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その敗因
よくよく考えたら、至極当然なこと。
誰もが誰かの大事な人で、その価値は相対的であるコト。
僕はヒロコさんが観客席で応援している今日、ツヒをディスることができなかった。
そうなんですね、オムさん。
あなたは苦いものでも食べたように渋い顔をしている。
僕の敗因は――この繊細さ。
ツヒはディスられても平気だ。そして、ヒロコさんも気にしないだろう。
エヤとデヨはもともと友達だ。僕は彼らを認めている。
むしろツヒは格下くらいに思っている。
でも、だから――
僕はそうやって、僕の後に続くツヒのことを、そして彼を大事にしたい人たちの、喜ぶ姿を見てしまいたくなってしまったんだ。
トラックが鳴り響く中、マイクを僕が持ったまま話す。
「ツヒ、俺の負けだ」
「え? ブナさん?」
「だから次のデヨに全力で挑め、俺の代わりに」
「え? そんな」
「今までありがとう」
「わかりました、やるだけやってみます」
ツヒは嘘のように、泣きじゃくって、デヨに大敗した。