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かみさまなんてことを  作者: あんぜ
第三部

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第23話 謁見の間

 魔王――ゲームなんかでは十分な実力を付けた勇者が万全の態勢で挑む相手。それが十分な実力もなく、万全でもない状態で最初の町に現れたらそれはもう詰んでる状態だろう。


 俺たちはそこまで悪くもなかった。勇者は実力そこそこだがふたりも居るし、その一行は一流と言えた。ハンデは大きかったが、勝てないわけでは無かったし、詰んでるわけでもなかった。要するに、なんのことはない、俺たちは魔王に勝ったのだ。



 ◇◇◇◇◇



 目覚めると懐かしい部屋に居た。頭にぐるぐる巻いていた包帯はなく、背中の痛みもない。体を起こす。はらりと金色の髪が顔にかかる。


「そうか……逃げられてしまったのか」


「そんなわけないでしょ」


 声のした方を見ると、赤髪の少女が部屋の入口から覗いていた。


「逃がすわけないよ。どれだけ苦労したと思ってるの」


「ルシャは? あの後ルシャは?」


「大丈夫。ルシャは最初から囮になるつもりだったんだって」


「えっ、そんな危ないことを!」


「そう言われると思ったから、ルシャとキリカとリーメが秘密にしてたって」


「アリアは?」


「あたしはユーキに表情を読まれやすいからダメだって……」


「俺こそアリアに表情読まれやすいって思ってたのにお互い様なのか……」


「それでね、姿を隠したキリカがその――」


「ん?」


「――ユーキの両足を切り飛ばしたんだって……」


「あー。キリカは容赦ないね」


 アリアに微笑みかけた。


「俺は何日眠ってたの?」


「え? まだ今朝の事だよ。ルシャが全部治したし、あたしも協力したからそんな酷くないでしょ?」


「うん、快適」


「ただね、新月が来てたらルシャでも危なかったかもって。すごく強い毒だって聞いた」


 だろうなあ。騎士団長の体が動かなくなったもんなあ。


「よかった。みんな無事なんだね」


 アリアは平気そうな顔をしているが、目の周りが少し赤い。泣いたんだと思う。それにずっと待ってたんだろうなとは思った。


「あれっ、じゃあこの体は?」


「ハルカさんがね、こういうことはもっと大勢の前でやるべきだって」


「また訳のわからんことを……」


「そうでもないかな。実際、ユーキには貴族を襲った疑いもあるし」


「晴らそうっていうの? ハルカは?」


「大賢者様と国王陛下に会いに行ってる。ルシャとキリカも」


「うわ……行動力あるな、北の聖女様は」


 ただ、頼りになるなあとも思った。妹みたいって思ってたんだが、あっちからしたら俺が弟みたいなもんだと思われていたんだろうか。



 ◇◇◇◇◇



 夕方になるとハルカたちが帰ってきた。俺はもう元通りだったんだが、アリアはまだなんというか余所余所しいというか、あまり近づいてこないもんだから、ちょっともやもやしていた。


「明後日になりました!」


「まだそんなにかよ……」


「こっちには急ぎでも、あっちにはそこまで急ぎじゃないんだよ」


「まじか……」


「その代わり、人を多めに呼べます!」


「そこまで多くなくていいから……」


「重要です!」


 まあ、ハルカが重要だと言うなら重要なんだろう。誰にとってかはわからないが。そして騎士団長、俺の元の体がどうしてるのか聞いたところ、大賢者様のところで動けなくされているとのこと。


 あでも明後日? 新月の日か。これきっとルシャが頑張ったんだな……。ルシャが満足げだった。


 あの後、騎士団長はアリアが器用に骨以外を繋いで、動けないまま大賢者様のところへ連れて行って今度は魔法で文字通り体を動けなくされたそうだ。その時点でルシャが回復させたそうだから、死ぬ心配は無いらしい。



 ◇◇◇◇◇



 それから俺は騎士団長の体のままで二日間を過ごした。


 キリカはいつもと態度を変えないが、出くわすと少し体をこわばらせるので、完全に安心しているわけではないだろう。ルシャは逆に触れてこようとするので、押し留めるのに苦労する。リーメはもう興味を無くしたのか、触れてくることはなくなった。アリアは……結局、余所余所しくて少し機嫌が悪かった……。


 ハルとアオはというと、ハルの呪いは未だ解いてもらえていなかった。こちらもハルカの意向で先延ばしだ。アオが文句を言っていたらしいが、重要だからと我慢してもらっているらしい。アオの方は怪我は大したことなく、呪いも受けていなかった。


