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クラスごと勇者召喚されたみたいだが俺の職業は魔王のようです  作者: satori
第三章帝国での武術大会は面倒事になるでしょう
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097 異形との戦い

彼女がそう思ったのは、単純な事だ。


もちろん彼女は魔力を探知する事で、姿を見るまでも無くそれを感じていたが、直接見た方が分かりやすい変化が起こっている。


筋肉が不自然に膨らみ幾らか身長も伸びていて、今にも服が弾け飛びそうだ。先ほどまでは、インテリ系の線の細い男だったが、今はとてもでは無いがそんな印象を得る事は出来ない。

魔人化か?それとも鬼人化?しかし、何かがおかしい。


本来それらの変化形のスキルは、戦闘をする事に対して体を変異させて最適化をするようなものだ。つまり、それはどちらにせよ膨大な修練が必要となる。つまり、変化形のスキルを使った時の能力の上昇を使いきれないと言う事は、有り得ないのだ。

しかし、見るからにあの筋肉の膨張は不自然だ。何故なら、元の姿からかけ離れ過ぎている。変身系のスキルか称号を持っていて、体の急激な変化に対する感覚系の補正の様なものでもなければ、脳の方が体についていくことが出来ないだろう。


だが、先程よりも威圧感は段違いと言って良い………


急激に威圧感が増して行くなか、他の者が見れば相当なくらい冷静に眼前のものを見つめる。


…………考えられるのは、薬か?確かにこの不自然さの説明はつくが、本当にそんなものを作る事が出来るのか?少なくともそんなものは聞いた事が無いし、恐らく存在しなかったのだろう。この薬を作ったのは、こいつかこいつの組織にいる者となるが、こいつが自分の拠点を吹き飛ばしたことから、拠点として使っていた場所にさえ置いて置かずに、身を護らせているのかそれとも、こいつ自信がその薬を調合することが出来るのかだが………私はこいつが調合することが出来るであっていると思う。

インテリっぽいし………


彼女の予想は大体あっている。彼は利益の為に薬を作って販売しているのではなく、今使って彼の姿が急激に変化している原因のものを作る事こそを目的としていた。と言うかただの狂科学者マッドサイエンティストだ。襲撃を受けて丁度いい相手だとしても、そんな危険そうな薬を自分に躊躇無くつかる事が、紛れも無い証明となるだろう。


先程までの手こずっていた理由は、魔剣が予想を遥かに上回るレベルで優秀だったから、しかし、ここからはそれに加えておそらく単純な身体能力は負けているだろうから更なる苦戦は必至か…………


そう考えをまとめて思考を打ち切る。


すると剣をまるで振り下ろすと言うとこが、素人が見ようとも分かるくらいにあからさまに、剣を構え体を捻って行く。そん間にまるで硬質ゴムを重機を使って引き絞る様な異音がする。もちろんそれは私の既存の生物の筋肉の立てる音では無い。


そして、その異音がピタリと止まる。


来る!!


音を置き去りにし、剣からは円錐水蒸気ヴェイパー・コーンが出ている。それは超音速で動く物体の証拠の様なものではあるが、この世界においてはそんなものを出している者は強者とは言えない。例えば魔力で剣を覆えば、魔力が空気の抵抗を減衰して剣の妨害もして来ないし、更に言えば〈気〉を使う事の出来る連中では剣を振って音が鳴る何て有り得ないと言う、ただの規格外な技術と触覚で剣を空気の分子の間に滑り込ませる。しかもされに極めた者は、体の細胞同士が鳴らす摩擦の音さえもしないと言う。この状態が本来のものはなく、薬等の外的要因による能力の上昇である可能性が更に高まった。


円錐水蒸気ヴェイパー・コーンが示す軌跡と剣を振るう前の体勢から、剣が振られるコースを予測する。剣に魔力は十分に通っているオンオフが出来るかどうかは、分からないが魔力が十分な状態で剣の延長上にいるべきではないな。


