自分を信じるな
朝七時ごろ、桂木町の廃ビルの前に刑事の山田空晴は立っていた。
警察手帳を出してその廃ビルに入る。
廃ビルは手前にホールがあり、奥に部屋がある構造だった。ホールには数十人の警察がいた。
その中に見覚えのある刑事の方に向かう。
「空晴、やっと来たか」と刑事の半田孝彦は言った。
半田孝彦は私と同じくらいに桂木警察署に赴任して来たやつだ。あまり彼のことが好きではない。
「呼び出されたからな、ところでお前の横にいる奴は誰だ?」
「どうも、初めまして。最近、桂木警察署に赴任してきた、中田浩介と言います。」とそいつは言った。
「よろしく」と軽く返した。
俺の部下で、一緒に行動することになったと、半田は言った。
「で、被害者は?」と尋ねた。
被害者は奥の部屋にいると半田が答えたので、奥の部屋に3人で移動した。
鑑識が数人部屋にいて、そのうち1人がこちらに気が付き、遺体について説明を始めた。
「名前は葉目必太、年齢は22歳、男、免許証を持っていたのですぐ身元が割れました。死因は体中を20箇所刺されたことによる、出血死、死亡時刻は、昨日の夜10時から12時、道路から、血が垂れているところが点々とある。そして、部屋の真ん中に大きな血の跡があり、財布は持っていました。」と言った。
見たところスーツ姿で身なりをきちんと整えている普通のサラリーマンだった。
そして顔を見たときびっくりした。見たことがあるような気がしたからだ。でもどこで会ったか思い出せない。
「あとひとつ、壁に被害者の血で、自分を信じるなと書いてあります。犯人が書いたものと思われます。」
壁を見ると、部屋の奥の壁に大きく「自分を信じるな」と書かれていた。
「財布を持っていて、20箇所刺されているところを見ると、怨恨の線がありそうですね。」と半田に言った。
「その線だな」と答えた。
その日のうちに捜査本部が開かれ、情報を整理した。
それによると、第一発見者は、ふざけて入って来た、若い連中らしく、事件の関係性はなかった。
被害者は昨日の夜10時から12時は仕事の帰りだったらしく、その帰りの途中、廃ビルの前の道路で刺され、廃ビルの部屋に連れていき、数十箇所刺したというのが、捜査本部の意向だった。怨恨の線が、強いとして、葉目の身辺を洗うことにした。中田と半田は、葉目の家族に会いに行き、私は周辺の聞き込みとなった。
そして次の日、第二の事件が起きた。
夜11時、次の事件現場は被害者宅だった。
いつも通り、半田と合流し、被害者宅に入った。
鑑識が「名前は斜月春明、年齢は22歳、男、第一発見者が妻だったので、すぐ身元が割れました。
死因は昨日の事件と同じく、20箇所刺されたことによる、出血死、刃物は昨日と同じものだと思われます。死亡時刻は、夜8時から、9時、家のものは盗まれていません。壁には昨日と同じ通り文字が書かれています。」
壁を見ると、「私は誰」と書かれていた。
被害者の身なりは家でゆっくり休んでいたと思われるパジャマだった。私はやっぱり、昨日の事件と同じ通り見たことがある顔だった。しかし、やはりどこで会ったのか覚えていない。
半田は「昨日と同じ犯人だろうな」と言った。それにうなずいた。
被害者の奥さんに事情聴取をすることになった。
「夜8時から9時まで何をしていましたか」と聞くと、「会社から帰っていました。そして、夜10時に帰ってくると、夫が倒れてました。」と答えた。
次の日の朝、捜査本部が開かれた。
それによると、妻にはアリバイがあった。防犯カメラに帰っている様子が写っていたのだ。
そして、一昨日の事件と同じことが分かり、怨恨として、捜査するとともに、2人の被害者に共通点がないか調べることになった。
捜査本部は、犯人が同じなので、2つの事件は合同になった。
私は家に帰り、2つの事件を考えてみた。メッセージを考えてみた、2つのメッセージいわく、犯人は悩んでいるようだった。しかし、それだけじゃ犯人像は分からない。しかも、自分が見たことがある気がするというのが、さらに悩ませた。
私は小学校、中学校、高校時代の記憶がない。その時に会ったのかもしれない。
俺は中田だ。半田先輩につれられて初めて殺人現場に行った。ホールで怖そうな山田先輩に出会った。
殺人現場の異様な雰囲気に押されそうになった。初めて見る遺体、ほんとうに怖かった。
そして静かに鑑識の言うことを聞いて、半田先輩につれられて葉目の家族に、会いに行く事になった。
そこでは、葉目は嫌われていることが分かった。家族は殺されたことを喜んでいたからだ。葉目は、
