プロローグ
某都心のアパートに住む17歳のJK、綿女陽はとても暇していた。体力だけはめちゃくちゃあるからひたすら掛け持ちしてバイトしてたら、全部のバイト先から有給消化を命じられてしまったからだ。
高校は夏休みの長期休暇、部活も入ってないし課題も終わらせた。だから本当にやることがない。あるのは適度に引き締まった身体とそれなりの額のお金だけ。
折角だし何か普段やらないような体験をしたい。例えば未知の場所を散策とか。あ、でもリアルストリートでファイトはもう勘弁かな……。
「暇だなぁ……なにか面白そうなこと……」
なんとなくテレビを付けると、世界初と言う触れ込みのVRMMORPG、イルテナオンラインのCMが目に入った。どうやらシュミレーションも兼ねてるらしい。
剣と魔法で戦う王道のRPG自体あまりやったことないけど、リアルな空想世界に心が惹かれた。お金は余ってるから必要な機器も揃えられる。
「今日から抽選開始なら、早くしないと」
今回の枠は、イルテナオンラインと機器のセットなら15万人のみ。まだ国内販売だけだけど、数年前からVR技術は話題だったから枠の何倍のも人が応募するだろう。
結果は2週間後、それまではお祈りと短期のバイトを……え?バ畜?ちょっと私には分からない言葉かな、うん。
…………………………
『イルテナオンラインへようこそ、案内を務めます補助AIです』
「当たっちゃった」
正直無理かなと思ってた。でも、当たったのなら楽しまなければ損だ。私は今、真っ白の空間で目の前に淡く青に光る光球とアバター制作の時間に入ってる。
サービス開始時刻は家事とかしてたら遅れたから、ちょっと遅れての参戦になる。
『アバターネームを決めてください』
「んー、ワタメで良いや」
半透明のキーボードで入力して、次に進む。こらそこ、安直とか言わない。
『ワタメ様の種族を決めてください、お悩みの場合は一度のみランダム選択もあります。ランダムの場合は表に載っていない種族が選ばれる可能性もあります』
「うーん……?」
人間、魔人、エルフ、ドワーフ、獣人、妖精その他etc……。私にとっては数が多すぎて選べない。無難なのは特に目立った弱点がなさそうな人間だけど、現実じゃありえないのも選んでみたい。
悩みすぎて頭から煙が出る前に、私はランダム選択を選んだ。
『ランダム選択ですね、了解しました』
補助AIがそう言うと、上からゆっくり小さな光球が降りてきて、それを手に取ると画面が表示された。
種族:羊獣人
種族説明:人と羊種のハーフ。頭に巻角が付いているのが特徴。体力と力と敏捷性に優れており、いざとなれば敏捷性を犠牲にして物理と一部の魔法に耐性がある羊毛を纏うことができる。火と眠気と恐怖に弱いのが玉に瑕。
初期種族スキル:《硬毛LV1》《突進LV1》《視力強化(羊)LV1》《聴力強化(羊)LV1》《打撃耐性LV1》《火属性弱点》《睡眠弱点》《恐怖弱点》
ステータス値成長補正:STR1.5倍、AGI1.2倍、HP1.2倍
『こちらは一覧には載っていない種族ですね、こちらで決定しますか?』
「はい!」
特にまた悩むこともなく、これで良いやの精神で決めると私の頭に何か付いた感覚が伝わる。多分巻角が付いたのだろう。
詳しいことはあとで確認するとして、次だ。
『アバターの見た目を決めてください。声は変更不可なのでご注意ください』
「現実と一緒は不味いから……ここをこうしてっと」
身長を165センチから170に伸ばして、髪型はロングのままで色は白に変えた。後は所々ちょっとだけ美化したりして終える。
出来ればよく幼気と言われる声も変えたかったけど、無理なものは無理なので諦めた。
『最後にメインとなる職業の選択と、通常スキルを二つお選びください』
「こっちも色々ある……」
流し目で見ても多い、これも同様に分からないけど見た目から強そうな、ハンマーで戦う戦鎚士にした。力こそ正義って誰か言ってたから間違いない。
スキルはお勧め欄というのがあったから、対象の詳細を調べられる鑑定と、HPが自動回復するスキルを選んだ。選び終えると私のステータス画面が表示される。
名前:ワタメ
種族:羊獣人LV1 職業:見習い戦鎚士LV1
HP:120/120 MP:50/50
STR:17
CON:10
AGI:17
POW:5
DEX:8
INT:8
残りステータスポイント:0
種族スキル:《硬毛LV1》《突進LV1》《視力強化(羊)LV1》《聴力強化(羊)LV1》《打撃耐性LV1》《火属性弱点》《睡眠弱点》《恐怖弱点》
職業スキル:《戦鎚LV1》
通常スキル:《鑑定LV1》《HP自動回復LV1》
残りスキルポイント:0
『それぞれのポイントは種族レベルが上がると2ポイントづつ得られます。職業レベルは一定のレベルでステータスの上昇や新たなスキルが自動的に取得出来ます。スキルポイントは新たなスキルを取得する時に使い、スキルのレベルを上げるには該当するスキルを使い続けると経験値が貯まります』
「なるほどなるほど……」
大体は理解した。これで今できることは終わったのだろう。
『このゲームには空腹度があり、0になるとステータスダウンや死亡もあり得るのでご注意をそれでは、スタート地点へと転送します。良き旅を、ワタメ様』
「ありがとう、またね!」
気分が上がるのを感じつつ、光に包まれた私は……次の瞬間視界に青空が広がっていた。体を起こして周りを見渡すとそこは……。
「海ぃ……?」
私の遭難生活1日目が始まったのだった。
読んで頂きありがとうございます。




