表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かみさまなんてことを  作者: あんぜ
第三部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

85/92

第22話 無機質な音が遠くで響いた

 翌日早朝。夜明け前の門も開いていない時間に下宿から出発する。下宿よりも南側は南門、西側は市場や西門があるため、門が開くと人が増えてくるが、東側は裏手門のみで通行も制限され人も少ないため騒ぎにはなり辛いだろう。


 エイリュースは娼館近くの入り組んだ場所にある下宿に居るらしい。周辺を確認し、逃走経路を三組で封鎖。リーメに誘導してもらい、ヘイゼルが接触。リーメが近くの建物の屋根に上り、連絡はリーメからの魔法で取る手はずだが、リーメの視界内にしか声を飛ばせないのでパートナーのどちらかがリーメの視界内に居る必要がある。



 ◇◇◇◇◇



 リーメは黒豹っぽいのに変わるとヘイゼルを誘導して先行する。黒豹? 黒豹だったよな今の……足が六本に見えたわ。


 やがてリーメが目標近くの建物の上に顔を出す。この辺りは大通りに近い下宿と違って二階建てや三階建ての低めの木造の建物が多い。リーメは三階建ての建物の屋根に昇って頭に響く声を送ってくる……結構高い。どうやって登ったんだあれ。


『ヘイゼルが建物に入る』


 ヘイゼル――正直なところ、彼女に不安が無いわけではない。もしかすると、あいつの強い言葉に負けて屈服させられるかもしれない。だがそれは彼女が信用できないわけではない。まだ、あいつから離れられるほど十分な時間と心の成長ができていなかったというだけのことだ。もしその場合はリーメに寝込みを襲うよう指示してある。重要なのは包囲の中であいつに接触できるかどうかだ。



 半刻ほど経つ。リーメから『動いた』との言葉。数瞬のち、何かがぶつかるような音が静まり返った通りに響く。


 ヘイゼルが剣と小盾を構え、通りに後退ってくる。無理はするなと言ってある。予定通りだ。


 後を追って歩み出てくる人影。日は登っていないが空は十分明るい。奴の顔が見える。


「見慣れた顔だけど、()()()()一段と不細工だなあ」


 声をかけると奴は一瞬、驚いた様子だったがにやりと笑う。


「ヘイムが居るから妙だと思っていたが……追放されたお前が何故ここに居る」


「追放は知ってるんだな」


「その様子では弟はまた失敗したようだな。手間が省ける。私が直接手を下してやろう」


 エイリュースが俺に向かって瞬く間に接近してくる。ヘイゼルは間に入ろうとするがそれ以上のスピードで抜けてくる。


 ガッ……衝撃音と共に張り巡らされた壁が奴の剣を止める。


「この力でも通らんのかっ」


 斬撃を弾かれたエイリュースはすぐに振り返ると背後のヘイゼルの追撃を止める。そこにアリアが《加速》で短い距離を詰めて斬りかかるが、これも奴に止められてしまう。


《砦》――アリアが再び光の壁を作ると、その衝撃でエイリュースは弾かれ、通りに転がる。再会した時から使い始めた戦法だが凶悪どころかハメ技だよなアレ。


 エイリュースはヘイゼルのさらなる追撃を躱し、立ち上がってヘイゼルと切り結んでいるがヘイゼルは押され気味だ。


「ヘイゼル、無理はしないで下がって」


 再びアリアが《砦》を解いて突撃する。奴はさすがに同じ手は食わないと下がるが、今度は反対側から声がかかる。


「アリアさん、防御を!」


 ハルの声にアリアがその場でヘイゼルを巻き込んで《砦》を展開すると同時に、今度はエイリュースの周囲を巻き込んで突風が吹き荒れる。


 ぐがぁっ! ――エイリュースの体が切り刻まれ、建物の壁にも鉈で殴りつけたような傷跡がつく。


「まだ立ってる。もう一発!」


 言うよりも早く次の突風が吹き荒れる。奴は頭を庇っている。


「もう一発!」


 いやハル、容赦ねえなお前……。三発目の突風が収まると、膝をつくエイリュースの姿が現れる。体中をズタズタに引き裂かれている。


「エイリュース様! もう諦めてください!」


 ヘイゼルが声をかける。エイリュースは項垂れたまま後ろを見やり、笑ったように見えた。刹那、《加速》を使ったエイリュースはアオに向かって斬りかかる。


「「《盾》!」」


 アオが《盾》を展開すると同時に隣に居たハルがアオの前に踏み出し、同じく《盾》を展開する。


 エイリュースの剣はハルの盾を貫き、再びハルの腕を切り裂く。致命傷ではないだろうが恐るべき威力だ。アオは日本刀のような曲刀で奴に斬りかかる。刀は躱されるも、刀を追うように光の屈折が舞うとそれにエイリュースが切り裂かれる。


「勇者の力か、忌々しい!」


 エイリュースが斬り返すとアオが捌ききれずに肩口を裂かれる。大きな傷ではないが呪いが厄介だ。背後からヘイゼルが奴に斬りかかるがこれも躱される。


「しぶとい! どうなってんのよ!」


 アオがキレてるがエイリュースに刀が当たらない。光の追撃も致命傷にはなっていないようだ。それ以前に奴は体中切り裂かれているのに平気で動いている。魔女の祝福であそこまで強くなっているのだろうか。二人の攻勢を捌くエイリュースに衰えは感じられないどころか、アオとヘイゼルに刀傷を刻んでいく。


 アリアは大きく迂回して奴の背後から再び突っ込み、《砦》で奴を弾き飛ばす。さすがに三人は捌ききれなかったのか、壁に向かって打ち付けられるエイリュース。



 ぐあぁぁあっ! 男の苦悶の叫びが響く。叫び声をあげたのは――俺だった。以前にも覚えがある背中への熱い一撃。そして倒れたところへ更なる一撃。体中に衝撃が走ったような痛みがあり動けない。


 悲鳴を上げながら《加速》で走り寄る赤髪の少女。あれだけのスピードだというのに、命の危険を感じ、全てを網膜に焼き付けようとしているのか、俺にはスローモーションのようにみえた。


『俺が警戒を怠っただけだよ、慌てないで』


 アリアは俺の背後に居る何者かを斬り捨てる。


『先に奴を捕まえるんだ』


 ――ルシャ! ユーキを! ――アオが叫んでいる。


『奴から目を離すな』


 エイリュースがヘイゼルを切り裂く。


『ハル、アオを守って』


 ハルはアオの前で《盾》を展開する。しかし、奴の走る先はアオの目線の先だ。


 やだ!!! ルシャ逃げて!!! ――アオが奴に一歩遅れ、悲鳴のような叫びを上げながら走り出す。



 ドサッ――そんな無機質な音が遠くで響いたような気がした……。


感想たいへんありがたいです。

完結したので設定予想・展開予想は自由に書いてくださって構いません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