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「それで、ラウール。お前は何がほしい?」


探るような視線。

この部屋に入ったときからその姿勢を崩さない。

ひかると言い合ってるときは見事にひかるを射るような目で見て外さないが。


「どういう意味だ」

「ふっかはちょっと黙ってて。本人の口から聞きたいんだ」

「おい」

「何がほしい、ラウール」


「え、おれ…」


能力が目覚める前に殺すと言っていた。

王子にとってラウールはその対象なんだろう。

ラウールの望み次第ではその言葉を実行するつもりか?

そんな事、俺が許さない。


「おれは、べつに…」


向けられた視線に怯え、目を泳がす。

じっと自分に向けられた瞳が怖いんだろう、下を向き身体が震え始めた。


「なにも…」

「何も欲しくない?ほんとうに?」

「っ!」


ぎゅっと目を瞑る。

白くなるまで握りしめた拳に、隣に座る佐久間がそっと手を乗せた。


「だーいじょうぶだって、あのおっさんあー見えてこの国の王子だから。金持ってんぞー?ほしいもんあったら言っといた方がいいぞー?」

「おっさんとは失礼だな。お前と同い年だぞ」

「そうだっけ?誰かさんにこき使われてこの国あんま居ねーから忘れてたわ、悪い悪い」

「誰だろうな、悪いやつがいるもんだ」

「だよなー」


昔から、佐久間には場の空気を変える何かがあった。

佐久間が口を開くだけで凍っていた空気は暖かくなり、白熱していた場を冷まさせる。

実際、この半日でラウールも佐久間になついているように見える。


「無いのか?欲しいもの」

「…」


小さく頷くラウールに、ため息。


「控えめだな」


座っていた椅子から立ち上がり、そのまま近づこうとする身体を止める。


「何をするつもりだ」

「話をしたいだけだよ」

「何の話だって聞いてる」

「心配するな、ふっか。気が変わった」


気が、変わった?


前に立ち塞がった俺の肩をポンポンと。

叩きながらこっちに向けた目には、ここに来たときに見せたような意はない。

そして俺の脇を通りすぎ、佐久間と並び座るラウールの足元に膝をついた。


「好きなものは?」

「え…」

「食べ物でも、遊び道具でもいい。好きなものは何だ?」

「えっと…」

「なければこっちで勝手に選ばせてもらうがそれで良いか?」

「いいんじゃね?まだ分かんないもんなー?」

「え、あの…」

「とりあえず服だな。こんな貧乏くさいものじゃなくお前に似合うものを買ってやろう。あとあの家では狭くないか?もっと広い家を用意しようか」

「お、いいじゃんいいじゃん。ついでに俺の部屋も用意してよ、ラウールの隣の部屋がいい!毎日遊べるぞー!」


おい。


「そうだ、お前に家庭教師をつけてやろう。しっかり学んでふっかを助けてやれ」

「ふっかバカだからな」

「お前よりはマシだけどな」

「ひでーな!」

「あとは、…細いな。しっかり食べろ。そうだ、今日は肉にしようか。肉は好きか?」

「好き!」

「お前には聞いてない」

「ラウールも好きだよなー?肉」


おいおい。


「これから色んなものを食べて色んな事を学べばいい。それで欲しいものが出来たときは俺に言え。何でも買ってやる。お前が望むものは全て用意してやる。気にするな、金ならある」

「さすが王子だな!言うことが違うわ!俺も言ってみてー!」

「分かったな?」


つまり。

気が変わったってのはあれか。


「うん」


ビクつきながらも返した姿に満足したように頷く王子。


気にいったんだな、要するに。


「おい、護衛。いつまで突っ立ってる」

「何だ」

「お前に仕事を与えてやろう。今すぐ厨房に行って夕食のメニューを肉に変えてこい。食べ慣れてないかもしれないから、胃に優しい柔らかい肉だぞ?間違ってもお前らが食べるような“質より量”じゃないものを用意するように伝えろ」

「分かった」


任務以外でひかるが王子の言うことを聞くのは初めて見るかもしれない。

しかもこんなあっさりと。


「気にいった菓子があったら持って帰るか?いや、それよりも明日も来て食べればいいか」

「それより家のこと先にしてくれよ。俺とラウールはベッドがあるけどふっかをいつまでもソファーで寝かせんの悪いじゃん」

「ふっかは別に床にでも転がせとけばいいだろ。あぁでもラウールが気を使うかもしれないな」

「そうそう、ラウール可愛いからなー」

「そうだな。じゃあふっか、家を建て直すように伝えて来い」

「何で俺が言うんだよ!言えるわけねえだろ!」


ほんとに大丈夫なのか、この国。


てか何で俺がソファー確定なんだよ。





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