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⑹『地獄の宿』
⑹『地獄の宿』
㈠
地獄、地獄、というけれど、何が地獄何だろう。現世のほうが、パワハラなどで、随分地獄だったよ。芥川龍之介の言葉にあったな、「人生は地獄よりも地獄的である。」、だったかな。無論、逃避じゃない、俺は確かに地獄に落ちたんだ。
㈡
ただ、堕ちた、でないところが、自分としては、随分と詩的にしたつもりなんだよ、落ちた、ってところだ。現象なんだよ、云わば、人間は毎日、天国と地獄を行き来していると、思ったこともあった。俺の場合は、落ちた、で充分さ、何を言ってるか、自分でも良く分からないんだ。
㈢
事実上、地獄の宿は、最高さ。最高存在の状態で居られる。地獄の宿の民は、みな菩薩だね。だいたいが、罪を犯してきた訳じゃない。自ら、現世の地獄を嫌がって、落ちて来たということだから、何とも平和だよ、昨日も、今日も、明日も。