体は、正に自分の好みの体型そのものだった。
そこから昨夜の事を思い出し、結局レティシアと同じ様に顔を覆っているが、指の隙間が大きい事も同じだった。
二人が見続けているのは颯が、体を止めて一息つく十数分後まで続いた。
最近大半が趣味に走っている気がしますね(;^ω^)
これで本当に他人が楽しめるかなと思いながらも、そこで後で拾おうかなと思っているふせんを最低限入れる様にしているので、少々お付き合いください<(_ _)>
ありがとうございました。感想待ってます。評価お願いします。




