第8話 ゲームオーバー
「ゲームオーバーかな」
俺は再び真っ白い空間に居た。
『イヤあ惜しかったね。頑張ったのに』
「頑張ったのはヘイゼルだけどな。俺は何もしてない」
『謙遜謙遜』
「何が謙遜なものか。ていうか何で魔女の祝福だけくっ付いてくるんだ。賢者にしとけよ」
せめて賢者ならなんとかなることも多かったのに。
『ああそれね。賢者はキミが望んだ能力じゃないんだよね実は』
「えっ、じゃあ誰が望んだんだよ」
『ヒミツの話は明かせないなあ』
「じゃあこの状況、どうすればよかったんだよ。ていうか何で入れ替わってるの理不尽じゃん」
『そんなこと、教えてあげられるわけないでしょ』
「もう終わったんだから種明かしくらいしてもいいじゃん」
『そんな趣のないカミサマじゃないよ。あとまだキミはゲームオーバーじゃない』
「ぇ……」
◇◇◇◇◇
《蘇生》――そういう能力がルシャにはあった。死者を蘇生する能力。古い死体は蘇生が困難らしいが、死にたてほやほやなら極めて高い確率で成功するらしい。何でかまでは知らない。腐敗してないから? ぐちゃぐちゃでも死にたてならOKなんだろうか。まあともかく、この時の俺はそれに近い状態にあったと思う。
「聖女様! 息を吹き返しました! よかった。よかったぁ」
ヘイゼル? 抱きついてきた。ダメだよ、婚約者が見てるんだ。怒られるよ。――あでも、ルシャは怒らないタイプか。
「ルシャ……ありがと……」
手を伸ばそうとするも腕が上がらない。
「せ、聖女様、申し訳ございません。ルシャ様は王都の聖女様でして……」
「構いません。それよりもお体を癒しましょう。このままではまた危うくなります」
ルシャは《癒しの祈り》を行使する。体中から少しずつ感覚が戻ってくる。あれ? ルシャだよね。ルシャが戻ってきてくれたんだよね。混濁する意識の中、俺はルシャの名を呼び続けた。
◇◇◇◇◇
目が覚めるとベッドの上だった。装飾のある、貴族が使うようなベッドだ。やわらかい。俺は包帯を巻いていた。
「ルシャ?」
昨日、確かにルシャの《癒しの祈り》を受けたはず。だが完全には癒されていないようだ。彼女の《癒しの祈り》なら死にかけていても一発で完全回復だ。実際、勇者一行と共にしていた時に、瀕死の火傷を何人もまとめて回復したことがあると聞いた。
体を起こそうとすると右足に添え木がされていた。体中、包帯だらけだ。
「うぅ……」
体も本調子ではない。そして俺の体は未だに騎士団長のものだった。
隣からヘイゼルが入ってくる。
「エイリュース様! まだ寝ていてください。毒は消えましたが、体がバラバラになる寸前だったんですよ」
ヘイゼルがお怒りのようだ。
「ヘイゼルが無事ならいいよ。そうだ、ルシャは? ルシャが助けてくれたんだよね」
「ルシャ様ではありません。北の聖女様です」
「えっ、北の?」
「はい。あの、ありがとうございます。庇ってくださって。でも無茶はしないでください」
「ああ……大丈夫だよ。俺は実は――」
召喚者――そう言おうとして躊躇した。声に出るだろうか。あの喉に物が詰まって吐きそうになる感覚は何度味わってもキツい。
「――召喚者……だから、死んでも元の世界に帰るだけ」
言えたわ。
「それは初耳です。ドバル家の長男では無かったのですか?」
「それはエイリュースだね」
たぶん。
「???」
「俺は――《陽光の泉》のリーダーの召喚者であって――貴族の長男ではないよ」
何とか使えそうな言葉を繋いだ。
「エイリュース様ではないのですか?」
「喋ることができないんだ。ただ、きみが今まで酷い目にあっていたと知って、助けたいって思った。幸せになって欲しいって言ったのは本当」
「忘れたと言ってたのは……」
「そもそも知らないんだ」
「そうでしたか……」
彼女は悲しそうな複雑な表情をして――聖女様に知らせてきます――と部屋を出た。
感想たいへんありがたいです。
完結したので設定予想・展開予想は自由に書いてくださって構いません。




