捕食者VS被捕食者
睨みながら観察し、特徴を見る。切れ味の良さそうな鈍く光る爪、一切のもふもふを感じられない灰色の毛皮、開けた口から見える牙。
鑑定を使ってる余裕は無い。硬毛分のMPは残さなきゃいけないし、真正面からの削り合いをしたら吹き飛ばされる。素材は回収してるからこの場を一度離れても良い。
砂浜まで逃げてもそこで追跡が終わる確証はないしね。見通しの良い場所でむしゃむしゃされて終わるだけだ。って、飛びかかってくる!
「っぶなぃ!」
「Gauuuu……!」
地面を右に思いっきり蹴って回避する。ギリギリだけど爪が空を裂く音を間近で聞きながら、その勢いで距離を取るべく走り出す。
戦鎚が邪魔だけど投げる訳にもいかないから、邪魔にならないようにだけ気を付ける。目的地はないけどステータスを割り振る余裕だけは欲しい。
すかさずボス狼も追いかけ、木をバキバキと薙ぎ倒すも飛びかかって来たような速度は出ていない。多少は妨害になってるはず。
でも足を止めようものなら2〜3秒で詰められる程度の距離だ。このまま走り続けてたら空腹度の方が先に尽きるし、硬毛を使っても解決出来ることはない。
あ、そうだアレなら! 一瞬立ち止まってボス狼が大体5m以内に入ったらもう1つの切り札が使える。
「《我は大海の冒険者也》」
「Gauuuuu……?!」
使用MPは最低値の5。でも範囲内に入ってくれるならこっちのものだ。周囲に私の身長くらいの高さの半透明な海が広がる。
「ふふん、これなら簡単に動きは見える」
私には影響ないけど、ボス狼の動きが目に見えて遅くなった。これなら多少ダメージも通るはず。意気揚々と殴りかかろうとしたその瞬間、後ろから私を呼ぶような渋い声が聞こえた。
「おーい、そこのお前さん頭を下げておくれ!」
「ぇ? うん?」
「早くせんか! 行くぞ!」
振り向くと燃えた何かが私に向かって発射されていた。これ当たったらヤバいやつだ、全力で意識をソレに割くことでリンボーダンスのようになり、燃える何かは顔上を通過する。
「GrraaaaA?!」
移動速度低下も相まったのか、予測不可能な攻撃を受けたボス狼は顔面が爆発して大きく怯んだ。よ、よく分からないけどこれはこれでありがたい。
「後は任せたぞ!」
「は、はーい!」
そこそこの距離があるのにある程度は聞こえている声の大きさに若干圧倒されつつも、今度は私が距離を詰めて、近くの倒れた木を踏み台にして顔に一撃を喰らわせる。
「GwwaaaAhh?!」
どんな生物も顔を爆破されて鈍器で殴られたら悲鳴を上げるのは常識だね。でも、ボス狼はまだ生きていてフラつきながらも立ち向かって来る。
「ラウンド2〜、かな?」
「GaU!!!」
かなり激怒らしいけど、ここまでお膳立てしてもらって負けるのは恥ずかしいから勝つしかない。しっかりと構え直して、再度戦いの火蓋は切って落とされた。
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