毎月1日になると、たくさんのお金を要求してきて、困っていたらしい。先輩はその家族を怪しんでいるようだった。そして、全員にアリバイを聞き、一つ一つチェックして、全員にアリバイがあることが分かった。半田先輩は困った顔で収穫なしかと、ため息をした。半田先輩と俺は捜査本部に報告して、家に帰った。夜10時半頃、また事件が起こったと、半田先輩から、電話で告げられた。現場につき、半田先輩と山田先輩に合流した。犯人は同じということを聞き、今日はもう遅いから取り調べをして解散ということになった。次の日同じように家族に聞きに行った。斜月は、母親しかおらず、死んだことにはまるで
興味がない様子だった。いちおうアリバイを聞き、アリバイがあることを確認した。半田先輩は言った、
「なんか、今回の被害者の家族、あまりいいやつがいないな。」俺はその言葉に激しく同意した。
俺はその言葉が気になり、半田先輩にバレないように1人で行動した。まず初めにその2人の生い立ちに
調べることにした。すると、その2人が同じ小学校ということが分かった。
そして、その2人の先生に話を聞けることになった。それは2つの事件から1日後の夜だった。
そして次の日、聞きに行こうと準備をしていると、半田先輩から電話がかかってきた。
また、同じ犯人が起こした事件だった。聞きに行こうとしていた先生に明日にしてもらい、事件現場に向かった。
朝9時、公園が事件現場だった。
半田先輩と山田先輩と合流前の年齢は22歳、男、前の事件と同じく、20箇所刺されたことによる、
出血死、刃物は前の事件と同じ、死亡時刻は、昨日の夜11時から0時、身元は免許証で分かりました。第一発見者は、ここの公園のホームレスです。また壁にメッセージが。」
壁を見ると、「復讐は果たした」と書いてありました。半田先輩と山田先輩はホームレスに聞きに行き、俺もついていくことにしました。
ホームレスはその時間寝ていたので、分からないと言いました。半田先輩は、「犯人である可能性は低いな」と言いました。半田先輩は、自分だけ、家族のところに行ってくると言い、お前は事件が続いて大変だから休めとも言いました。俺は、休んで先生のところに行こうと思い、家に戻りました。
そして、話を聞きに行く日、俺はバスに乗り、被害者がいた馬風学校に行きました。
俺は2人の担任だった人に会いました。担任は言いました。「昨日の事件の被害者も同じ小学校だった。3人は同じクラスだった」俺は、やっぱりなと思いました。俺は、そのクラスで何かありましたかと聞きました。「いじめがありました」俺はそれを聞き、それだと確信し、いじめられていた人の名前は分かりますかと聞きました。すると、担任は、「山田空晴」と答えました。俺は驚き、そこから言葉が出ずに
帰りました。帰り道、顔がよく見えなかったけど、見たことがある人がその小学校に入って行きました。
私は、朝起きても事件のことを考えていた。私は、会ったことがあるのが、なぜだろうと考えていた。
私は、自分の過去に何かあると考えた。自分の小学校を自分の親に聞いた。言いたくなさそうにしていたけれど、教えてくれた。明日、担任に会ってみようと思う。でもそれは、あさってになった。事件が起きたからだ。私は、事件をこなして、それよりも過去を知れることを内心わくわくしていた。
そして、小学校に行き、私がいじめられていたことを知り、警察が来たことも知った。
いじめられていたことを、思い出さないように、記憶喪失していたことを知った。今まで起こした3つの
事件は私が犯人なことに気づいたんだ。私は喪失感が体中を駆け巡った。私は自分の知らない人格で
人を殺していたんだ。あのメッセージは、自分の人格の気づいてというメッセージだったんだ。
そう考えているうちに、家のチャイムがなった。自分はそれが警察ということがなんとなく分かった。
私は、自分がやったと正直に言おうと思い、ドアを開けた。
私は学校に着くといつも、葉目、斜月、都目、にいじめられていた。それが、高校まで続いた。
本当につらかった、でも休むと怒られるから渋々行っていた。高校3年の最後の日、全員違う大学に
行くことになって、いじめは終わった。そして、私は小学生、中学生、高校生の記憶を表に出ない人格に
封じ込めた。でも、ダメだった。裏の人格が復讐の心を持った。そして、表の人格に気づかれず、殺人をした。だけど、本当は殺人を表の人格に助けてほしかった。だから、事件現場にメッセージを残した。
表の人格に気づかれるように。