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⑴『地獄の宿』

⑴『地獄の宿』



俺は何年もの、いや、何十年もの間に、金という金を、失った。であるからして、天国に居る訳ではない。しかし、この金がなくても生きていられる状況、とぃうのは、実に不思議だが、他者から見たら、天国に見える様だ。



何とも不思議な話だが、俺は、昼間の食事を、おにぎりとお茶で、充分に満足出来るのである。若い頃は、寿司だのステーキだのが、魅力的だったし、今でも魅力的絵でないといえば嘘になるが、全然、おにぎりとお茶の毎日で、生きていられる。



ここは天国だろう。しかし、駅から少し離れた、ベンチのある場所で、スマホを見ながら、おにぎりとお茶で満足している俺を、人々は地獄の宿に住む、ホームレスかなにかの様に、見える様だ。何とも、変わった話なのである。

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