ツヒの号泣
「さあさキタキターー! いでよ三番手のデヨ!とノリノリで乗り出す!
ブナのようにガンガン踏んでくぞ インディアンみたいにつかない嘘
You the Rockみたいな激しさ K DUB SHINEのような厳しさ
両方持って天下取りたい このサイファーのメンツはおめでたい!」
「俺がエヤ、ええやん、なんでもええやん みたいにならない流れのトリを描く
ブナの危なさに続く活躍 超ヤバイ評価出し、そう破壊
して築くスクラップ&ビルド 半分は嘘くらいたっぷり嘘
さあ、ある種の真実を語ろうぜ HEYYO!!ブラザー戦おうぜ」
サイファー用のトラックが止まると、なぜかツヒが号泣している。
「うぐっ、えぐっ、皆さんとサイファーできて感激です。ブナさん筆頭にかっこよすぎます」
なんで情緒不安定なんだよ。
「いやーでもツヒ君うまくね?多分俺よりうまいよ」
デヨがさらっと褒めた。
「まあさっきのはデヨもよかったよ」
それに対してエヤがフォローしている。
俺の次にエヤがうまくて、まあツヒもよかったな。
押韻がすべてじゃないからデヨが下手ということもないと思うが。
「じゃあ今夜はクラブに集合だな」
「一生ついていきます、ブナさん!」
「いやごめんこれははっきり言っておくけれどツヒくんそのキャラでいいの?」
なるべく定めてくれ。
「今夜もやってきた先攻、ツヒ! 感激の涙の洪水
から復帰して今度こそ倒すブナ この引き金を引いて撃つさ
最初から最後まで隙がない この色男には罪はない
Zeebraばりの一点突破、ヒップホッパーは やっぱり掴む勝利のサーガ」
「初体験の高校生の高揚くらいヤバイ始まる後攻 まあ情緒が安定したならどうぞ
挑戦する権利くらいは与えてやるよ その銃弾を構えて待つと
お前の攻撃は大振り隙だらけ 色男かよくわからんがとっくに詰みだがね
名古屋弁出るくらいの余裕で ツヒみたいな弱小ラッパーつまり多くね」
「ぐぬぬ」
「おっ、また今日も勝ちだな」
ツヒが転校してきてから気づくと一か月経っていた。
謎にラップバトルを繰り返してきた僕らは、みんな少しずつ上達していた。