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かみさまなんてことを  作者: あんぜ
第三部
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第4話 再会

 次の日、とうとう出立の日になってしまう。ヘイゼルには悪いが朝から大賢者様のところへ使いに出てもらった。がしかし、返答は無かった。


 大賢者様だけが頼りだったのだが、これはかなり凹む。辺境領に着いてからまた手紙を送るしかない。



 馬車に俺の荷物を載せ、俺とヘイゼル、それからあの女騎士のアイネス、もう一人男の騎士――以前酒場で名前を見たはずだが忘れた――を乗せる。


 なんだよ、貴族のクセに馬車くらい二台に分ければいいのに。ヘイゼルには癒されるが、この二人はあまり感じがよくない。騎士団長、どんだけ嫌われてるんだお前。


 二人は俺同様、北の辺境に行くらしい。ただ、彼らは貴族では無いようなので荷物は少ない。



 ◇◇◇◇◇



 馬車が門を抜けて街の大通りへ出る。ここから飛び出して逃げたい……。そう思いながら窓から外を眺める。俺たちの下宿まですぐ傍だ。その向こうは市場だな。ふと、鮮やかな赤髪が目に入った――。


「アリア!!」


 とっさに俺は馬車のドアを開け放ち、身を乗り出していた。


「アリア! ああ、会いたかった。アリア」


 だが、彼女は声をかけられた相手が誰だか認識すると睨みつけてきた。俺は馬車のスピードも気にせず飛び降りたが転倒してしまう。


「ツッ! ……ア、アリア。俺だよ」


 身を起こそうとすると目の前には黒目黒髪の男が居た。男は亜麻色の髪の少女と腕を組んでいる。


「お、お前、なんでルシャと一緒に居る! これは一体どうなってる!?」


「なんだお前か。私が聖女様と一緒に居て何がおかしい。婚約者だぞ」


 そして後ろから声をかけられ肩をつかまれる。


「やめろ団長。聖女様相手はマズい」


 俺は掴んできた手を振り払う。一緒に乗っていた騎士だな。邪魔をするな!


「アリア! ルシャ! こいつは……ぐぷぅ……」


 吐き気で膝をついてしまう。震えながら俺は奴を指さす。


「……こいつは危険だ、近寄るな。キリカ、こいつを注意してよく見てろ」


 だが三人には俺の言葉は届いていない。ゴミを見るような目を向けてくる。当然だろう。俺はあの騎士団長なのだから。


「アリア……」


 身を起こすと同行の騎士に戻るよう促されるが、奴がルシャの腕を取ったまま乱暴に進み出てくる。


「何なら聖女様を賭けるか? 腕相撲でまた勝負してやるぞ」


 奴は俺の頭の上の方を見ていた。まさか――。


「しかしまさか、まだ誰にも手を出していなかったとはなあ。()()()だ」


「クソッ!」


 俺は奴に掴みかかろうとしたが、逆に殴り倒される。なんて馬鹿力だ。奴はそのまま馬乗りになってくる。俺は為すすべもなく馬鹿力で組み伏せられ、殴り続けられた。顔中に痛みと涙が溢れた。


「やめておけ」


 赤髪の少女が奴を止める。


「やりすぎだ」


「……アリア……ルシャを護って……」


 俺が言葉をやっと絞り出すと、奴はご丁寧に一発蹴りを入れてから去っていった。アリアたちも後を追っている。


「エイリュース様! エイリュース様!」


 ヘイゼルが俺の身を起こし、抱きしめてくれる。


「すまない……」


 俺は無力さにぼろぼろと涙を流しながら立ち上がった。



 ◇◇◇◇◇



 馬車は西門を抜け、北へと向かう。北の辺境は隣国と接する土地で、ここから四日の道程だ。昔と違って今は争いは無いという話なので、辺境とは言うが、隣国と物が行き来しそれなりには栄えているという。何とかして王都へ戻りたいが、誰にも頼ることができない。


 三日ほど進むと森が深くなってくる。山が近くなり、時折すれ違う行商の馬車以外は寂しい土地になっていく。朝から暗い雲が行く末を暗示するかのように空を覆っていたが、やがてぽつぽつと雨音が響くようになってきた。


 しばらくすれ違う馬車も無くなってきた頃のこと、前触れもなく馬車が停止した。


感想たいへんありがたいです。

完結したので設定予想・展開予想は自由に書いてくださって構いません。

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― 新着の感想 ―
[一言] 神様なんてことを…。 しかし「まだ誰にも手を出してなかった」と来ましたか。 神様との会話がカギになりそうですね。 先を楽しみにしています。
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