第7話 竜殺しの剣にかけて
三人は正装――仕上がったばかりの――をして孤児院から迎えの馬車に乗った。大賢者様からの迎えだったので俺も乗せてもらったが、おそらく城には入れてもらえないだろうとの話。また今回、召喚状が届いたのは、アリアたちが招待状を断り続けていたのも理由のようだ。
三人の祝福が強力で無条件の信頼が得られ、敬意が払われる代償として、当然のように責任を全うする義務があると考えるのが普通なようだ。国のために王様の話を聞き入れる必要はあるだろうとの大賢者様の話だそうだ。たとえ婚約者といえど、前回のように付き添うのは無理なようなので、三人を見送った後、シーアさんの導きで大賢者様と合流する。
「だが、君に全く手が無いというわけではない」
ああ、これは先生モードの大賢者様だ。何か教授するときこんな感じになる。ぜひご教示いただこう。
◇◇◇◇◇
俺は正装の上から大賢者様の物とよく似た青いローブを羽織り、リーメの物にもよく似た三角帽子を被った。
「儂は弟子を一人、側仕えとして常に傍に置くことができる。シーアの代わりに連れて行こう。ただし、儂の傍を離れるなよ」
俺は大賢者様に付き従い、ホールへと入る。そこは謁見の間などではなく、宴の間であった。そんなことだろうよとは思っていたが。そして壇上の陛下へと挨拶するので従う。
「トメリルの賢者よ、息災であったか?」
「陛下の恩情いたみいります。ですが儂ももう年故」
「生娘のような肌をしてよう言う。ふむ、いつもの一番弟子はどうした?」
「これも優秀な弟子ですぞ。儂の後継になるやもしれません」
「そうか。して、名は?」
大賢者様がこちらを見て頷く。
「ユーキと申します」
「ほう。召喚者かその一族か?」
「は、はい……」
よくわかるなおい……。慌ててしまった。
「ふむ。師の元、励むよう」
「は、は……」
めっちゃあがりましたすみません師匠……。
大賢者様はそのまま解放されるかと思ったが、なんと国王のすぐ傍で控える。仕方なく俺も傍に居ることになる。えっ、こわっ。この場所こわっ。しかも挨拶は大賢者様が最初だったようで、ホールをうろついてたのは側仕えや下働きの者ばかりだったわ。さす大。
ゲストは隣の広い控室で待たせられていたようで、いくつかの扉が開け放たれると、続々と国王に挨拶に来る。何人かの王族の血筋の者が挨拶した後、アリアがれいのなんとかいった公爵様にエスコートされて入ってくる。アリア……。
彼女は国王の前までくると素早く腕を解き、公爵から微妙に距離を置いて挨拶を交わす。国王からは古い血筋が再び日の元にとかなんとか貴族社会への復帰を暗に促していたようだが、彼女は街の陽だまりと妻になる約束を交わしておりますのでと返していた。
去り際、アリアは自分をガン見してた大賢者の付き人に一瞬、きつい眼差しを向けるが、二度見したあと驚いて足を止めていた。アリアさん、口が開いたままですよ――彼女に微笑みを返すと、両の拳をぎゅっとして唇を噛んでいた。
その後に続くルシャはあからさまに不機嫌そうだったが、アリアの様子を伺っていたのか、俺の顔を確認するとエスコートされていた腕をすっと離した。彼女をエスコートしていたのはれいの毛嫌いされている騎士団長だ。彼は腕が離れたことに困惑していたが、そのまま国王の前まで進み、挨拶した。
ルシャは、自分には婚約者が居り、見知らぬ男性にエスコートしてもらうのは本意ではない。今日は入場を断られたため、このようなことは今後遠慮いただきたいと国王に言い切りやがった。続いて聖女の貞淑さを語るその口!
国王も聖女の何たるかを語られては要求を呑むしかなかったようだ。次からは婚約者以外の男性には触れさせないよう、約束してくれる。
ちー、その手があったかーみたいな顔してるアリアがちょっとかわいそうだった。アリアの方がよっぽど貞淑なのにね。まあ、アリアには直球は無理でしょ。
キリカはというと帯剣した騎士らしき男性にエスコートされているが、男は妙に疲れた顔をしている。しかも挨拶の際は男より前に出て、堂々とキリカデール・シアン・アールヴリットの名を名乗った。そう、彼女もおそらくは貴族かそれなりの地位の生まれだ。
そしてキリカは、何よりも自身のパーティを、竜殺しの剣にかけて大切にしているということをわざわざ明言した。つまりはパーティの名を無視して召喚したことへの抗議だろう。うちの子たちなんでこんな攻撃的なの!
さすがの国王も、どういうことかと大臣を呼びつけて、失礼があったと謝罪させることになってしまった。あの大臣、喧嘩売る相手間違えたな。
アリアはもはや称賛の眼差しでキリカを見ていたが、彼女は恐れしらずだから。タレントのせいで。
三人はエスコートの男どもは無視し、結託して大賢者様に近い場所で陣取っていた。なんかもう面倒くさいからここで次の遠征の話しちゃうかみたいな雰囲気だ。俺も混ぜて欲しいわ。
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