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花嫁は白亜城の生贄  作者: 久世 真緒
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白馬との出会い。そして乗馬へ

 翌朝、ジュリオが言っていた白馬がどんな白馬か知るため、私はさっそく馬小屋を訪れた。馬は4頭いて、そのうちの2頭の馬は鹿毛の馬で、残りは白馬と黒馬だった。遠巻きに馬を見ていた私に厩番の老人が声をかけてくれた。


「おや、こんな場所に令嬢の方がいらっしゃるとは」


「こんにちは。お仕事の邪魔をしてしまったかしら?白馬がいると聞いて、ぜひ見てみたいと思って来たのだけれど…」


「いえいえ、邪魔だなんてとんでもない!馬もご令嬢に遊びに来ていただいた方がうれしいですよ。どうぞこちらです」


 気さくな厩番に案内してもらい、白馬の近くまで近づかせてもらった。白馬の横に立つと、つぶらな瞳と目が合った。恐る恐る触れると非常に大人しく、思ったよりも嫌がらないため、触らせてもらえてうれしくなった。

 見事な毛並みで、先日見た絵画の馬にそっくりだ。

 厩番からブラシを貸してもらい、いつもどんな風にお世話しているのかを聞いた後、「今度その背中に乗らせてね」と話しかけながら白馬にブラッシングした。

 それから乗馬の日まで白馬に会いに、馬小屋に通い続けた。




 乗馬の当日。ブリジットは雨が降ることを祈っていたようだが、祈りに反して快晴だった。朝食の後、ギャレット伯爵と花嫁候補全員で馬小屋に移動したが、私はだれよりも先んじて白馬を確保し、すぐに乗った。急いで白馬を確保したのは、ジュリオが勧めていた馬ということもあるけれど、すばらしいこの馬に乗ってみたいという気持ちも強くなっていたからだった。

 急いで白馬に乗った私に対し、ミッシェルも馬を選ぼうとしていたが、そこで伯爵が思わぬことを告げた。


「ミッシェル。顔を隠したまま乗馬するのかい?乗馬中は危ないじゃないか」


「それでしたら、伯爵の後ろをついていくときに隠れて外しますわ」


「そろそろ顔を見せてくれないか、ミッシェル。やはり君の顔も見ておかないと花嫁にするかの判断ができないい」


 伯爵の言うこともわからなくはないが、私だったら火傷をした顔を見せることはためらうし、このタイミングで見せるとは思わなかったはずだ。覚悟を決めて、その後見せられるかどうか…

 少し性急過ぎる気がして、私は伯爵に抗議しようとした。


「伯爵、それはミッシェルの決心が固まった後でも…」


「いいのよ、アン。お見せしますわ、伯爵」


 ミッシェルがゆっくりと帽子を外し、素顔があらわになる。

 目鼻立ちが整った顔。湖畔を思わせる深い青緑の瞳。だが目もとに赤い火傷のあとがあり、痛々しさを感じさせる。

 ミッシェルは想像よりも落ち着き払った表情をしており、堂々としていた。

 伯爵が言葉を発するよりも先に、ミッシェルは鹿毛の馬を連れ出し、その背に乗った。


「乗馬は久しぶりですから、先に行って馴らしてきますわ」


 ミッシェルのことが気になって、私はその背中を追いかけた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。もしよろしければ、励みになりますので感想やブックマークをお願いします。

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