故にここは前に出る。交差の瞬間に背に回る。

そして首を目掛けて、黒剣を振るおうとした瞬間に目を疑う様なものを見る事となった。


剣がまるでVの字を描く様に剣の軌道を強引に変えた。これだけならある一定のレベルに足した剣士なら殆どが出来る事だろうだが、それでは自身の背後にいる敵を斬る事なんで斬る訳が無い。しかし、こいつはまるでゴーレムが腰を回転させて、周囲を薙ぎ払う時の様に足は前方を向いているというのに、上半身は私の方をつまり完全後ろを向いている。私は下段から振るわれる剣を両手に持っている黒剣を使い、逆手持っている片方で滑らせ、もう片方の剣で打ち上げる。


死に体の体に剣を突き立てようとするが、その瞬間に〈直感〉が感じた事の無い様な死の雰囲気を私に伝えて来た。


馬鹿な!?ここからどうやって攻撃をするというのだ。


そうは思ってはいるのだが、死の回避。これに関しては〈直感〉が外れる事は、殆ど無い。それなら、それに従っておくのは損は無いだろう。


腰の筋肉から爆弾が、爆発した様な轟音が聞こえた。最初の一振りの数倍に匹敵する速度で剣が振るわれる。


重力魔法を使い重力を上方へ変換し宙へ跳ぶ。


見た目は人型である為に、人間の関節を無視する様な行動を取られると反応が遅れてしまう。今は何とかなっているがそれを続けるのは、あまり得策ではないな………、接近戦がダメなのなら、魔法でやる。


黒牢の時の様に複雑で巨大な物は、短期間では作る事は出来ないが、簡易的なものはあらかじめこの辺一帯につけて置いたマーカーから【黒糸】を使い魔法の底上げを行う。


敵対者の全方位から、黒剣と同様のものを出現させて襲い掛からせる。


簡易の物とは言え〈詠唱破棄〉や〈思考詠唱〉を持っている者は、本来の手順を踏まなくともそれと同等の威力にすることが出来る物。つまり、それを持っている者が本来の手順を踏むと威力が普通ものよりも強い物となる。それが本来の手順よりもさらに手間をかけた物をあっさりと単なる腕力と魔剣の双方を使い打ち砕いた。


うぇ…………


何それと言わんばかりの所業をやってのけられた。


くそっ、やってられないな。…………ん?


目の前にいる者の首元に黒い影が通り過ぎる。


首元から鮮血が舞った。


…………こんなんになっても血は赤いのか。


「やあ、クロ。どうしたんだい?」


乱入して来たクロに話し掛ける。


「…………ナターシャさんに聞きました」


アイツめまた何か、余計な事を吹き込んだのか。


「余計な事じゃ無い!!」


付き合いは短いが、クロが敬語を使っていなかったのは初めてだな。


「考えを読むなよ」


おどけて見せるが、無言のまま睨んでくる。無言の圧力に耐えられなくなり、手を上げて降参のポーズを取ろうとした時。


「っ」


首の血を強引に抑えながら、まだ襲い掛かって来た。


「先にコイツを殺そうか」


「………分かりました。これが終わったらちゃんと話をしてもらいますからね」




クロは難なくこの人体の構造を無視して動く、体から繰り出される攻撃に対して、余裕さえ見える程の回避を見せつけた。おそらく私と違って、こう言った異形の者と戦い慣れていると言うのもあるのだろう、基本的に魔水体スライムや磨木体と言った魔物モンスターとは、あまり戦う事を避けていたからな………


止めはしっかりと用意をする時間を取れた私の攻撃で刺した。


正直に言うと自分で苦戦していたのが、馬鹿馬鹿しくなる程に圧勝した。


「さてと、お話をしましょうか?」


「………」


私はクロのその言葉に降伏の体勢でおおじナターシャの店に向かって歩き出す。


次話で澪視点は終了です


ありがとうございました

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