 そしてヘイゼル。騎士団長に斬られて倒れたが、ルシャに癒してもらったそうだ。命が無事でよかったが、彼女にはつらい思いをさせてしまった。今は孤児院に居る。



 ◇◇◇◇◇



 当日、俺たち一行は孤児院から迎えの三台の馬車に乗って大賢者様の邸宅へ向かった。大賢者様はシーアさんを伴い、そして騎士団長はというと、魔法で石のように動けなくさせられたまま、大賢者様が出した光る円盤に載せて運ばれ、城へ向かった。


 城へ向かう長い廊下の途中、俺は謁見の間に入らず、ヘイゼルと共に控えているように指示された。また、ハルカと従者さんは直接城に行ったようで既に別行動していた。



 ◇◇◇◇◇



 謁見の間では既にアリアたちとハルたちが国王への挨拶を済ませ、傍に控えていた。大賢者様、大臣が国王の傍についている――のだが、なんと国王陛下の隣にはハルカが座っていた。えっ、いや、何やってんの!? お前そんな偉いの!?!?


 ヘイゼルに聞くと、他国の聖女様ということで王城では国賓としての扱いを受けるらしい。しかも彼女は賢者としても高名とかで、あのくらいの扱いは想定内だとか。


「まじか……」


 俺だったらビビッてあんな場所には三分とて居られない。しかも普通に聖女として振舞っている。コミュ力お化けすぎんだろハルカ……。



 ハルカはまず、今回の急な集まりについて国王と貴族たちに礼を述べた。また、王都の繁栄ぶりと人々の豊かさを褒めたたえた。北の国はまだ王国との取引を始めたばかりで、商人たちの便宜をぜひ図ってもらえるようにと頼んでいる。実際、彼女のこういう気遣いが商人ギルドの信用に繋がっているのだろう。


 ただ――と、彼女は王都で貴族の襲撃があったと聞いたと悲しそうに話した。すると、聞いても居ないのに名乗りを上げ、自らの身に起こったこととその危機的窮状を訴える男がひとり。ドバル家の公子、ヘナスであった。ヘイゼルから聞いてはいたものの、エイリュースとはずいぶん印象が違う、優男だった。


 ご安心ください――ハルカは続けた。勇者様たちと《陽光の泉》の皆さんのお力添えで、その襲撃者を捕まえたと。


「お、おおお、ならば即刻処刑を!」


 ヘナスが打ち震えながら言う。よほど怖かったのだろうかな。


「そうですね。それもよいかもしれません」


 笑みを湛えたハルカの呟きに、驚いたのはアリアやハルたちだ。ぎょっとしてハルカを見る。ただ、慌てたのはアリアたちだけではなかった。


「お、お待ちください。私の得た情報によると、その襲撃者は《陽光の泉》のユウキという英雄だと聞いております。いくら何でも裁判もなく処刑は問題ではないでしょうか」


 そう言ったのは大臣。いや俺、英雄とまで言われてたのすげーな。隣に居るヘイゼルも先ほどからのやり取りに目を白黒させている。


「あら、でもそのユウキというのは平民なのでしょう? 貴族を襲撃した場合、この国ではその場で処刑されているとか」


「いや、しかし彼は今後の魔鉱の入手に大きく関わっておりまして……何でしたら私が後ろ盾となりましょう。国のためです。補償が必要であれば私が立て替えいたします」


「まあ、随分と親身なのですね。そしてそれほどの偉業を為されたのですね」


 まじかよ大臣いいやつじゃん。そんな風に俺のことを思っていてくれたとは。



 ハルカは動けない騎士団長と彼の使っていた剣をこの場に持ち込む。


「あまりにも狂暴でしたため、魔法で縛っております。そしてこの剣ですが――」


 ハルカはハルを呼び、呪われた肩口を皆に見せる。


 まあ――淑女方のため息の声に、アオが睨みを利かせている。


「――勇者様に呪いをかけた彼の剣です」


 ハルカがそういうと貴族たちがざわめく。


「ご覧ください」


 ハルカはそういうと『癒しの祈り』で剣を癒す。すると剣にかけられていた呪いだろうか、何か黒いものが霧散していき、同時にハルの体に刻まれた呪いの模様が消えていった。呪いだ――口々にそう話す貴族たち。


「これでもこの者を庇いますか?」


 ハルカが問う。大臣はしばし目を瞑り、意を決したように答える。


「無理を承知で何卒。何か事情があるはずです。私が責任を持ちます。お慈悲を」


 ふむ――彼女は微笑む。


「よいお心がけですね。慈しみはルイビーズの教えの主とするところです」


 ヘナスは予想外の展開に口をパクパクさせて、父らしき男を見やっている。アリアたちもほっとした様子。いや、ハルカの言うことなんだから少しは疑問を持てよ。


 しかしハルカは何を考えているんだ? そうしていると俺たちに呼び出しがかかる。


感想たいへんありがたいです。

完結したので設定予想・展開予想は自由に書いてくださって構いません。

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