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ヒロコの想い

 あの言葉が、脳裏から離れなかった。

「うん、まあ、あるだろうけど、きっとブナ君を倒すのは」

「倒すのは?」

「ツヒ君だろうね」

「そういうこともあるかもしれないですね」


 でも、そんなこともなく、クリスマスの季節になった。

 なんとなく繫華街を歩く人々が浮足立っていて、楽しいシーズン。


「ブナくん遅いよー23秒の遅刻!さ、今日は何してもらおうかなぁ?」

「あとちょっとが間に合わなくてごめんね」

「そ、そんなつもりじゃないんだから!ごめんなさいブナくん」

 アイコとの待ち合わせに23秒遅刻した。

「まあ遅刻と言えば遅刻だからね」

 改めてそう言う。

「あ、じゃあ、それで、って訳じゃないんだけど」

「ん? うん」

「ツヒ君って呼べる?」

「いいよ、すぐ来てくれると思う。でもなんで?」

「ツヒ君に会いたいって子がいるんだ」

「へー、ちょっと待ってね」


 ラインでツヒに「すぐ栄に来れる?」とメッセージを送る。

 アイコと僕を近くの壁辺りから凝視している女子高生がいる。


「あ、そこにいる子?」

「そうそう、名前はヒロコって言うの。いい子だから優しくしてあげて」

「まあ、アイコがそう言うならいいけど」


 あ、こっち来て話しかけてきた。


「わぁ、ブナさん、本物ですね!すごくかっこいいです!」

「ありがとうございます」

 アイコが不機嫌になった。

「んっ、やめてよねヒロコ」

「ご、ごごごめん、アイコそんなつもりなくて」

 そういう感じのパワーバランスなんだね。


 スマホを確認すると「すぐ行きます」とツヒから返信がきていた。


 ベンチに三人で座る。アイコとヒロコが何気ない話をしており、僕は適当に聞き流していると、ツヒが到着した。

 いつものノリで話しかける。


「おっ、ブラザー」

「ブナさん急に呼び出すなんて珍しいですね、何かあったんですか?」

 まあ、野暮だから聞かなかったけど。

「ここにいるヒロコさんから多分お話が」

「ブナくんの気遣いって本当に大好き!」

 そう言ったアイコに間髪入れず、ヒロコさんが言う。


「あああっ!ツヒさん!大好きなんです!ツヒさんのこと大好きなんです!お願いです、付き合ってください!」


 当人であるツヒは固まっている。

 僕とアイコはまあ外野なんで平然としている。


「えっ、えっ? ドッキリかなんかっすか? やめてくださいよブナさん! 趣味悪いっすよ」

「いや別にそんなことない」

「ええ、アイコさん?」

「いや、嘘じゃないみたいよ。なんでか聞いてみなよ」


「な、なんで僕なんか好きなんですか?」

「私って最初はブナさんが好きだったんです。でも、アイコさんが付き合っているっていう話を聞いてあー失恋した、ってなってたんですね。でもたまに、ブナさんとツヒさんのラップバトルを聞いてて、うん、ツヒさんっていつも勝てないんです」

「まあ、そうっすねぇ」

「でも、ツヒさんって、諦めないんです。負けても目をキラキラさせて、明日は、ダメならその次はって、とっても強いブナさんに向かっていくんです。私、気づいたらツヒさんの方を応援していたんです。がんばって、負けてもいいから、もっとがんばって、って」

 あっ、ヒロコさん泣いちゃった。


 周りの視線はなんかツヒが泣かせたみたいになっている。

「あ、ヒロコさん、すみませんなんか、ブナさん! 俺どうすれば」

 アイコの目を見ながら言う。

「まあ、付き合って大事にしてあげるしかないんじゃないかなぁ」

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