第25話 アリアと共に
「それで? 何を拗ねてるの?」
赤髪の少女はさっきまであまり喋らなく、ちょっとだけ不機嫌そうだった。今は俺に宛がわれた部屋のベッドに腰かけている。
「べ、別に拗ねてない」
「アオから何か聞いたんでしょ?」
「仲、良かったんでしょ。小さい頃から一緒で」
「中学……13から三年間はぜんぜん話もしないくらいだったかな。その前は妹みたいなものだった。だから気になったのは本当に1年だね。アリアと変わんないよ」
「そっか」
「振られたしね」
俺は笑うがアリアは笑わなかった。
「こ、ここ子供は居なかったの?」
「え!?」
「アオさんが、ユーキたちはたぶんしたことあるって」
「あいつ……」
「あ、あたしが無理に聞いたの」
俺は向こうの世界では18歳以下で子供を作ることがほとんど無いことを説明した。それまでは普通は勉学に力を入れている学生という身分であることも。
「結婚したくないわけじゃないよ? ただ、向こうで無くした時間をアリアと一緒に大事にしていきたいんだ」
無くした時間とはつまり、高校生活だけじゃなく、幼馴染に置いてけぼりにされた中学での三年間も――自分で言って初めてそう確信した。
「そこは大丈夫。あたしも楽しいから」
「ルシャとの関係が嫌なの?」
ルシャのことは何とも言えないが。彼女は祝福の件以外はアリアとの関係を大事にしてくれている。祝福もアリアが居ないと要求してこないし、俺たち二人で祝福を与えているようにルシャは受け取っているらしい。
「ルシャはああいう子だし、その、必要以上にユーキを刺激しないというか、誘惑したりはしないでしょ? あたしにも感謝しかしないし」
「それはあるかな」
「そうじゃなくて、あたしとルシャの両方の立場を持ってる人が居たのがちょっと嫌だったの」
「そっか。でもね、俺はどっちかっていうと今のアリアとの関係みたいなのを望んでたんだ」
「そうなの?」
「うん。彼女の方から要求してきたんだけど、俺は将来が誓えないとしないって断ったんだ。それで誓い合った……はずなんだけどね」
自嘲気味に笑う。
「そんなの酷いじゃない!」
「そうでもないんだ。俺たちはまだ学生――子供みたいな身分で、そのまま子供の口約束みたいなものだったんだ」
「口約束でも子供でも誓ったものは守るべきよ」
アリアの言うことは尤もだと思った。でも。
「俺たちの世界じゃ学生での恋愛なんて、法律っていう世の中の決まり事が守ってくれるわけでもない。憤りがあっても、俺のような陰キャのぼっちじゃ誰も味方してくれないし、自分でもどうにもできないんだ」
アリアは何か言いたげだが返さない。アリアやルシャの言う誓いというのは神様に誓うような神聖で絶対のものなのだろう。
「どちらにしても誓いは破られたし、俺はここに居る。アリアと共にね。だからアリアが心配することは何もないんだよ」
「わかった」
◇◇◇◇◇
俺たちはその後、再開するまでのひと月ほどの間、何をしていたか教え合った。お互いに足りない隙間を埋めるように。
あの門の下に吊るされた竜を見たとき、そして《陽光の泉》らしき文字が目に入ったとき、目の前がぱあっと明るくなったと彼女は熱く語った。あれが皆に希望を与えてくれたと。
完結したので設定予想・展開予想は自由に書いてくださって構いません。




