状況把握
「ば、バグかな? きっとそうなはず」
見渡す限りの海、木製の小型ボート、人影は皆無。波と私の声だけが聞こえる。まだ何かの間違いかもしれない。運営へ助けを呼ぼうと画面を開こうとしたその時、補助AIの声が頭の中に聞こえた。
『レアパターン発生、チュートリアルをワタメ様専用へと変更します。……完了、それでは専用チュートリアルを開始します』
「う、うん?」
『ワタメ様は本来のスタート地点から大幅に異なる地点からになります。先ずはオールで船を漕いで付近の無人島へと到着しましょう。また、スキル不足なので転覆した場合は10秒以内に元の状態に戻れないと死亡判定となり、ボートと共にランダムな海上にリスポーンします』
「私の旅もここで終わりかぁ……救済措置とかない? なさそう……」
この状況でどうしろと。とりあえずは今私が持っている物を確認するしかない。ボートを調べようとしたらまた画面が表示される。
種別:船
名称:見習いの手漕ぎ木製ボート
耐久値:∞
載積可能量:100/50
特殊効果:《破壊不能》《所有者自動追跡》
アイテム箱:有
所有者:ワタメ
説明:どんな攻撃を受けても転覆までで済む特別な木製ボート。所有者が死んでも消失することはない。
言いたいことは色々あるけど、船尾にあったアイテム箱を開くと中には幾つかのアイテムがあった。
種別:消耗品
名称:携帯非常食
特殊効果:無し
空腹度回復量:10%
説明:僅かな塩味がする携帯非常食。街で安価に購入できる。
種別:消耗品
名称:低級回復薬
特殊効果:無し
HP回復量:30
説明:苦くて安価な回復薬。専用スキルがなくても比較的容易に生産できる。
これが3個づつだ。流石の私でも今の状況に対して心許なさすぎるのは分かる。早急にどうにかしなければならない。
次に武器、服は麻っぽい服だけど特に調べられなかったので碌な効果はないのだろう。装備してる戦鎚が頼りだ。
種別:両手武器
名称:見習いの石の戦鎚
耐久値:∞
攻撃力:35
特殊効果:《破壊不能》
説明:見習い戦鎚士が持つ武器。攻撃力は低いが壊れることはない。
初期装備はこんなものなのだろう。次にスキルだけど、大体は名前の通りだ。種族スキルの弱点は、その攻撃からのダメージが2倍になったり、睡眠と恐怖はその状態異常にかかりやすくなって、効果時間が増えてしまうみたい。
全部見るのは面倒だけど、全部確認する。
スキル名:硬毛LV1
スキル種別:アクティブ
消費MP:30
CT:300秒
使用効果:全身に羊の毛を纏い、スキルLV×60秒の合間のみ物理攻撃と魔法攻撃両方に高い耐性を得る。但し、発動中は移動速度が30%低下し、火属性攻撃を受けると高確率で解除される。
スキル種別:アクティブ
スキル名:突進LV1
使用MP:15
CT:60秒
使用効果:STR+AGI依存で前方に走り、対象に突進しダメージを与える。スキルLV×1mの距離まで突進の効果を得る。
アクティブのスキルはスキル名を唱えたら発動出来ると、補助AIが説明してきた。2つとも弱くはなさそうだけど、今のMPだとすぐに尽きてしまう。
スキル種別:パッシブ
スキル名:視力強化(羊)LV1
取得効果:視力が強化され、遠くまではっきりと見えるようになる。加えて、視野角も広くなる。スキルLVが上がると効果が上昇する。
スキル種別:パッシブ
スキル名:聴力強化(羊)LV1
取得効果:聴力が強化され、僅かな物音や距離があっても聞き取りやすくなる。羊の声も聞こえるようになる。スキルLVが上がると効果が上昇する。
スキル種別:パッシブ
スキル名:打撃耐性LV1
取得効果:打撃攻撃に対する耐性を得て、ダメージが軽減される。スキルLVが上がると効果が上昇する。
この3つはスキルを持ってるだけで効果があるタイプ。別にデメリットも無さそうだから重宝していこう。でもわざわざ羊の声が聞こえるって書くのは何でかな。
スキル種別:パッシブ
スキル名:戦鎚LV1
取得効果:戦鎚を扱う際に補正がかかり、ダメージが上昇する。スキルLVが上がると効果が上昇し、アーツを取得することが出来る。
アーツ:《強撃》
アーツ名:強撃
使用MP:5
CT:15秒
使用効果:敵に通常攻撃よりも高いダメージを与える。命中した場合は低確率で敵を怯ませる。
スキル種別:アクティブ
スキル名:鑑定LV1
使用MP:5
発動効果:スキルLV依存で敵やアイテムの詳細が分かる。スキルLVが低いと分からない情報が出たり、失敗する可能性が高まる。
スキル種別:パッシブ
スキル名:HP自動回復LV1
取得効果:10秒に一度、スキルLV×1%のHPが回復する。HPが減ってない場合は効果は発動しない。
これで全部かな、多かったけどある程度は把握出来た。種族によるステータス補正は、反映されたのがステータス画面に載ってるから特に考えなくて良いみたいだ。
「ふぅ、今から漕がなくちゃいけないかぁ……」
現実で体験はしたことあるけど、私もそこまで得意な訳ではない。それでも、クラスの中で一番速かったから出来ない訳じゃないけど。
オールを両手に持ち、ボートを動かし始める。
「えーと、最寄りの無人島は……あそこかな。最寄りってなんだっけ……」
遠くに薄っすらと見えたのを頼りにひたすら漕いで行く。補助AIを若干恨みながら、この広大な海を渡るのだった。
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