第5話 オレ、ボウケンシャーになる
宿場街は娼館街とはまるで逆方向にあった。あの兵士め、嵌めやがったな。これは俺を召喚者と知っているどころか下手するとタレントまで広まっている可能性もある。大賢者様が常識人――かはともかく、まともな感性の人だったから油断していた。シーアさんも貴族――いやこちらも大賢者様が気を許している以上、貴族然としていないのかもしれない。
まずは今晩の宿。できればしばらく下宿できるような宿を探したいが、これはすぐに見つかった。街灯が目立ち始める前に宿を取れたのは幸いだった。次に冒険者ギルド。こちらも場所を聞いていたのですぐに見つけられる。高い情報料を払っただけのことはある。いや無いか。
ギルドは聞いた通り小休止するスペースと受付があった。受付にはじいさん。……え、かわいい受付嬢とかじゃないの? 彼女らの仕事は夕方まで。うら若き乙女の貴重な時間をむさくるしい冒険者のために奪うわけにもいくまい。
サインを書いたり、変な球に触れたりするとやがて一枚のカードを発行してもらえる。このカード、馴染みのあるサイズだなと思ったが、これ絶対召喚者の誰かが仕組みを作っただろ! ギルドの歴史自体浅いと聞くし。
カードに触れると先ほどのサインと俺の祝福が浮かび上がる。『魔女』と書かれている。が、実際には俺はふたつの祝福を得ている。目を閉じて鑑定するとギルド所属の文字が追加されていた。そして俺の祝福。魔女の隣には賢者の文字が。鍵の字は無い。鑑定は、より上位の鑑定の力を持つ者の能力は正しく読めないらしい。つまりあの変な球の能力は俺より下ってわけ。
ちなみに賢者のタレントだが、賢者と言っても独自の魔法は無い。大賢者様曰く――賢者は知識を求め続ける者であり、こと魔法に関しては最初から与えられて満足する者ではあってはならない――のだそうだ。鑑定はいいんだ? と聞くと、それしか取り柄が無いからいいじゃないかと拗ねられた。かわいいのでその日のデザートを分けてあげた。
さて、ギルドではお仕事を斡旋してくれる。内容は多岐にわたるため、街の底辺層の救済にもなっている。そう俺のことだ。依頼を書いた書板が壁に掛けられているが、まずは常識を知らない俺と一時的にでも行動を共にしてくれる人を探した方がいいと教わった。パーティと呼ばれる集まりの募集だ。下位の者を含めても鑑定者の数はそう多くなく、一定の需要はあるそうだ。ちょうどひとつ見つけたので受付に伝えておく。
宿に帰った俺は一階で遅めの簡単な食事をとって二階の自室へと戻る。埃っぽいベッドで横になるが、これ娼館の一階の部屋のベッドより汚くないか? そんなことを考えながらうつらうつらしていると、隣の部屋の客が帰ってきたようで音がする。くぐもった男女の声が聞こえてくるので嫌な予感がしていたが、やがて嬌声に変わってくる。いつになったら娼館から離れられるんだよ! 俺はある言葉を必死に思い浮かべないようにしながら壁ドンを……する勇気もなく毛布に包まっていると、又隣の客が壁ドンしてくれた。gj! 感謝する又隣さん。
寝ててできなかったカクヨム様に投稿できたので記念に追加。
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