初戦闘と初遭遇
「よいしょ……んしょ……」
必死に漕ぐこと数十分、ようやくぼんやりとした島影がはっきりしてきた。空腹度は半分を切り、疲れはないけど虚無感が出てきた。景色は良いんだけどね。
「何か魚でも泳いでないかな」
そう呟きながら一度手を止めて、海を見る。透き通ってるからある程度の水深までは見れる。あ、あそこに獰猛な牙が表に出てる魚が……。
「ってこっち来てる?!」
目が合うや否や、猛スピードで船に向かって泳いでくる。他にも魚が見えるけど、恐らくこっちに来たのはこの魚だけ。
「な、なめろうにしてやるから!」
不格好な戦鎚を構えながら、飛び出してくるタイミングを見計らう。あの牙ならこんな船は木っ端微塵にされそうだけど、そこは破壊不能を信じる。
どんどん近づいてきて……3……2……1、今!
「《強撃》っ!」
水面から飛び出して、私に向かって飛びついてきた瞬間に強撃をお見舞いしてやった。HPは高くないのか、魚はポリゴンの欠片となって消えて素材を幾つか水面に浮かべた。
「おっとと……船揺れるっ」
振り抜くとグラグラと揺れた。船上での戦闘は転覆の危機が多少あるのだろう。ま、私の反射神経と視力強化も相まってこれくらいなら簡単に出来る。
あ、鑑定し損ねちゃった。素材見たら分かるかな? 鑑定を使わないと出ないみたいだから、それぞれに使用して確認する。
種別:素材
名称:ピラニールの牙
説明:ピラニールから落ちた牙、まだ成長しておらず硬度は成魚には敵わないが、船に穴を開ける厄介者として知られている。
種別:食料
名称:ピラニールの潰れた身
空腹度回復量:5%
説明:打撃武器で倒された時に出来る潰れた身。淡白な味わいで、一部の漁村で人気がある。切り身と空腹度回復量は変わらないが、何かと混ぜたり焼くと回復量は増す。
この2つが今回得たもの。どこに仕舞おうと考えると、また補助AIからの補足があった。
『プレイヤーはインベントリが使用でき、一定量のアイテムを自由に収納できます。死亡時はランダムに1〜3個のアイテムをその場に落とすのでご注意ください』
「死亡しても何もないわけじゃないってことか」
とりあえず潰れた身を食べつつ、これからは急な襲撃がないかだけ警戒する。そういえば、さっきから波の音が少しづつ騒がしく聞こえるような。
音の方向へと振り向くと、いつの間にか超巨大な白鯨のようなのが私の船の10m後ろまで来ていた。
「あ、クジラさんだぁ」
「Ooooooooo……」
「……食べないでぇえええ!!」
「Oooooo!!」
即座にオールを持って全力で逃げるために漕ぎ始める。白鯨も私を視認して口を開けて呑み込もうと追いかけて来るけど、速度は何故かそこまでない。
アレは分かる、相手にしたら死ぬ奴だ。初めての死亡がクジラの餌は笑えないからとにかく全力で逃げる。鑑定をする暇もない。
「私を食べても腹の足しにならないでしょ?! あっ恐怖の状態異常で震えがっ」
「Oooooooo」
恐怖弱点がここに来て足を引っ張り身体が震えてきて、操作が覚束ないけど気合いで動かす。波と巨体によって発生した風が追い風になって速度は出てる。
船酔いにならない自信はあるから、船から落ちないようにだけ気をつけながらオールをしっかりと掴んだ。このまま行けばなんとか逃げ切れそう。
距離も僅かにだけど余裕はある。私は若干の好奇心に負けて、後ろを見て鑑定をかけたのだ。
種族:???の白???LV???
状態:アクティブ
うん、やっぱ逃げるしかない!
『おめでとうございます! 世界で初めて海の支配者級エネミーの存在を確認しました、該当するプレイヤーはステータスポイントを5ポイント獲得します!』
「何もめでたくないから!!!!」
また何か聞こえたけど、今はそんなことどうでも良い。きっと私にしか聞こえてないんだから後にして欲しい。島は気付けば後少しだから、陸までは流石に来ないだろう。
「お願い届いてっ!」
「Ooooo!」
距離は少し詰められてきてる。このまま漕ぐのは危険かもしれない。急速に迫る死をどうにか振り払いながら、漕いで漕いで漕ぎまくる。若干HPも減ってるけど気にしない。
そして……。
「っ、着いた!」
ボートが浜に乗り上げる、急いで私はボートから退避してその勢いのまま距離を取る。
「Ooooo……」
「あ、諦めた……」
そこそこ大きな波を起こしながら、流石に追って来れないのかその巨体を器用に翻し海へと帰って行った。怖かったぁ……。
『通常スキル《操船LV1》を取得する条件が揃いました、スキルポイントを消費して取得できます』
『特殊スキル《大海の冒険者》を取得しました』
ちょ、ちょっと休ませて……。
読んで頂きありがとうございます




