第27話 取り戻せた
しばらく城で泊っていけとは言われたものの、正直なところ手持無沙汰だった。ハルに言わせれば、こっちに来てすぐの頃はずっとこんなだったんだと。城では何かやるにしても準備が大変なうえ根回しが必要で待たされることが多かったそうだ。
庭を散歩したり、アオが作った魔法の道具を見せてもらったり。彼女、部屋でリラックスできるように部屋用の足湯とか作ってて、中でも特にルシャが喜んでいたそうだ。
『部屋の中でこのような姿、ユーキ様にはとてもお見せできません』
とか言ってたらしくて、逆にかわいくて見たくなる――そうアリアに話すと。
「ルシャ、本気で恥ずかしがってるから揶揄わないようにね」
なんて返すもんだから、おかしくておかしくて笑った。アリアにはもちろん怒られたが、アオも似たような反応をしていたらしくて半分困っていた。こっちの人、だいたい長靴下で足は隠しちゃうし、そもそも靴脱がないしな。アオの部屋に入るのも躊躇してたらしいし。
◇◇◇◇◇
四日目、ようやく宴が開かれることになった。大賢者様によると、今回の魔王領についての情報への対策のうえ、俺たちの早期の帰還で取りまとめるのが大変だったそうだ。めっちゃ文句言われた。
宴の最初の挨拶では、ハルとアオに続いて、俺たち《陽光の泉》は揃って一緒に陛下に挨拶をすることができた。アリアに代表して貰えばよかったのだが、先日のパーティ再登録の際、皆の意見で俺が正式にリーダーになってしまったのだ。慣れておけと言われて陛下に挨拶をするが、まあ御察しの通りだ。
「元の鞘に納まったようで何よりだ」
よくいうよ――とは言うまい。愛想笑いをしていると、左から大賢者様。
「陛下は二人との婚約の儀をこの場で正式に行ってはどうか――とお考えじゃがどうじゃ?」
大賢者様がニヤリと笑う。俺はアリアと顔を見合わす。実のところ、アリアとは婚約には至っていない。気分的な問題だが。
「臣下に知らしめれば、聖騎士殿と聖女殿の相手を面倒見ようなど、下らんお節介も無くなると思うぞ」
「ルシャはもちろんいいよね」
ルシャは頷く。
「アリア、どうする? 俺はいいと思う」
「婚約者でも恋人で居られる?」
「もちろん」
変なことを言うと思ったけど、アリアは真剣なようだ。
「陛下、お申し出、ありがたくお受けいたします」
◇◇◇◇◇
そういうわけで、宴の中、俺たちの婚約は正式に貴族たちに認知されることとなった。あとついでに俺が黒峡谷の竜を退治をした《陽光の泉》のリーダーで、この五人が当時の顔ぶれであるということも正しく伝えられた。
また、今回の遠征で俺たちの協力により、魔王領と魔鉱の問題の解決の糸口が見えたことも伝えられた。しばらく休養ののち、《陽光の泉》の協力を依頼された。もちろん俺たちは協力を惜しまない。アリアデルたちの将来もかかっているのだ。ここでいい加減な連中に任せるわけにはいかないので、喜んで依頼を受けた。
これにはハルとアオの協力も得られることになっている。彼らとは少し扱いが違うけれど一緒には居られそうだ。
「ミシカとヨウカも来られれば良かったんだけどな」
「あの子たちはまだ成人してないからちょっと宴は早いわね。遠征も成人してからのほうがいいわ」
「そうね。貴族と下手に繋がりができると面倒だし」
「あとでパーティには入れておこう。遠くからでも異常を確認できるし」
「あれちょっと変態くさいわよね」
なんてこというのキリカ!
「お前なあ……。人が心配してるのに。あと、細かいところまではわからないからな」
「発情がわかるだけで十分変態でしょ。部屋にいるときは絶対見ないでよね」
「そこはほんとごめん」
「ユーキ様、あれは弱い私が悪かったのです。ユーキ様が気に病むことではございません」
「そういう問題でもないからもうヤメテ……」
◇◇◇◇◇
まあ、そんなこんなでようやく下宿にも帰ることができ、孤児院にも顔を出すことができた。ミシカとヨウカはギルドの依頼で外出中だったが、戻ってきたときは二人とも返り血で汚れた装備で泣くわ喜ぶわで大変だった。
アリアたちが何年も国に拘束されることにはならないと教えてやると、二人とも――よかった。よかったよぉ――と抱き着いて喜んできた。あ、もちろん俺にではない。
◇◇◇◇◇
「天気いいね」
「そうだな」
「ひだまりだね」
「そうだなー」
「なに笑ってるのよ」
「取り戻せたな――って思って」
「あたしも」
二人で笑いあった。
ミシカとヨウカは仲良くベンチに腰かけてこっちを眺めている。キリカはルシャとお茶の準備をしているようだ。リーメはアリアデルに聞いた森の話を資料にまとめている。
いつまでも、こんなひだまりのような日々が続くのがいい。
第二部 完
感想たいへんありがたいです。
完結したので設定予想・展開予想は自由に書いてくださって構いません。




