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花嫁は白亜城の生贄  作者: 久世 真緒
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たった一人の家族

 新居となる城は、近くにある透き通った湖畔にも負けないほどに荘厳な白亜の城であり、その美しさに囚われた来訪者をことごとく吞み込んでしまいそうだった。

 本来であればこの私、アンジェリーナ・サンチェスも、この美しい城に住めることになったことを喜ぶべきなのだろう。けれど、私には喜べない理由がある。この城は、私から姉を奪ったのだから…



 時は遡ること1年前。唯一の家族であるメアリ姉様は、ギャレット・キャンベル伯爵に嫁ぐことが決まった。伯爵は裕福であり、『美しいメアリ嬢と結婚できるのであれば、いくらでもお金を積む』、と叔母夫婦に話したものだから、叔母夫婦は喜んでメアリ姉様を差し出した。

 私とメアリ姉様は幼くして両親を亡くしており、叔母夫婦の下で肩身の狭い思いをしていた。逆らうことなどできやしない。

 しかし、メアリ姉様が7番目の花嫁になると聞いたときには、不安が隠せなかった。私の大切な姉様は大切にしてもらえるのだろうか、6人もの花嫁だった人は、なぜいなくなってしまったのだろうか…


「アン、心配しないでちょうだい。どんな事があっても頑張ってみせるわ」

「姉様、それでも私は心配なのです!姉様に何かあったら私は…」


 うつむく私に、メアリ姉様はそっと手を握り、ペンダントを渡してくれた。


「姉様、このペンダントはお母様の形見では?受け取れないわ!」

「このペンダントを私だと思ってほしいのよ。いつだって貴女の傍にいるわ」


 大粒の雫のようにあしらわれたアクアマリンのペンダントは、小さい頃からの私の憧れであった。けれど、まさかこんなタイミングでもらうことになるとは、夢にも思わなかった。


「それなら、私のお気に入りの金色のバラのペンダントを持って行って。必ず、手紙を書いてね」

「ええ、もちろんよ。遊びに来てね」


 涙ぐみながら、メアリ姉様はぎゅっと私を抱きしめた。今まで母の代わりに気丈に頑張ってきた姉様だ、きっと伯爵も好きになる。そう信じて、姉様を送り出した。

 それなのに。

 華やかな結婚式を終えてから1か月後、連絡が途絶え、私は待ち続けた。

 そして半年過ぎたころに、伯爵から『メアリが出て行ってしまった』という連絡が届いた…


お読みいただき、ありがとうございました。

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