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青年の視点
彼女は、僕が何か言う度に、その唇を震えさせた。
多分、怯えているのだ。
だから、怯えを解こうと、話し掛ける。
すると、彼女は怯える。
その唇を、震わせる。
僕が話せば話す程、
彼女は怯えを増長させる。
それなら。
それならいっそ、黙ってやろう。
それで、彼女の気が晴れるのなら。
口を閉ざした僕は、彼女よりも強く唇を震わせていた。
怖かった。
辛かった。
嫌われたく、なかった。
彼女に。
どれ位、無言の時を過ごしただろう。
カップルが溜め息を漏らすような美しい夕日に照らされ、僕等は、まるで心を失ったかのように無言で佇んで。
やがて太陽は沈み、濃い闇が辺りの熱を、温度を奪った頃。
僕は頬に、彼女の手の温もりを感じた。
僕は唇に、彼女の唇の震えを感じた。
これで、良いのだろうか。
僕は不安だった。
僕は、彼女に、許されたのだろうか。
本当のことは分からない。
でも、彼女の唇の震えが止まった時、僕は思った。
彼女が、正しいと思ったのなら。
僕を許してくれると言うのなら。
僕は、彼女と、ずっと傍に──共にありたい、と願ってみたい。




