第17話 今カノ vs 元カノ 前編
「――わかった。いろいろ聞きたいことがあるけど先にあいつらね」
アリアは俺をハルカのところまで送り届けて、剣を手に敵の四人のところに向かおうとしていた。
「聖騎士様、森の中に伏兵が七人。まだ手を出してきてませんが気を付けて。それと――」
「――ヘイゼルをお連れください。きっとお力になれます」
ヘイゼルは目を輝かせて頷く。
「離れないでついて来られる?」
「はい!」
アリアに答えるヘイゼル。アリアはちょっと心配そうだが問題ないだろう。俺は従者さんに矢を抜いてもらっていたたたたた……痛いよ!
「矢には毒が。気を付けて」
まじかー、やっぱ毒かー。騎士団長、丈夫だなほんと。
アリアは《加速》で右側の二人に突っ込んでいく。ヘイゼルも後を追う。
「なあ、なんで聖女モードなの?」
「だって……ドラマチックじゃない」
意味が分からない。
アリアとヘイゼルは矢を払いつつ二人に接近すると、接敵した瞬間にアリアが《砦》を発動。翻筋斗を打って倒れる二人をヘイゼルと《砦》を解除したアリアがそれぞれ止めをさしていた。
「無茶苦茶だなあ」
「あれは私には真似できんなあ」
俺と従者さんの半分呆れたような感想の通り、四人はあっという間に片づけられた。
「まだ事を構えるつもりか!」
アリアは森の中に向かって叫ぶ。遠くで馬の嘶きと馬車の遠ざかる音が聞こえた。
◇◇◇◇◇
「お願い、ちゃんと答えて。あなたはユーキなのよね?」
「ぁ……ぐぼぉ……げぼ……」
「どうして馬鹿正直に答えようとするんですか……」
ヘイゼルの言うとおりだな。だが。
「だっ……て、俺がそうしたい、相手だから」
「もうちょっと頭使って教えてよ!」
アリアの涙交じりの訴えは見ていられない。そう、あの時のことを言っているのだろう。
「ごめんよ。焦ると頭働かなくて」
「こんなに包帯だらけにして……みんな心配してるんだから……」
「包帯は平気。それより大丈夫だった? ルシャを守れた?」
「うん……。あの日すぐに、おかしいのに気づけたから。でも逃げられた」
「よかった。それだけ心配してたんだ」
本当に良かった。みんなに何もなくて。
「ユーキの体の方が心配よ! こんなの、一体、どうすればいいの……」
涙を流し両手で顔を覆うアリア。
「あー、それはハルカがなんとかしてくれるって」
「ぇ……、ハルカさん? ……見つかったの?」
「あーあー、何でそこでバラすかな。もうちょっと引っ張ろうよ」
何言ってんだハルカは……。
「せ、聖女様?」
「私が遥です。その様子だと聞いてたよね?」
「は、はい……まぁ……」
「あ、大丈夫大丈夫。祐樹とのことはもう決着付けたから。今はただの大好きな幼馴染だから」
「えっ!?」
「兄弟みたいな意味の大好きってことだろ」
「違うけど?」
「えっ?」
どういうことだよ。
「いろいろ恋して、振ったり振られたり、でもやっぱりいつも最後はこいつの傍が好きだなあって」
「中学の時、いつもそんな思ってたのか」
「そうだよ」
「理解できねえ……」
けど、少し嬉しい自分が居るのは否定できない。
「理解ある彼だとは思っていなかったから。私は理解しようとしたよ」
「そうか……そうだったな」
確かにハルカは俺を理解しようとして、自分なりに解決しようとしてくれた。
「あの! 手紙……教えてくださってありがとうございます」
「うん」
「でもその、どうして教えていただけなかったんですか?」
「もっと早くってこと?」
「はい」
「えっ、だってそっちの方がドラマチックじゃない?」
「え?」
「私はこの世界にひとり転生して13年かけて祐樹を探し当てました」
「そうなんですね……」
「でも、それ以上に運命的なものをアリアさんに感じました!」
「えっ?」
「そういうの、こいつ好きなんだよ。ロマンティストなの。いい恋を見つけたなって。だからアリアさんじゃなきゃダメなの――」
「――だからも~うちょっと粘って、いい雰囲気にしてくれたらなって思ったの。さっき」
「そうですね、雰囲気は大事ですね」
アリアも納得しなくていいから。
「いや、雰囲気良くなったら困るから、この体で」
「もういっそのことカエルとかの方が感動的だったよね、まったく」
◇◇◇◇◇
ともかく、宿場まで移動となった。やつらの馬車は特に証拠になるようなものは無かったが、放置するわけにもいかないのでヘイゼルに御者を頼んで宿場の詰所に送ってもらった。
道中、馬車の中は俺とハルカと従者さんだったわけだが、ハルカに『めっちゃかわいいじゃん、アリアちゃん』と揶揄われた。俺は、どういうつもりなのかハルカに聞いたが、どうもこうも話したまんまだと返された。
「つまり、今でも好きってことだよ」
ただ、彼女は元の世界に帰るつもりはあるらしい。こっちの世界でやりたいことはやってしまったので、後はのんびり暮らして、できるなら素敵な恋をして適当なところで帰るそうだ。
「あんたはあっちの世界には未練ないでしょ?」
元の世界に未練が無いわけではない。何ならすぐ戻るつもりだったが、今では帰れない理由がいくつもできてしまった。
「いいことじゃない。女の子も大事にできるようになったし。あとはもう少し自分を大事にするべきね。さっきのみたいなのは相手がつらいだけよ」
そうか……。そうだな。一度は気づけていたが、また彼女と離れてしまって忘れていた。命知らずはよくない。
感想たいへんありがたいです。
完結したので設定予想・展開予想は自由に書いてくださって構いません。




